稲妻の怒り
今回はカライの巨人が出てきます!
時を超えたディパシーはツムジが攻撃される直前に跳んでいた
そしてもちろんこの後に攻撃される事が分かっていたので
カライとツムジの前に現れてスプリンツの攻撃を防いだ
「ハァ・・・ハァ・・・なんとか・・・なった・・・!」
そのままスプリンツを引き剥がしたシンだったがやはり時を跳んだ影響で
魔力をかなり消費してしまい正直まともに動ける状態ではなかった
「まさか俺の動きを読むとはね〜・・・いや・・・それとも時を跳んだのかな?」
どうやらヴェストはすでにディパシーが時を超える能力があると知っているようで
自身の攻撃が読まれたのも未来から見てきたものだとすぐに分かったようだ
「・・・ああ・・・だからもうこれ以上・・・お前の好きには・・・させない・・・!」
知られているのならば隠しても無意味だと判断したシンはそれを認め
その上でディパシーの能力を使ってヴェストを倒すと宣言した
「くっくっくっ・・・!この俺が今の君がどんな状態なのか理解できないとでも?
おそらくは時を超えた影響で魔力をほとんど消費してしまったのだろ?
そんな状態で六柱官の一人であるこの疾風のヴェストに勝てると思っているのかい?」
しかしヴェストはシンが今どんな状況になっているのかも知っているようで
そんな状態で自分に勝つのがどれほど難しい事なのかも教える
実際に対峙しているシンでもこの前に戦った巨人乗りの傭兵よりも強いと感じていた
それこそ万全の状態でも苦戦を強いられるのは間違いないと思えるほどに
だが今のシンは魔力が枯渇している状態でディパシーを動かしていられる時間もほとんどない
残念ながらヴェストと戦っても勝ち目はないと言っていいだろう
(どうする・・・あいつが敵の親玉なら倒せばこの戦いに決着が着く・・・!
でもこの状態でどれほど戦えるか・・・)
シンは今の状態でヴェストとどれだけ渡り合えるだろうと思っていた時だった
「・・・シン・・・悪いがこいつの相手をしなくちゃいけないのは俺だ・・・!」
後ろにいたカライが何か覚悟を決めたようにディパシーの前へと出て行った
「・・・分かった・・・後はお前に任せる・・・!」
「来い・・・雷の巨人!トゥネ!!」
カライが巨人の名を叫ぶと彼の前に魔法陣が展開されそこから巨人が現れる
その巨人は巨大な翼とそれに負けないほどの大斧を持っておりまるで重戦士のようだった
そしてカライはそれに乗り込んでシンと代わりヴェストと対峙する
「ほう?まさかヴァンカンスの王子様が巨人に乗れるとは・・・
しかし見たところその巨人はパワー重視のようですね・・・!
そんな事では我が巨人!スプリンツには勝てませんよ!!」
確かにカライの巨人は見た目だけはパワータイプに見えるだろう
実際に雷の巨人はパワータイプが多いがそれと同じく特徴的なものがある
「甘いな・・・!このトゥネはそこいらの巨人とは違うんだよ!!」
カライがそう告げるとトゥネがスプリンツに向かって突っ込んでいく
しかもその速度はパワー型とは思えないほど早かった
虚を突かれたヴェストは攻撃を受け止めるしかなかったが
もちろんパワーは向こうの方が上で簡単に吹き飛ばされてしまった
「雷の巨人・・・その特徴は下級の巨人を凌駕するパワーとスピード・・・
なるほど・・・その巨人は上級の魔法石を組み込まれているというわけですか・・・!」
ヴェストの説明していた通りカライの巨人であるトゥネには雷の魔法石が組み込まれている
その戦法は敵をスピードで翻弄しながら渾身の一撃で敵を仕留めるというもの
まさしくヴェストの操るスプリンツの天敵とも言える存在なのだ
(まさかここまで相性の悪い巨人がこの地にあったとは・・・!
ですが先ほどまで巨人を召喚しなかったという事はおそらく使いこなせてはいない・・・
ならば・・・まだ俺にも勝ち目はあるという事だ・・・!)
