黒の復讐者
今回は新しい巨人が登場します!
あれからテンテコとマイマイが仲間に加わった一行は北を目指していたのだが
「二人が増えて食材もそれなりに使うようになってきてしまったからな・・・
どこか近くの村か街で食材を買い足した方が良さそうだな」
二人が増えてから食材の消費も増えてしまったので在庫が残り少なかった
ナオマサはこの近くで食材を買い足せる場所がないかと地図を広げる
その頃、馬車の中にいるシンは唸り声をあげながら何かを悩んでいる様子だった
「・・・あの〜・・・どうかしたのですか?」
さすがにこれを無視してはダメだろうと思ったララはどうしたのか尋ねる
「ん?ああ・・・いや俺って巨人について何も知らないからさ・・・
今までどうにか乗り越えて来れたけど正式な師匠とか探さないとダメかなって」
どうやら先ほどから考えていたのは巨人乗りの師匠についてだったようだ
確かにこれまでシンはどうにか作戦やディパシーの能力で勝ってはきたが
やはり操縦の仕方や戦い方に関しては自分でも感じてしまうほど素人丸出しで
これからの戦いを考えればこのままではいけないと彼なりに考えていたようだ
「確かにそれは私も考えていた・・・私は生身でも戦いならば教えてやれるが
巨人には乗った事がないからな・・・そう言った意味では師匠は必要だろう」
ナオマサもシンと同じように考えていたようだが問題はその師匠を誰にするかだった
先ほど彼自身が言ったようにナオマサは巨人を操った事はなく師匠にはなれない
おまけに巨人乗りはかなり数が少なく大体が重要な拠点の守りを任されている
今からそんな場所に迎えた間違いなく騎士団長の耳にも入ってしまうだろう
「となると・・・他の国で師匠を探すか・・・いや・・・それも難しいか・・・」
残された選択肢はこの国ではない別の場所で師匠を探すというものだったが
これにも問題と言えるものが存在していた
それは巨人を操る技術も国家機密に関わるという事だった
それこそこれから向かう友好国のヴァンカンスですら渋る内容と言えるだろう
となると残されているのは国に属さないフリーの巨人乗りだけだった
「しかし巨人乗りの傭兵はかなり数が少ない・・・
何せ彼らはそれだけで十分な脅威になり得る・・・それこそこの前の盗賊団のように
巨人の力を使って悪さをするのがほとんどだろうからな・・・」
しかしフリーの巨人乗りは大抵が盗賊団など悪さをしている者がほとんどだった
この世界に巨人以上の戦力はないのだから当然といえば当然だろう
「・・・どうしてそんな人を巨人を選ぶのでしょうね・・・」
ララはそんな間違いを犯す人間をどうして巨人は選ぶのだろうと悲しそうな顔を浮かべていた
「・・・お言葉ですが彼らも別に最初から悪人だったというわけではありません・・・
中には最初から巨人を悪用している者もいるでしょうが
他にも人々から恐れられて迫害を受けた者たちもいるのです・・・」
ナオマサの話ではどうやら巨人乗りはその強すぎる力故に恐れられても来たようだ
そして結果としてそれに耐え切れずに悪の道へと走った者も少なくないそうだ
「・・・なんだか悲しいな・・・人々を守る為に巨人を作ってそれに乗っているのに
その人々から怖がられて避けられるようになるなんてさ・・・」
同じ巨人に乗っているシンだからこそ今まで迫害されてきた巨人乗りの痛みが理解できた
人々を守る為に立ち上がったというのにその人々から迫害されたのだ
もう誰も信じられなくなったとしても仕方のない事だろう
「・・・ああ・・・それによって大昔のような戦争を引き起こすとも知らずに・・・な」
そしてナオマサはここから引き起こされる最悪の展開についても予想がついていた
それはかつて魔法が封印された理由と同じ力に溺れた者が引き起こす戦争だ
しかも今回は力に溺れたというよりも力に逃げてしまった者達による戦争
つまりは戦争を起こした者達も被害者となるまさしく傷だらけの戦争となってしまうだろう
(だが・・・未知の力を持つものを警戒するのは人の性だ・・・
それを直すのは容易い事ではない・・・それこそ世界を変えるほどに・・・)
ナオマサはその戦争を作り出す原因である人の警戒心を変えるのは不可能だと考えていた
何故ならばその難しさはまさしく世界を変える事に他ならなかったからだ
「何にしても今は考えても仕方ない事だ・・・今は食料を買いに向かうぞ」
そう言ってナオマサは地図をしまいそのまま近くの村へと向かっていった
そして村の近くに来たのだが何故かナオマサとララは村の中へ入らないと言っていた
「この前の事もあるからな・・・
もしかしたら我らの方はすでに目をつけられている可能性がある
だから買い出しに関してはお前らだけで行ってもらいたい」
どうやらこの前の村での軟禁をあったからなのかナオマサはかなり警戒しているようで
シンはテンテコとマイマイの二人を連れて村へと買い物に向かった
「そこまで大きな村じゃないけど結構賑やかだな・・・
そうだ!テンテコ!少しだけこの村で情報を集めてきてくれないか?
