動き出した運命
今回からが第一話みたいな感じです
「スッゲェェェェェ!!でっけェェェェェ!!」
王都前の門まで来たシンはその大きさに驚いていた
「そこの君!入るなら早くしてくれないかな?!」
しかも長い間ずっとその場で興奮しっぱしだったので痺れを切らした門番がシンを急かす
それを聞いてようやくシンも我を取り戻したようで急いで入り口に向かう
「全く・・・王都が始めてで興奮するのは分かるけどお願いだから仕事を止めないでくれ」
門番の人は文句を言いながらシンが持っていた許可証を確認する
これは推薦状をくれた騎士が一緒にくれたものだった
それを見て門番は確かに本物であると判断し判子を押してシンに返した
「先に言っておくけど・・・あんまり王都で騒がないでね?衛兵が来るから」
先ほどの興奮ぶりを見ていた門番はもしかしたら中に入っても騒ぐのではないかと思い
絶対に騒がないようにと必死で釘を刺すのだった
(・・・全く自信がない・・・けど・・・頷くしなないよな・・・)
しかしシンはそれに対して自信は持てなかったがとりあえずは頷いた
そして門番の人に入り口を開けられて中に入るとそこには信じられない光景が広がっていた
王都の中を移動する大きな箱のような乗り物や街道を照らす不思議な塔
まさしくシンが見た事のないものばかりが視界に入ってきた
(スゲェ!これが王都!見た事ないもんでいっぱいだ!!)
もはやシンは叫び声を上げれなくなるほど目を奪われており完全に足が止まっていた
「・・・はっ!こんなところで止まってる場合じゃなかった!
急いで試験会場に向かわないと!」
ようやく我を取り戻したシンは本来の目的である入隊試験を受ける会場に向かうとするが
「・・・どこに向かえばいいんだ・・・」
初めて来た王都で入隊試験を受ける場所など分かるわけもなく
どこに向かえばいいのか完全に動きを止めてしまった
「・・・とりあえずそこら辺にいる人に聞こう・・・」
なんとか試験会場の場所を聞いたシンは無事に到着する事が出来た
「ハァ・・・ハァ・・・さすがに疲れた・・・」
もはや入隊試験を受ける前から疲れてしまっているシンは
とにかく会場の受付で推薦状を渡した
推薦状を受け取った受付の人は何やら驚いている様子だったが別に問題があるわけでもないので
そのままシンは入隊試験の会場に入る事が出来たのだった
「おぉ〜!推薦状がないとダメだって言われてたけど・・・たくさんいるな〜!」
会場には百人以上の試験を受ける人で溢れかえっておりそこにはシンのような若者も居れば
かなり歳のいった者の姿も少ないがそれなりにいた
(てか・・・女の子の姿もあるんだな・・・当然といえば当然か・・・
別に男だけしか騎士になれないってわけでもないもんな・・・)
しかも会場には男の姿だけではなく女性の姿も少なからずあった
騎士は別に性別による制限はなく当たり前といえば当たり前なのだが
やはり体を張る仕事なので女性でやりたいと思う人は少ないのだ
それにも関わらずこの試験に参加するという事はそれほどの覚悟があるという事だろう
「・・・俺も頑張らないとな・・・!」
シンは自分もそれに負けじと入隊試験を頑張ろうと思っていると
何やら強そうな騎士が舞台の上に立った
そして何かの道具を渡されてそれを使い話始める
『諸君!この度は我が騎士団の入隊試験によくぞ来てくれた!
君達が推薦状を持って現れたという事は間違いなく騎士に認められたという事だろう!
しかし!それはあくまでも可能性としての施しを受けたに過ぎない!
ここからは自分達の力だけで騎士にならなくてはいけないのだ!
お前達にはどんな困難でも乗り越えて必ず騎士になるという覚悟はあるか?!』
騎士の質問に対してその場にいた全員が叫び声で答える
『よかろう!ならばこれより入隊試験の内容を説明する!!』
『この度の入隊試験はこれまでのものとは違い難度をかなり上げさせてもらった
その内容とは・・・魔物の巣へと向かいそれを壊滅させるというものだ!』
なんと騎士から告げられた試験の内容はあまりにも危険なものだった
魔法を使えないはずの人間が魔物と戦うだけでも危険な事だというのに
それだけではなく魔物の巣まで向かいそれを潰せというのだ
正直な話をするのならばこれは一個人が受けるようなものではなく
騎士団が出向いてようやく成功するかどうかというほど難しいものなのだ
もちろんこれを聞いた者達は慌て始めていた
すると騎士はそんなみんなに落ち着くように叫ぶ
『確かに魔物の巣を潰すなど今の君達に出来るわけもない!
だからこそ我々も協力する!君達がやるのは魔物の巣を発見する事だ!』
どうやらちゃんとした内容は魔物の巣を発見する事だったようだ
その後でちゃんと騎士団が駆けつけて巣を壊すという作戦らしい
(なるほど・・・この世界で一番の天敵である魔物を見せつけて
それをどうやって倒すのか騎士団の仕事も見せようって事か・・・!)
