奔放王子の悩み
今回はカライの悩みについてのお話です
「お前な・・・仮にも俺は王子だぞ?それを普通投げ飛ばすか?」
先ほどの攻撃に対してカライは少しくらい躊躇しろよと怒っていた
「しょうがないだろ?命の危機に身分も何もないって」
しかしシンは戦いを前にして身分など関係なく互いに背中を預ける存在だと告げる
「全く・・・お前は将来大物になりそうだな・・・
まぁ俺も王子様とかガラじゃないしそっちの方がいいけどな?」
その理由を聞いてカライは目の前にいる男は将来大物になるのではないかと思っていた
そして自分もまた確かに王子という身分ではあるがそれを自慢するつもりもない
だからこそ先ほどのシンの言葉は彼にとってとても心地いいものだったのだ
「とりあえずここを出るか・・・カライはこれからどうするんだ?
すぐにでもアデムに向かうのか?」
シンは立ち上がってカライにこれからどうするのかを尋ねる
自分達も彼と同じくアデムに向かうからこそ一緒に行きたいと考えていたのだ
「そうだな・・・正直この魔物を倒した影響がどれだけ出るか分からないし
これからアデムに向かうとなるとすぐに夜になってしまいそうだからな・・・
出来れば一日ほど待ってからアデムに向かおうと思っている・・・
もちろんお前らも一緒にな?」
どうやらカライもシン達と一緒にアデムへ向かうと思ってくれていたようで
今日はこのままオアシスに戻って明日の朝にでも出発しようと話していた
二人はそのまま出口まで向かうとそこにはこちらに向かってくるナオマサ達の姿があった
「どうやら倒せたみたいだな・・・しかしよく洞窟が壊れなかったな・・・」
ナオマサはあれだけ激しい攻撃があったにも関わらずよく洞窟が潰れなかったと感心していた
「それはおそらくこの洞窟に特殊な魔道具がありそれが結界を張っているからでしょう」
どうやらその理由は洞窟内にある魔道具が結界を張っているかららしい
「結界?そんなものがあったのか?ならなんで魔物が住んでたんだよ?」
シンはそんなものがあったのならばどうして魔物が入ってきたのだと不思議に思う
「結界って言っても砂とか魔法からここを守るっているだけのもので
魔物本体を防げるようなものじゃなかったんだよ」
カライの話ではここに張られている結界は
どうやら墓が埋もれたり壊されたいしないように作られたもので
魔法は防げても肝心の魔物を防ぐようにはなっていなかったらしい
「・・・なんというか・・・ここって王様の墓なんだよな?本当にそれでいいのか?」
さすがに王様の墓だというのにそれはあまりにも不憫ではないかと思っていたが
「仕方ないんだよ・・・ここが作られた当時はまだこの国も民族統一が完璧じゃなかったし
お金もそこまでなかったらからせめて壊れないような魔道具を買うしかなかったんだ」
どうやらこのお墓を作られた当時はまだこの国は完全に統一はされておらず
なけなしの金で払えたのが今の魔道具だったそうだ
そしておそらくはその魔道具を取り替える前にこの墓が砂漠に埋もれてしまったのだろう
「ですがあの魔物がいなくなったのですからこれからはちゃんとした手入れが行えそうですね」
護衛の人は問題となっていた魔物が消えたのでこれからは墓の手入れも行えると話していた
「その為にはまずあの大富豪をどうにかしなくちゃいけないんだけどな?」
そう・・・その為にはまずこの国を乗っ取ろうとしている大富豪をどうにかしなくてはいけない
だからこそこうして砂漠を越える為に魔物を倒したのだから
「とにかく今はオアシスに戻るぞ・・・姫様に無事を報告しないとな」
ナオマサの言う通りまずはオアシスまで戻る事にした
洞窟を歩いて行き外に出るとあまりの眩しさにみんなは一瞬だけ目が眩んでしまう
「なんかそこまで時間が経ってないのにこの空が懐かしく感じるな」
カライの言葉に他の三人も同意するように頷いていた
そして一行はオアシスへと戻り魔物を倒した事を告げた
「そうですか・・・皆さん無事で本当に良かったです・・・!」
誰一人として怪我がなく帰ってきた事に対してララは本当に喜んでいた
「アデムに向かうのは明日になりそうだから今日はゆっくりと休もう」
そしてその夜なぜか宿の窓からカライの姿が見えたのでシンは彼の後を追いかけていく
「・・・また護衛も無しに散歩してるのか?後で怒られても知らないぞ?」
一瞬だけ驚いた様子だったがすぐに知っている声だと気付いたので
カライは振り向かずに話し始めた
「俺は王子様なんてガラじゃないって話したよな?
