大富豪の正体
今回はカライの国に対する思いが垣間見えそうです
一方その頃、シンは先ほど助けた少女にお礼をしたいと言われて
カライと一緒に彼女の家に上がっていた
「まさかシンがツムジと知り合いだったとは・・・正直驚いているぞ?」
どうやらカライと知り合いの少女はツムジという名前らしく
一体どんな風に知り合ったのか気にしている様子だった
「実はさっきチンピラみたいな奴が街にいてな
急いでいるその子に無理やり言い寄っていたから助けたんだ」
シンは素直に彼女を助けた事を告げるとカライは難しい顔をしていた
「・・・どうやらあのチンピラは大富豪と何か関連があるみたいだな?」
その顔を見てすぐにシンは自分が倒したチンピラが大富豪と関係があるのだと察した
「・・・ああ・・・そちらは大富豪に雇われている傭兵だろう・・・
最近この街に姿を現して市民に危害を加えている・・・
本来ならばそれに対処しなくてはいけないがどんなに止めさせようとしても
いくらでも現れてきてもはや兵士の疲労はピークに達している・・・」
カライもここまでの事態になるとは思っていなかったようで
どうすれば彼らを止められるのか頭を悩ませている次第だった
「それならいっそあいつらを出入り禁止にすればいいじゃん」
シンはそんなにも迷惑をかける人物ならば出入りを禁止するように告げるが
「そうしたいがそれでもしも力づくになって襲ってきたらそれこそ危険だ
だから多少の迷惑は許容しなくちゃいけなんだ・・・本当な嫌だけどな・・・」
しかしこちらが強攻策を取ってしまったら向こうもそれに対抗してくるだろう
そうなれば間違いなくここが戦場となってしまう
それだけだ如何あってんも避けなくてはいけない事なので手を打てないでいるのだ
少しはカライの苦悩がわかったシンだったがそれでも一つだけ理解できない事があった
(確かにこちらが強攻策に出れない理由はその通りだが・・・
向こうがやってこないのはなんでだ?いくらでも攻める理由はあるだろうに・・・)
そんな話をしているとお茶を入れ終えたツムジが帰ってきた
「・・・そういえばさっきは聞き忘れたけど二人はどんな関係なんだ?」
ツムジからもらったお茶を飲みながらシンは二人がどんな関係なのか尋ねた
というのも先ほどの喧嘩を見ていて明らかに知り合いというには仲が良すぎると思っていたのだ
「どんな関係か・・・まぁ一言で言うなら幼馴染ってやつかな?
よく屋敷から抜け出してはここで一緒に遊んでたからさ・・・
なのに今じゃ顔を合わせればお説教をされて母親みたいな存在になってきたよ」
やれやれと何やら頭を痛めている様子だったが
「あんたね・・・頭を抱えたいのはこっちだってば・・・
昔と違ってもうあんたも成人が近いんだし王子としての自覚を持ってくれなくちゃ
そうすれば私だってあんなに説教なんてしなくて済むのに」
確かにカライは自由奔放な王子様でとても威厳があるようには思えないだろう
だが親しみやすいという意味ではカライも十分魅力的な王子のはず
「それにしてもやっぱりあの人達をどうにかするわけにはいかないのね?
彼らの所為で子供達ですらまともに外で遊べないのに・・・」
ツムジはカライに期待していたようだが
どうやら期待している通りにはならないみたいで悔しそうな顔をしていていた
「・・・せめてあの大富豪がどこにいるのか分かれば手の打ちようがあるんだがな・・・」
カライも大富豪の居場所さえ分かれば手を打つ事ができるはずだと考えていたのだが
この広大な砂漠で時間を掛けて探すなど不可能に近いと言ってもいいだろう
そう思っていた時にシンは一つだけ気になっている事があった
(そういえばあの谷の形をした魔物も蜃気楼で姿を消していたよな?
って事はもしかしてその大富豪も居場所を蜃気楼で隠してるって事か?)
彼らの技術力を考えれば蜃気楼を引き起こす魔道具を持っていても不思議ではないだろう
しかし同時にそれは隠さなければならないほど大規模な拠点とも言える
(・・・これはナオマサ達に相談した方が良さそうだな・・・)
そして二人は少しの談笑をした後でララ達と待ち合わせている宿屋に向かった
「あのお姫様も物好きだよな?わざわざ宿に泊まらなくても屋敷に泊まればいいのに」
確かにカライの言う通り何故かララは屋敷ではなく宿に泊まるのか
その理由をシンはちゃんと知っていた
「屋敷に泊まったらララがいるってバラしてるようなもんだからな
それなら安全が保障されてなくても宿とかに泊まった方が都合がいいんだよ」
シンの説明を聞いてなるほどなと納得するカライだったが
(・・・実は俺も最初は分かんなくて聞いたなんて言えねぇな・・・)
実は先ほど説明した事は全てシンがナオマサから聞いた言葉であった
「てか何でお前も付いてくるんだよ?早く家に帰らないとまた親父さんが怒るだろ?」
シンはいつまで付いてくるつもりなのかカライに尋ねると
「だからこそだよ・・・家に帰ってお説教をされたら話し合いの内容が分かんないだろ?
