アデム襲撃
今回は巨人の戦闘があります
「ララの誘拐・・・!それじゃあやっぱりお前は騎士団と繋がっていたのか!!」
ヴェストの言葉を聞いてシンは予想通り騎士団と繋がっていたのだと確信した
『へぇ・・・もうその事まで知っていたんだ・・・まぁその通りだといえばその通りだけど
別に俺が黒幕ってわけでないよ?だって彼とは対等の関係だからね・・・』
しかし一つだけ予想が違ったのはヴェストもまた敵にリーダーではなかったという事だ
これだけの財力を持ちさらには巨人すらも操れるのに親玉ではない
この事実はシン達にとってもかなり重要な意味を持つ事になった
「それよりもさっきの質問に答えてもらおうか?さっきは姫さんの誘拐って言ってたけど
それならなんでうちの国を乗っ取る必要があるんだよ」
カライの言う通りララの誘拐が目的だというのならばこの国にいる必要はない
それにも関わらずこの国でしかも乗っ取りを企むその真意を知りたかった
『確かにお姫様の誘拐は最優先事項ではあるけど・・・
これは元々計画にはなかった事だからね〜・・・
だから関係のなかった俺は本来の目的である国を乗っ取り・・・
国民を生贄にする計画を実行していたのさ』
ヴェストの口から放たれた言葉を聞いてシン達は驚きを隠せなかった
彼らは国の乗っ取りが目的ではなくそこに住む国民を生贄にする事だったのだ
「ふざけるな!そんな理由の為に国を乗っ取ろうとし人々の生活を奪ったのか?!
その上で命まで奪おうなど・・・貴様らはどこまで腐っている!!」
自国の人間を生贄にすると聞いてカライは怒りを抑える事が出来なかった
しかしそれほどまでにヴェストの言っている事は常軌を逸しているのだ
『別に俺に怒っても仕方のない事だと思うけどね〜・・・結局は俺も命令でやっているだけだし
もしもその怒りをぶつけるのなら俺達のリーダーに言うのが筋なんじゃないかな?』
それにも関わらずまるで自分は悪くないと言わんばかりのヴェストに
カライはさらなる怒りを露わにしもはや拳からは血が滴っていた
『まぁいずれにしても君達はここから出られないからね・・・大人しく待ってなよ』
『俺がこの国を落とす・・・その瞬間をね・・・!』
それだけを言って通信は終わってしまい完全に閉じ込められてしまった
「クッソ!早くここから脱出しないと街が危ない!」
急いでここから脱出しなくてはいけなくカライとシンは壁や窓に向かって切り掛かるが
「硬っ?!これじゃあ俺達の手の方が先に参っちまう・・・!」
二人の攻撃はいとも簡単に弾かれてしまい生半可な攻撃ではビクともしない事が分かった
「しょうがねぇ・・・!ここぞって時に使ってこそだが・・・来い!ディパシー!!」
シンはディパシーを召喚するこの場から脱出しようと考えていたのだが
「「どわぁぁぁぁぁ?!!」」
壁を壊すよりも先にディパシーの体重に床が耐えきれずに抜けてしまった
「あっぶねぇぇぇぇぇ・・・みんな無事か?」
なんとかララだけは守りきったシンは他のみんなが無事か尋ねる
「こっちもなんとか大丈夫だ・・・まぁ脱出できたし結果的には良かったのか?」
どうやら他の三人も無事だったようで脱出も出来たしまぁ良かったのだろう
しかしすぐにその考えは改められる事になった
「侵入者だ!女以外は殺せ!」
先ほどの攻撃で完全に居場所がバレてしまいここに傭兵達が集まろうとしていた
「チィ!しょうがねぇ!カライはみんなを連れて先に出てくれ!
