涙の理由
今回は次への伏線回になりそうです
部屋に戻ってきたナオマサは地図を広げて次に向かうべき場所についてを考えていた
(これで当面の食料などに関しては問題なくなったな・・・
となるとやはり次に向かうべきは帝国・・・フェルミだな・・・
だがあそこに行くには海を渡るしかない・・・そしてその海を渡るには
海上の商業国家スフェスで船を調達する必要があるか・・・)
戦力の補充をする為には北にあるフェルミに向かう必要があるのだが
そこは海で大陸を分けられており行くには船に乗るしかない
しかしアルブレは緑に囲まれていた王国なので船などあるわけもないし
あったとしてもすでに騎士団に押収されているはずなので使えるわけもない
残された手段は海上の商業国家でもあるスフェスで船を借りる事だった
(問題は・・・最近そこでは船が出ていないと噂されているというところか・・・)
実を言うとスフェスにもこのヴァンカンスと同じように良くない噂が流れていたのだ
なんでも王が倒れてしまったらしいのだがそれ以上の噂が出て来なかった
それこそまるで情報規制でも受けているような感じだった
(正直ここに行くのは危険なのだが・・・
それでもフェルミに向かうにはここへ向かうしかない・・・)
アルブレを取り戻すには帝国の力を借りるしかなく
そしてそこへ向かう為には多少の危険が待っていてもスフェスに行くしかないのだ
「・・・まぁ・・・なんとかなるか・・・新しい仲間もできたことだしな・・・」
それでもナオマサには不思議と不安という気持ちが湧いて来なかった
おそらくは新しく仲間になったカライという存在がいるからだろう
彼のおかげで今まで巨人戦でもシンを頼るしかなかったがカライが仲間になった事で
その負担を少しではあるだろうがそれでも減らす事は出来たはずだろう
そうなれば自分もララという存在を守る事に集中できると事でもあった
「・・・それにあの黒い巨人・・・あいつとの戦いも楽になるだろうしな・・・」
そしてもう一つ気がかりだったのは例の黒い巨人だった
その頃、王国アルブレの首都セヤギの城では
「まさかヴェストがしくじるとはな・・・どうやら我々の認識は甘かったようだ・・・
次に戦う時は手抜きなどせずどんな手でも使って叩き潰さなければ・・・!」
王国騎士団長であるフェウは水晶越しに誰かと会話をしていた
おそらくその相手はヴェストと同じく仲間の誰かなのだろう
『そうですな〜・・・それで?次に一行が向かうとしたら一体どこですかな?』
すると水晶から老人のような声が聞こえてきて
次にララ達が向かうかもしれない場所について尋ねる
「おそらく奴らが向かおうとしているのは帝国だ・・・だが船がない・・・
となれば次に向かう可能性があるのは海上の商業国家・・・スフェスだ・・・!」
フェウの予想では彼らが次に向かうのはスフェスだと見事に言い当てていた
『ならば次に彼らの相手をするのは私という事になりそうですな』
今度は別の男の声が聞こえてきてシン達の次の相手は自分だと言っていた
「そうだな・・・お前の事だから心配はないと思うがそれでも油断はするなよ?」
ヴェストの負けがあるからなのかフェウは次に戦うその者に油断しないように忠告する
『もちろんです・・・この大海のトルビリオン・・・必ず姫様を連れてきましょう・・・!』
その言葉を最後に通信が終わり残されたのは先ほどの老人とフェウだけだった
『そういえば聞き忘れていたのですが・・・あの若人は何をしているのですか?
確か大臣の命令で姫様の命を狙っていると聞いたのですが・・・』
老人が気にしていたのはララを殺す為に送られた刺客の事だった
彼はフェウと一緒に王国をとった大臣の命令で動いており
これはフェウ達にとって猶予すべき事態でもあった
「どうやらあいつは自分がこの国の王になろうと思って色々とやっているようだな・・・
全く・・・この国はおろかこの世界全てがあのお方のものだというのに・・・」
フェウはゆっくりと立ち上がりながら大臣のやっている事が愚かだと鼻で笑っていた
『フォッフォッフォッ!まるでこの国の騎士団長とは思えない発言ですな〜』
「残念だが今の俺は騎士団長のフェウではない・・・六柱官が長・・・業火のフェウだ」
その頃、シンが起きるまでナオマサ達はこれから旅路に備えて色んな物を買い揃えていた
しかしそんな中でやはり一番の問題となっている事もあった
「・・・やっぱり無理ですね・・・
外側の装甲だけならまだしも内部の修繕は俺には出来ません」
そう言ってヴェンカンス一の錬金術士はディパシーから離れてナオマサの隣に来る
「やはりダメか・・・これまでの戦いで消耗しているはずだから
出来るだけ最善な状態にして欲しかったのだが・・・」
これが今、ナオマサはを悩ませている問題だった
ディパシーの構造はどうやら他の錬金術士から見ても未知の領域になっているようで
これを修理する事はおろか元がどんな状態だったのかすら分かっていないのだ
だがこれからの戦いを考えるのならばやはりディパシーの修理は最も重要になってくるだろう
「やはりこれを修理できる場所に向かうしかないみたいだな・・・」
ナオマサはディパシーを修理する事がいる人間の元に向かうべきだと考えていたが
問題はそんな人間がどこにいるのかと事だった
これを作ってくれた人はすでに亡くなっているし彼一人で作り上げたものなので
設計図を持っている他の人間がいるわけでもないのだ
「やっぱりこれだけの巨人を修理するのならミエンに行くしかないんじゃないですか?」
錬金術士が提案したのは岩山の工業国家であるミエンでの修理だった
「・・・確かにあそこは一番最初に巨人を作った一族がいるんだったな・・・」
ミエンはかつて錬金術士達が集っていた集会所のような場所で
そこで初めて巨人というものが作られていこうは国として認められたのだ
そして今の巨人を作り出した一族はそこに残っているので
もしかしたらディパシーを修理できるかもしれない
「・・・どちらにしても船が必要な事に変わりはないか・・・難しいな・・・」
しかしミエンもまた海を隔てた場所にあるので結局、船が必要な事に変わりはなかった
「カライの巨人・・・確かトゥネという名前だったな?そちらの修理はどうなのだ?」
「ああ・・・あっちに関しては先祖が作ったものですし修理は任せてください!