俺達はその間に買い物を済ませておくからさ!」
村はそれなりに賑わっておりそこでシンが考えついたのは情報収集だった
先ほどナオマサが話していた報奨金に関してはどこまで伝わっているのか
そして王都以外情勢に関しては一体どうなっているのかそれを確かめたかった
「いいけど・・・あいつらからもらう報酬とは別にお前からもらうからな!」
テンテコはシンから依頼料をもらう事で了承しそのまま人の多い方に消えていった
(もしかしたらこれで有力な情報が手に入るかもしれないしな・・・
と言っても・・・それが手に入ったからってどうにか出来るわけじゃないけど・・・)
シンは有力な情報を手に入れたとしても今の自分ではどうにも出来ない事を知っていた
しかしそれでも知らずにはいられなかった
もしも自分達が何も知らない間に被害が増えていたら絶望が大きいから
「さてと!それじゃあテンテコが情報を集めてる間に俺達は買い物を済ませちゃおうか!」
シンはマイマイを連れてそのままナオマサに頼まれていた食材を買っていく
「う〜ん・・・一応、盗賊を倒した時のお金はまだ残っているけど・・・
やっぱりオアシスに辿り着くまでに節約していた方がいいだろうな〜・・・」
お金は節約しようと思いながら買い物をしているシンを影から誰かが見ていた
「とりあえずはこれくらいでいいかな?そろそろテンテコも戻ってくるはずだけど」
シンとマイマイは買い物を終えて広場で待っているとテンテコが慌てた様子で帰ってきた
「おお!どうだった情報はぁぁぁぁぁ?!!」
そしてシンの目の前に来た同時に報告をせずそのまま腕を掴んで再び走り出す
「ちょっ?!どうしたんだよ?!何かあったのか?!!」
シンは一体何があったのかテンテコに尋ねる
「何かどころの騒ぎじゃねぇよ!!外にいる二人が何者かに襲われてるって
さっき村の人が慌てて話してたんだよ!!」
何とテンテコが手に入れてきた情報は王都に関するものではなく
今まさにナオマサとララが何者かに襲われていると言う情報だったのだ
それを聞いて先ほどまで腕を引っ張られていたはずのシンが前へと出た
しかもそこからテンテコ以上のスピードで村の外へと走っていく
(まさかもう刺客が追いついてくるなんて・・・!ナオマサなら問題はないと思うけど
もしも向こうが巨人乗りだったら・・・勝ち目は・・・ない・・・!)
そして凄まじい速度で戻っていくシンが目撃したのは
やはり巨人に圧倒されているナオマサだった
「クッソ!嫌な予感が当たった!ディパシー!!」
シンはディパシーを呼び出してナオマサ達を襲っている黒い巨人に突っ込んでいく
「真っ黒野郎!お前の相手はこの俺だ!!」
ディパシーの突撃を受けた黒い巨人は少し距離をとる事になる
『・・・お前が王族を守る罪人か・・・いいだろう・・・貴様から殺してやる・・・!』
黒い巨人はその身体よりも大きい大剣を振り下ろしてくる
「ぐっ?!何つう重い一撃なんだよ?!」
その一撃は防御したディパシーの腕から火花を散らしさらには地面を砕くほどの威力があった
しかもそこには技を加わっており防がれるとすぐに体を回転させて横に剣を振るう
シンはこれにも反応はできたが操作が間に合わず簡単に攻撃を受けてしまう
『・・・どうやらお前は巨人に乗って日もないみたいだな・・・
残念だが・・・そんな腕ではこの俺と・・・リエンに勝てるわけがない!!』
どうやら黒い巨人はリエンというようで確かに実力はすでに歴然だった
巨人の性能だけならばディパシーの方が上なのだろうが問題は乗っている人間の操縦技術だ
(しかもこの差はこの前の盗賊団の頭みたいにどうにかして埋まる差じゃない・・・!)
シンはもはや勝つ事ではなく二人をどうにかして逃がす作戦に切り替えた
その為にはまずどうにかして向こうの動きを止めなくてはならない
(こうなったら自分が動けなくなるのも覚悟でしがみつくしかない・・・!)
そしてシンはもはや武器すらも捨ててリエンに突っ込んでいき組み付く事にした
しかしそれはすでに読まれていたようで簡単に上空へと躱されて
さらにはその上から大剣で叩き潰されてしまう
『・・・言ったはずだ・・・その程度ではこのリエンには勝てないと・・・!』
乗り手の男はまるでもう戦う相手はいないと言わんばかりに
ララ達の元へと向かおうとした時だった
「まだ・・・まだだ・・・!跳べ!ディパシー!!」
シンはディパシーの能力で時を飛びリエンに突っ込んでいく時まで戻る
もちろんリエンはそれを上空へと飛んで躱そうとすると
「行かせねぇぇぇぇぇ!!」
それを未来で見ていたシンは自分も飛び上がってリエンに組み付く
(何っ?!こいつ俺の動きを読んだのか?!!)
リエンの乗り手はシンの動きに驚いていたがもう勝敗はついていた
何故ならばすでにシンは先ほど時間を跳んだ影響で気絶していたからだ
そしてそれはすぐに相手も気づいたようだが
先ほどの衝撃が影響しているのかまともに巨人が動いてくれなかった
『・・・今回は貴様に免じて見逃してやろう・・・』
そう言ってリエンはどこかへと去っていき残ったのは虚しいまでの無力感と
・・・言い知れぬ敗北だった・・・
初めて味わった敗北
それはこれからのシンにとってもっとも大きなものになった