しかしヴェストはすぐにカライがまだトゥネを乗りこなせていない事に気がついた
実際にカライはトゥネに認められてからあまり乗ってこなかったので使いこなせてはいない
だがそれを補えるほどの怒りと覚悟が今の彼の中にはある
「行くぞ・・・!今日で平和を取り戻してみせる・・・そして奪われた者達の怒りを受けろ!」
「くっくっくっ・・・!怒りですか・・・そんなものはこれっぽっちの価値もないんだよ!!」
本性を曝け出したヴェストはスプリンツを起こして凄まじい速度でキャラバンに向かうが
「お前の考えはもう見飽きたんだよ!!」
すでにその考えはカライに見破られておりトゥネに追いつかれて
キャラバンからかけ離れた場所に殴り飛ばされた
「がはっ?!まさか一撃でこのスピリンツの装甲を破壊するとは・・・!」
その殴られた衝撃でスプリンツの装甲は簡単に破壊されたようで
ヴェストは改めて上級の巨人の力を噛み締める
「だが・・・あんな小僧に負けるほど俺は弱くはねぇんだよ!!」
それでも長年巨人に乗っているプライドがあるヴェストは負けられなかった
もはやスプリンツが壊れるのもお構いなしにヴェストは再びトゥネに突っ込んでいく
その速度は先ほどとは違いおそらくスプリンツの最高速度だろう
しかし衝撃に耐えられないのか壊れた装甲から火花が散っていた
それでもスプリンツは止まる事なくスピードを上げていく
「・・・哀れだな・・・自身の弱さが露見した瞬間に己を見失うとは・・・
だが俺も国を背負う者・・・
たとえどんな相手であろうと国の敵になるなら容赦はしない!」
カライは自分を見失った相手に負ける要素など一つもなかったが
国を背負う者として全力で倒さなければならないと気を引き締める
そして最高速度に達したスプリンツが槍を構えて突っ込んできて
トゥネはそれを紙一重で躱し両腕を斧で切り落とした
「・・・これでもう・・・武器は使えないな・・・!」
カライは斧を突きつけてヴェストに降参するように促す
おそらくは街にいる残党を無抵抗で抑える為だろう
「・・・甘いな・・・そんな程度の覚悟で・・・王族を名乗るな!!」
しかし素直に言う事を聞くようなヴェストではなく最後の最後まで抵抗する事を選び
スプリンツに搭載されていた自爆装置を使って自爆した
「・・・まさか自爆装置まで積み込まれていたとは・・・危なかったな・・・!」
カライは自爆する直前に最高速度で後ろに下がっておりなんとか直撃だけは避けていた
(しかし・・・そこまでするほどの相手なのか?・・・お前達の主人は・・・)
確かに悪い事をしていたがそれでもその手腕は目を見張るものがあったヴェスト
果たしてそれほどの男が命を懸けてまで仕えていた主人とは誰なのか
そして彼らが人々の命を生贄にしてまでなそうとしている事とは
謎が残るばかりだがとりあえずヴァンカンスでの決戦はこれでようやく終幕を迎えた
「本当にありがとうございました!おかげでこのヴァンカンスは救われました!」
全てが終わった後で国王はこの国を救ってくれた事を感謝していた
「いや我々は何もしていません・・・本当に努力なされたのはカライ殿です」
ナオマサの言う通り今回、本当に活躍したのは間違いなくカライだった
彼は王族として民を守る者としての務めを本当に果たしてくれたと思う
まさしく次代の王としてふさわしい事をしたと言ってもいいだろう
「そうですな・・・これならば私も何の心配もなく王位を譲れそうです」
それは国王も理解しておりこれならば王位を譲る事への心配もないと話していた
「いや親父・・・それは少しだけ待ってもらっていいか?」
するとその話に対してカライは少しだけ待って欲しいとお願いする
「どうした?もしかしてまだ王になる決意が固まらないのか?!」
国王はもしかしてまだ王になる決意がないのかを心配していたがそうではなかった
「親父・・・俺はこいつらと一緒に行く・・・もちろんこの国の為にな」
カライはこの国の為にララ達と一緒に行きたいと思っていたのだ
そしてヴェスト達が企んでいる野望を止める為に
「あいつらを止めない限りこの国も本当に平和になったと言えない・・・
だからこそ俺はあいつらの野望を止めたいんだ・・・!頼む・・・!」
その覚悟はまさしく王としての覚悟でありこれを認めないのは王を否定する事でもあった
「・・・わかった・・・お前の覚悟を信じるとしよう・・・
必ずやあの者達の野望を防ぎこの世に平和をもたらしてみせよ!」
国王はその覚悟に応えるかのようにカライがいく事を許した
「我らはこれから約束通りに貴国の民に支援をしたいと思います
さすがに今すぐには無理ですが街に戻り次第、物資を送らせてもらいます」
そしてすぐにララ達の方に向き直ると約束である支援の話をし始める
「はい・・・どうかセヤギの民をお願いします・・・!」
ララはこれでようやく民が助かると涙を流しながら喜んでいた
「それにしても・・・こいつには助けられてばっかりだな・・・」
カライは魔力の使いすぎで眠っているシンに助けられたと思っていた
それは王子としての自分だけでなく個人としても救われた
国を救ってくれたのは王子としてそしてツムジを助けてくれたのは個人として
「・・・本当にお前には感謝の言葉しか出てこないな・・・」
その感謝の気持ちは言葉ではとても返しきれないと思っており
これから旅を一緒にするからにはその行動で返さなければならないと考えていた
「そうですね・・・それは私もそう思っています・・・」
そしてその気持ちはララも同じだった
もしかしたら彼は本当にこの世界を救う救世主になるのではないかと思ってしまうほどに
「まぁなんにしてもこれからはあんたらと一緒に旅する仲だからな!よろしく頼むぜ!」
カライは改めてみんなによろしく頼むと手を伸ばして握手を求めると
「えっと・・・その前に後ろをどうにかしなくていいのですか?」
その言葉を聞いてカライは後ろを振り返ると
そこには明らかに怒っているツムジの姿があった
「・・・カライ・・・私は国を出るなんて聞いてないんだけど・・・?!」
「・・・やっべ・・・!」
こうしてカライはシンが起きるまでツムジに追いかけられるのだった
ヴァンカンスの旅路は終わり一行は新しい国へと向かいます!