そしてその内容を聞いたシンはこの試験に隠されていた内容に察しがついた
要は魔物とはどれだけ危険な生き物なのかを試験を受ける全員にその身で教えて
その上で騎士団がそれをどうやって倒すのはその仕事も見せるという寸法だと考えていたのだ
確かに目の前にいる騎士もそういう事なのだと思ってみんなに話していた
しかし・・・これが実は違う狙いが含まれているという事をここにいる全員は知らなかった
『それではこれよりこの周辺の地図を渡す!
地図には最近、魔物が出現した場所が示されておりそれを頼りに探してくれ!
見つけた場合は地図と一緒に渡される魔道具で連絡をしろ!
尚、危険が伴う任務故に今回は試験をやめたいという者もいるだろう!
そういった者も魔道具でこちらに連絡してくれ!だが・・・今年の試験は失格となる!
それだけはちゃんと心に留めておいてほしい!それでは・・・試験開始!!』
「う〜ん・・・地図を渡されたのはいいけど・・・ここから結構遠いな・・・」
渡された地図を確認したシンは魔物が現れたという場所がかなり遠い事を知った
それこそもしかしたら向かうだけで夕方になってしまうほどの距離だ
そしておそらくは夜に魔物の巣を探さなくてはいけなくなってしまう
「爺ちゃんの話じゃ魔物は夜になると活発になる奴が多いらしいからな〜・・・
出来る事なら夜になる前に見つけたいんだけど・・・」
この距離ではさすがに無理だろうと考えていると横から馬に乗った女性が近づいてきた
「君・・・もしかして歩いていこうとしているの?」
どうやらその女性は馬で魔物の巣を探しに行こうとしていたようで
それを聞いたシンはその手があったかと思っていた
馬の足ならば確かに出現した場所まで早く着く事が出来
夕方までには魔物の巣を発見する事が出来るかもしれない
しかし問題はどうやってその馬を調達するかどうかだった
王都には初めて来たので馬を貸してくれる伝手もあるわけではなく
さらに言うのならばどこで馬を貸してくれるのかすら分かってはいなかった
「あのさ・・・よかったら私の後ろに乗せてあげようか?」
あまりにも悩んでいるシンを見かねたのか先ほどの女性が
自分の馬に乗らないかと提案してくれた
「そりゃあ嬉しいけど・・・いいんですか?」
シンからして見ればあまりにも嬉しい提案だったが今はお互いに入隊を目指すライバルであり
そんな相手を助けるなどどう考えでも向こうにメリットがない
しかしその女性にはシンを助ける為のちゃんとした理由があった
「忘れた?今回の試験は魔物の巣を見つける事だって・・・
どう考えてもそれじゃあ合格者を決めるなんて不可能でしょ?」
確かに女性の言う通り魔物の巣など誰かが見つけてしまえばいずれ他にも知られてしまう
ならば今回の試験は何を基準に合否を決めようとしているのか
「なら今回の合格に必要なのは・・・慈悲の心よ」
どうやらその女性はこの試験の合否に関係してくるのは慈悲の心だと考えているようだ
それを聞いてシンの納得がいったような顔をしていた
彼女の言う通りならば今回の試験はまさしくそれを試すのに最適な内容なのだ
まずは魔物の巣を発見しろという内容だったが
これは聞いただけならば早い者勝ちな感じになってしまう
だからこそみんなは協力などしないでむしろ妨害などをする可能性の方が高いだろう
しかしそれは逆に合格への道を遠ざける結果になっているのだ
さらには渡された地図にもそれを裏付ける理由があった
それは魔物が出現したという場所を示されていると言う事だ
一見したら別に何の問題もないように聞こえるが実際はこの印をつける事によって
本来ならば協力しなければ見つけられないような巣の探索を
自分一人でも大丈夫なように仕向けているのだ
これらの理由から試験に判断されているのは彼女の言う通りまさしく慈悲の心だろう
「なるほど・・・さすがは騎士になる為の試験だな!まさかそこまで考えられていたなんて!」
正直な話をするのならばシンも彼女に言われるまで自分一人で探そうと考えていたほどだ
まさかそれが間違いだと思っていなかったシンは驚くと同時に感動していた
「あなた・・・随分と変わった性格をしてるわね?
それよりも早く乗っていかないと置いていくわよ」
女性に急かされてシンはようやく馬に乗って魔物が出現した場所に向かった
「・・・ここからは別々で探した方がいいかしら?」
出現場所に着くと女性は別れて探す方が効率的だと提案するがシンはそれを聞いていなかった
何故ならばシンはそこについてすぐに魔物の痕跡を発見していたのだ
「俺についてきて・・・!おそらくは魔物の巣は近くにある・・・!」
祖父との修行で魔物の巣についても教えてもらっていたシンには
すぐに巣がこの近くにあるのだと分かった
「・・・あった・・・!あそこが魔物の巣だ・・・!」
そして少し森を歩いていると洞窟のようなものを発見し
シンはそれこそが魔物の巣であると分かった
「とりあえずは森を出ましょ?安全な場所についてから騎士団に連絡を・・・」
二人は安全な場所に向かおうと森を出るとそこには信じられない光景があった
「なっ?!王都が・・・燃えてる?!!」
そう・・・そこには先ほどまで自分達がいた王都が燃えて煙を上げていたのだ・・・
燃え広がる王都・・・果たしてそこでは何が起こっているのか?!
次回はいよいよヒロインが登場!