悪いが俺も無駄な事に時間をかけてはいられないんだよ」
どうやらカライは話し合いの内容を聞く為についてきているらしく
その内容によっては自分で行動しなくてはいけないと考えているようだ
そんな話しているといつの間にか宿屋に着いたようで
既にララとナオマサの二人はホールで待っていた
「あれ?テンテコとマイマイはまだ帰ってきてないのか?」
しかしそこにテンテコとマイマイの姿がなく迎えに行こうかと思っていると
「その必要はないぜ!ちゃんと情報収集もしてきたからな!」
ちょどよく二人も帰ってきたのでここで会議をする事にした
「ヴァンカンス王との話し合いだが・・・援助を引き受けてくれるそうだ
しかしこの国の事情もあるのでそちらを解決してからという事になり
我々はそれに協力する事になった・・・これは姫様の意向である」
ララの意思だと聞いてシンは少しだけ納得している様子だった
「そして我らの目的はたった一つ・・・大富豪の拠点を暴く事だ・・・!」
「やっぱりそこに行き着くのか・・・それで?手がかりはあるのか?」
シンの言葉にまるで待っていましたと言わんばかりにテンテコをが笑い出した
「聞いて驚け!その拠点となりそうな場所を俺達は掴んできたのだ!!」
どうやら既に拠点がありそうな大まかな場所を聞いてきたようで
マイマイがそれに言葉に合わせるようにこの街で買った周辺の地図を取り出す
「さっ最近この辺で傭兵達が集まっているという情報を得たんです
でもこの地図には何も載っていないので嘘の可能性もあります・・・!」
どうやら雇われた傭兵達が地図に書かれた円に集まっているところを見た人物がいるらしいが
地図で見てもわかる通りそこは砂漠の真ん中でとても人が集まれるような場所ではなかった
「・・・それなんだけどさ・・・
もしかしてあいつらは蜃気楼で居場所を隠してるんじゃないか?」
そこでシンは先ほど自分が考えていた蜃気楼を発生させる魔道具の事を伝える
「なるほどな・・・確かにそんな魔道具はあったはずだ・・・
大富豪というほどなのだからそう言ったものを手に入れていてもおかしくはないか
だとしたら二人が手入れてきたこの情報はかなり大きいぞ」
いくら蜃気楼を作り出すと言っても実体を消すわけではないので
建物は必ず地図に描かれている円の中にあるという事だ
ここまで分かっていれば見えていなくても見つけるのは時間の問題だ
「問題はその拠点がどれほどの大きさでどれくらいの警備がいるか・・・
偵察という意味も含めるのならば軍を動かすわけにもいきません・・・如何しますか?」
ナオマサの言う通り問題は見えていないからこそ
拠点の実態と警備の人数が分からないという事だった
調査をするにしても軍を動かしてしまえばすぐにバレてしまう可能性も高い
「・・・私達だけで行きましょう・・・それしか方法はありません」
そしてララが下した決断が自分達だけで拠点に乗り込もうという作戦だった
確かにこの人数ならばバレる事もないだろうが危険な事もないわけではない
「・・・ならその潜入作戦・・・俺も混ぜてもらっていいか?」
すると話を聞いていたカライが自分もこの作戦に混ざりたいと告げる
「俺もこの国を仕切っている責任者の親族だからな・・・何もしないってわけにもいかないし
何より・・・早くこの国を平和にしたいからな・・・」
どうやらカライもカライでこの国を大切に思っていたようで
その為に自分も参加したいと言っていたらしい
「・・・わかった・・・どちらにしても数は多いほうがいいからな」
ララとナオマサはその思いを感じ取ったのかカライの参加を認めた
「潜入となればやはり決行は夜間にしたほうがよさそうですね
それならば一度、仮眠をとったほうがいいと思います・・・
それと・・・やはり一緒に来られるのですか?」
ナオマサは先ほどの話からララがこの潜入についてくるつもりなのだと分かった
本当ならば止めるべきなのだろうが暗殺者のような事もあるので一人にするわけにもいかない
だからこそ自分で行かないと宣言して欲しかったのだが
「・・・行きます・・・もしも彼が騎士団長と繋がっていたのならば他人事ではありません・・・
その有無を知りそして彼らが何者なのか・・・私個人として知りたいのです・・・!」
ララはすでに決意を固めていた
もしも大富豪と自国の騎士団長が結託しているのならばそれは自国の問題でもあると
そして彼らが何者であり何の目的で動いているのか知りたいと
「・・・俺も同じだぜ・・・ここまで人々を混乱に巻き込んでまでしたい事・・・
そして誰が黒幕なのか・・・俺達は知らなくちゃいけなんだ・・・全部・・・」
その気持ちを痛いほど理解していたのはシンだった
彼もまたこの事件に巻き込まれた人間でありだからこそ真実を知りたかった
その上で改めて決意したかったのだ
彼らの企みを何としても止めるという確固たる決意を
「その通りだな・・・では教えてもらうとしよう・・・彼らの企みをな・・・!」
その頃、蜃気楼の中にある大富豪の拠点内では・・・
「やっぱりお姫様はこっちに来ていたのか・・・それで?こっちで捕獲してもいいのかな?」
『構わん・・・元より誰が捕まえようと我らが王に献上するのだからな・・・』
『しくじるなよ?・・・疾風のヴェストよ・・・』
疾風のヴェストと呼ばれしその男
果たして彼は何者でありその真の目的とは?!