でも・・・まさかこの時代に乗れる人がいるなんて思ってなかったですよ・・・
しかもそれがカライ王子なんて・・・まるで昔話そのものだ・・・」
錬金術士は何やらしみじみとしながらカライの巨人であるトゥネを見上げていた
「昔話・・・それはもしかしてこのトゥネが作られた時の話なのか?」
それを聞いたナオマサは一体どんな話なのか気になって質問する
「はい!このトゥネはウチの部族が作り上げたもので
かつてこの砂漠にのさばっていた魔物を倒して平和を取り戻したと言われているんです
やっぱりこいつに乗る人はそう言った運命を持っているんですかね?」
確かにその昔話はまるでこの前のカライと同じような感じだった
いや・・・それを知っている彼らからして見ればまさしくその通りなのだろう
(なるほど・・・巨人が乗り手を選ぶその理由が・・・少しだけ分かった気がするな)
ナオマサはもしかしたらそんな人間を選んだのは偶然なのではなく
トゥネがちゃんと分かっていて選んだ事なのではないかと思うのだった
「お〜い!トゥネの修理はどんな感じだ?」
そこへ乗り手であるカライが現れてトゥネの修理状況を聞いてきた
「そこまで損傷はなかったんですぐに終わりますよ!でもあんまり無茶はしないでくださいね?
こいつはスピードとパワーに偏っている分、操作が難しいじゃじゃ馬なんですから!」
どうやらトゥネは設計上の問題として暴れ馬のような操作性らしく
操れる人間がいたとしても乗りこなせるかどうかはまた別の話のようだ
「だろうな・・・俺も最初に乗った時は思わず吐いちまったほどだぜ・・・
こいつを乗りこなせるまで出さないつもりでいたんだがな・・・」
すでにカライはその事を身を以て理解していたようで
だからこそトゥネを今まで封印してきたそうだ
「だが・・・お前が勇気を出してこいつに乗ったからこそこの国の人間は救われた・・・
そしてこれからも・・・こいつで私達を助けてくれ」
「!ああ!今度こそ俺はこいつを乗りこなしてみせるぜ!」
一方その頃、ララはシンの看病をしながら街の様子を見ていた
「・・・皆さんはすごいですね・・・
街が壊されても笑顔を絶やさずみんなで協力して復興されている・・・」
街の人々はあれだけ街を破壊されたにも関わらず笑顔で復興作業を行っていた
その姿にララは感動を覚えると同時に申し訳ない気持ちにもなった
それは自分が迷惑を掛けてしまったというものではなく
何かやる事はないのかと言うものだった
しかし未だに眠っているシンを放っておく事は出来ないので結局は部屋にいるしかない
すると部屋の扉を叩く音が聞こえてララは扉を開けると
そこにはご飯を持ったツムジの姿があった
「姫様何も食べてないんでしょ?とりあえずはこれしかないけど食べて!」
どうやらツムジは朝から何も食べていないララを心配したようでご飯を持ってきてくれたのだ
「ありがとうございます・・・でも皆さんの分は大丈夫なのですか?」
ララからすれば自分ではなく復興作業をしている人達に食べさせて欲しいと思っていたのだが
「それなら大丈夫ですよ!
うちは人に比べて食料の方が多いんで備蓄もかなり残ってるんですよ!」
民族国家でもあるヴァンカンスはこう言った事態に備えてちゃんと備蓄も備えており
ララが心配するような事は何一つとしてないらしい
「それに姫様には感謝してるんです・・・
自分の身を投げ出してまで私達を守ろうとしてくれた事・・・
だからそれは私達からのお礼でもあるんです!」
その言葉を聞いてララは何故か胸が苦しくなるようなそんな気持ちだった
しかしそれは悲しさからくるものではなく嬉しさからきていた
(・・・私は・・・ようやく・・・誰かの役に・・・立てた・・・!)
これまでずっと自分は無力だと思っていたララだったが彼女からのお礼に偽りはなく
それを聞いて初めてララは自分が何かを成したのだと喜んでそして・・・泣いたのだった
次回からはいよいよ新しい国へと向かいます!