俺がそんな風に言ったのは別に自虐じゃないんだ・・・
あの護衛の二人は昔から俺に支えてくれているからこそ
俺にとっては兄弟や親戚みたいな感じなんだよ
でもやっぱり俺は王子で二人はその護衛・・・どんなに頑張っても壁があるんだ・・・
俺はそんな壁がなかったら・・・そんな風に思うからこそガラじゃないと思ってるんだ」
カライが自分の事を王子様だと思わない理由は自分が思いたくなかったからみたいだ
王子様という身分は他のみんなにとって絶対に超えられない壁になっているのではないかと
それならばいっその事こんな壁は最初から持っていない方が良かったと思っていた
でもその話を聞いていてシンはそんな事はないのではないかと思っていた
「確かに王子様って肩書きはみんなにとって気になるものかもしれないけど
逆に王子様だったからこそあの二人に会えたんじゃないのか?
だったら自分が王子様だったらなんて言っちゃダメだと思うぞ?」
そう・・・確かに王子様という称号は壁になっているとは思うが
逆に王子様だったからこそあの二人と出会い兄弟のように育つ事が出来たのだと
ならばむしろ二人と出会わせてくれた王子という立場には逆に感謝するべきだと思っていた
「感謝か・・・確かにそうかもな・・・
でもやっぱり王子じゃなければって思う瞬間だあるんだよ・・・」
何を思っているのか分からないがその言葉からはとても悲しい何かが感じ取れた
しかしシンはそれを聞いても今の段階ではどうしようもないだろうと思って
「・・・早く宿に戻れよ?怒られる前にな・・・」
何も聞かずにそのままゆっくりと宿へと戻っていくのだった
翌朝になり一行は準備を整えていざ砂漠の中へと入っていった
「砂漠は我らの方が慣れていますから見失わないように付いてきてください」
先を行くのはカライの乗る馬車でありその後をシン達の馬車がついていく
シンも今回は馬車の中ではなく魔物が出てくる可能性があるので馬車の外に乗っていた
(・・・あれだけの魔物を倒したけど周囲に異変はないな・・・)
あんなに巨大な魔物を倒したのならば小型の魔物は逃げてもおかしくはないのだが
何故か逃げている魔物の姿はなく昨日と何も変わっている様子はなかった
だからこそ少し不安に思う事があった
それはこの近くにいる魔物が襲ってくるのではないかという不安だった
「安心してください・・・前も話しましたがこの周辺の魔物は昼間は砂の中から出てきません
むしろ太陽が落ちた後・・・夜が危険ですね・・・」
どうやら護衛の話では昼間の太陽が昇ってる内はまだ安心できるらしい
しかし夜になって日が落ちると活動が開始されるので
それまでには出来るだけ移動しておきたいそうだ
「今まで考えもしなかったけど魔物も暮らす環境によって違うんだな?」
正直な話シンが知っている魔物は全て王国の魔物だけだったので
国が違うだけでここまで違うのだと思っていた
「ああ・・・だが持っている魔法に関してはどの土地にいようとも変わらないからな
強化されるものもいれば逆に弱体化するものも少なくはない
だから魔物を別の場所に移動させて
どんな風に変化するのかそんな実験もやっていたらしい」
ナオマサの話では魔物が持っている固有の魔法は種族によって決まっているらしく
強化や弱体化されていても根本が変わる事はないそうだ
「・・・そういえば昨日のワームは砂嵐を起こす魔法だったけど・・・
もしかして砂嵐を起こす魔法じゃなくて竜巻を起こす魔法だったって事か?」
その話を聞いてシンはならば昨日のワームは魔法が変化していたのではないかと思っていた
「その可能性は十分にあると思います・・・我々もあんな魔法は知りませんし
あんなに砂漠にとって有利な魔物を先代が連れてきているとも思えませんしね」
どうやら護衛の人も同じように思っていたようでその可能性は十分に高いと話していた
「・・・そういえば全くカライが話に混ざってこないんだけど・・・」
そんな話をしている時に全くと言っていいほどカライが話に混ざってこなく
一体何をしているのだろうと思っていると
「王子なら馬車の中で眠っていますよ・・・全く呑気な人です・・・」
先ほどから声がしなかったのは馬車で寝ているからだったようで
護衛の人は呆れたものだとため息を吐いていた
しかしその理由を知っているシンからして見れば何も言えなかった
(あいつも王子って立場で色んな苦労をしているんだな・・・
でも王子だからこそ苦労する悩みって一体なんだろうな・・・後でララに聞いてみるか?)
シンは王族だからこその悩みについて何も分からないので
それは同じ王族であるララに聞いてみようと馬車の中に入る
するとそこではちょどよくテンテコとマイマイは寝ていたので
シンはひっそりとララに先ほどの事を聞いてみた
「王族だからこその悩みですか・・・友好ではないとすると
もしかしたら結婚などの可能性もありますね・・・」
ララは友人関係ではないのならば残された可能性は異性関係ではないかと話していた
「そっか・・・王族は結婚相手を選べないのか・・・あんな風に悩むのも仕方ないよな・・・」
その話を聞いてシンはそれならばカライがあんな風に王族の自分を嫌うのも納得だった
そしてその話を聞いてもう一つ彼の中では気付いたものがあった
(そうか・・・ララもお姫様だし自分の意思で相手を選べないのか・・・)
それに気がついた時、シンの中では可哀想と思うのではなく
なぜか嫌だという気持ちを強く感じていた
ようやく一行は砂漠へと入っていきアデムへと進んで行く