俺は出来るだけディパシーで敵を引きつける!」
完全に後手に回ってしまったシン達はもはや手段を選んでいる場合ではなく
ここはディパシーで敵を引きつけてみんなを逃す事にした
「オラオラオラ!巨人のお通りだ!死にたくなければそこをどけ!!」
壁を破壊し中央の広場まで出てきたシンはそのまま傭兵達を引きつける
もちろん子供相手に引き下がる傭兵でもなく思いの外かなりの人数が引きつけられた
おかげでカライ達は難なく脱出できたが問題はここから
「頼む!急いで街に戻ってくれ!みんなが危ない!!」
先ほどの話ではすでに本隊は街に向かっておりカライ達も急いで街に戻っていく
「・・・出来るだけ応援はここで倒しておいた方が良さそうだな・・・!」
そしてシンはみんなが脱出したのを知り
後はここにいる傭兵を倒さなければならないと考えていた
確かに本隊はすでに街に向かっているのだろうが目の前にいる彼らも脅威に変わりない
ならば先に倒せる敵から倒しておいた方がいいと考えて目の前にいる者達と対峙する
しかしディパシーに乗っているシンにとってただの人はそこまで脅威ではなかった
(問題はここから・・・あの大富豪がただの傭兵だけを雇うとは思えない・・・
となれば次に出てくるのはおそらく・・・)
シンのその読みは当たり大きな足音が聞こえてくると二体の巨人が姿を現した
『何者かは知らんがここまでやるとは正直予想外だった・・・
だがそれもこれまで・・・俺達は巨人の乗り手として何年も傭兵を続けている
子供の乗る巨人などに負けるなど決してありえない!』
どうやらその傭兵達は巨人の乗り手としてかなりの自信があるようで
シンぐらいの子供が乗る巨人の負けるわけがないと告げる
しかし逆にシンからしてみれば今回の相手はとても嬉しかった
向こうはまさしく巨人のベテランでありしかも傭兵としての実力もある
強くなりたいと思っていたシンにとってはこれほど相応しい相手はいないのだ
「だったらあんたらの胸・・・喜んで貸してもらうぜ・・・!」
シンは先ほどの言葉を確認するかのように二体の巨人に突っ込んでいく
もちろん向こうはベテランなので見え透いた突進などすぐに躱した
さらには躱した後でガラ空きの背中に攻撃を加えようとするが
『『なっ?!』』
ディパシーの速度は巨人の中でも最速であり本来ならばあるはずの背中がそこにはなかった
『なるほど・・・スピード型の巨人というわけか・・・!ならば行動を制限する!』
しかしそこからはさすがはベテランというべきなのかすぐにディパシーの特徴を見抜き
それを制限して自分達が有利になるように戦いを進めていく
一方その頃、街へと戻って来たカライ達を待っていたのは酷い光景だった
「マジかよ・・・!あれじゃあもはや占領じゃないか・・・!!」
街には色んな傭兵がすでに配置されておりさらには貴族の屋敷は完全に壊されていた
まさしく全てを破壊し尽くしたと言える状況だろう
「これで国を落としただと?!滅ぼしたの間違いだろうが・・・!!」
もはやカライの頭には怒りしかなかった
しかし冷静なナオマサは疑問に思う事があった
「・・・おかしい・・・屋敷を破壊したというのに人が少ない・・・
いやそれどころか・・・捕虜の一人すら見当たらない気がする・・・」
その疑問とは目の前に広がっている街の中に傭兵以外の人がいないという事だった
ララを捕まえるのが目的ならば人々を殺しても意味がない
人質にしてそれを理由に交換するのが一番いいはずなのだ
それにも関わらず捕まっている人は一人としていなかった
「その理由は彼らが攻めてくる前に住民共々脱出したからです」
知った声が聞こえてきて後ろを振り返るとそこにはカライの護衛をしていた人がいた
「脱出?それじゃあみんなは無事なのか?!」
カライの質問に護衛の人はゆっくりと頷いて返事を返した
「そうか・・・ならばあいつらが街を破壊していたのは人をあぶり出すためか・・・
しかし良かったのか?人の命に代えられないと言ってもお前らの街だろ?」
ナオマサは故郷のあの光景を見て本当に良かったのか聞く
「確かに思い出などはありますがやはり人の命には代えられません・・・
それにここは民族国家・・・家や食料に困る事はあまりないんですよ」
どうやらここの人達はこう言った状況でもたくましく生きる事が出来るようだ
それを聞いてナオマサは安心したのかとにかくここから離れる事にした
(だが・・・あそこには敵将もいる・・・どちらにしてもいく必要があるな・・・)
ナオマサはいずれあそこに攻め込む事を考えながら国王の元へと向かった
一方その頃、拠点で戦闘を繰り広げているシンにも進展があった
(ようやく向こうの動きが・・・いや・・・
ディパシーの動きが分かるようになってきた・・・!)
それはここにきてようやくディパシーの動かし方が理解できるようになってきたという事だ
今まではその高い性能故に巨人を操った事のないシンには
ディパシーを活かす事は出来ていなかった
しかし今の彼はようやくディパシーの動きについてこれるようになり
これまでぎこちなかった攻撃や回避の感覚が分かるようになってきた
つまりシンはようやくディパシーを己のものにする事が出来たのだ
(だがまだだ・・・俺はまだディパシーをものにしただけだ・・・!)
シンはこれでもまだ足りないと感じていた
確かにシンはディパシーを己のものにはできたが乗りこなした訳ではない
あくまでの今の彼はディパシーの特性を理解しただけなのだ
ここから本当にディパシーを手足以上に動かせるかどうかの勝負となってくる
「・・・と言っても・・・これ以上はさすがにやりすぎだよな?」
実を言うとすでに勝敗は決しており敵の巨人はすでに半壊していたのだ
むしろこの状態で戦っている敵を褒めるべきだろう
「でも俺もやらなくちゃいけない事があるんでな・・・これで終わりだ!」
シンは最後のとどめとして残っていた腕と足を切り裂き巨人は崩れた
「ふぅ・・・あとはララ達と合流するだけだな・・・」
「やれやれ・・・まさか俺達が来るのを察して逃げられるとはね〜・・・
ただやられているだけのボンクラかと思ったけど・・・案外この国の王もやるじゃないか」
「まぁ彼らがどこに隠れているのかまではわからないしね〜・・・
しょうがないし今度こそ本当にここで待ち構えさせてもらおうとしようか・・・!」
そう告げるヴェストの後ろには今まで見た事もない巨人の姿があった
次回はいよいよ疾風のヴェストが操る巨人が登場!