密室で交わす婚約〜意地悪な幼馴染に脅されていたんだけど、愛さているみたいなので逃げるのはやめました~
なろうラジオ大賞3に応募した作品。
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【短編集】幼馴染から婚約者になる
『密室で結ばれた婚約〜意地悪な幼馴染だと思っていたけど、実は愛されていたみたいです』
の、大修正前のお話です★
違いを楽しんでもらえたら嬉しいです♪
もちろん、このお話だけ読んで頂いても嬉しいです♪
私は今、図書室に閉じ込められている。本に夢中になりすぎて侵入者に気付かず、鍵を奪われていた。
犯人は、私の幼馴染。
「ねえ、そろそろ受け入れてくれないかな? 婚約」
「……嫌」
「もう幼馴染の中で、残っているのは僕達だけだよ?」
「嫌よ、あなたは私の事が嫌いでしょ?」
「どうして?」
「だって、私に意地悪ばかりするから……」
私は本を読むのが好きで、幼馴染達と一緒に遊んでいても、疲れると図書室に来て一人で本を読んでいました。
すると彼がやってきて、私の大好きな本を奪うのです。
それに、幼馴染のお兄ちゃんと話していると髪を引っ張ってきたり、私の大嫌いな虫を見せに来る。
そんな意地悪な彼と婚約? 絶対に嫌!
「婚約を承諾してくれないと、ここから出してあげられないよ?」
この図書室は地下にある。以前は緊急時に避難する場所として使われていたのを改装した部屋で、扉には内鍵が付いている。図書室になってからは、内鍵は使ってなかった。
外鍵を開ければ出入り自由だから閉じ込められる事はないと油断していた。
今は内鍵を掛けられたので、彼の手にある鍵がないと出られない。ーーどうにかして鍵を取り戻して逃げ出さないと。
「鍵を開けないと、あなたも出られないでしょ」
「僕は君と一緒なら、ずっとここにいてもいいよ」
そう言って彼はニッコリ笑う。こんなに意地悪なのに、彼は女の子に人気がある。黙っていれば、物語に出てくる優しい王子様みたいな見た目に、みんな騙されている。
私達は、お互いの母親が昔から仲が良かったらしく、物心ついた頃には毎週お互いの家を行き来していた。当時は彼ともまだ仲が良かった。
彼が意地悪になったのは……。そう!他の幼馴染達と出会ってからだ。
いつからか母達の学生時代の友人とその子供達も一緒に集まるようになって、気付けば私達の幼馴染は五人になっていた。
「僕と君は結婚の約束もしたのにな」
「約束なんてしてないわ」
「これが証拠だよ」
そう言って彼が取り出したのは、婚姻届だった。小さな子供の字で、私と彼の名前が書いてあった。
「結婚式ごっこの……遊びで書いただけでしょ?」
「いや、僕はプロポーズもしたよ」
「それも遊びでしょ? こんな婚姻届は無効よ」
「ひどいな、確かにこの婚姻届は本当には使えないけど、俺のプロポーズは本気だったし、大きくなったら結婚しようって約束したじゃないか」
「だから、そんなの知らないわ!」
「これ、何の鍵かわかる?将来旦那様になるからって、その時シャルに貰ったんだ」
彼が取り出した鍵に見覚えがあった。
赤いリボンに黄色い花の刺繍。私が初めて刺繍したリボンがついた鍵は、無くしたと思っていた、この図書室の合鍵だった。
「私、覚えてないわ」
「シャルが覚えてなくても、俺が全部覚えてる。それに、母上達が証人だ」
そう言われて、ようやく思い出した。『結婚式をしよう』と彼が言ったので、母達に手伝ってもらって庭で結婚式をした事。
ただ、私はいつものごっこ遊びだと思っていたけど、彼は……ルカリオは本気だったの?
「じゃあ、何でルカリオは私に意地悪したの?」
「俺はシャルに意地悪した事はないけど?ただ……そうだな、邪魔はしたかもしれない」
「邪魔?」
彼は本棚から一冊の本を手に取った。
「【深淵の森に住む少女】この小説、好きだろ?」
「そうね」
「で、この物語に出てくるライオス王子、好きだったよな?」
言いながら本の表紙を私に見せた。
「シャルはフランチェスを見て言ったんだ『フラン兄様って、ライオス王子みたい』って……」
確かにそんな事を言ったかもしれない。幼馴染の中で唯一年上のフラン兄様は、とても優しくて笑顔が素敵で、表紙絵のライオス王子みたいなキレイな深い緑の目の色で、憧れのお兄様だったから。
「だから、この本を読んでいるシャルを見つけたら、必ず本を奪っていたんだ。それに、フランチェスに頭を撫でられているのを見るのが嫌で、髪を引っ張った事もあったな。あと、フランチェスが昆虫好きだと聞いて、虫を見せに行ってた。シャルは虫嫌いだから、フランチェスから離れると思って」
「それは、私に意地悪をしていたんじゃないの?」
「大好きなシャルロッテを取られまいと、邪魔した結果かな。俺に意地悪されたと思ってたのか……それは、悪かった。ごめんな」
嫌われたんだと思っていた。突然理由も分からず意地悪をされて悲しかった。
まさかルカリオの行動が、好きな小説の王子様とフラン兄様が似てると言った事が原因だったなんて思ってもみなかった。
「ルカは、私の事好きなの?」
「そうだよ、信じられないなら何度でも言うよ。俺は、出会った時から、シャルの事が大好きなんだ」
そう言って笑った彼の顔は、ニッコリ笑ういつもの顔じゃなくて、子供の頃二人で遊んでいた時に見た、優しい笑顔だった。
それを見て私は思い出した。
綺麗なバラが咲く庭で、彼は私に確かに言っていた。
『出会った時からシャルの事が大好きなんだ。俺と結婚してくれる?』
『うん、私もルカの事が大好き。そうだ今から結婚式しましょう』
そう言って母達を立会人にして、執事に牧師役をしてもらって小さな二人は結婚式をした。
"結婚式をしよう"と言ったのは私の方だった。
『大人になったら、本当に結婚しようね』
『約束ね。そうだ、私の旦那様になるルカに大事な図書室の鍵をあげるね。二人だけの秘密よ』
本当に約束していたし、図書室の鍵もあげていた……。
言い訳をさせてもらえるなら、多分嫌われた事がショックで記憶を封印して捏造していたんだと思う。
フラン兄様の事は、素敵だと思っていたし憧れていたけれど恋とは違った。私が昔から好きなのは……。
「シャル、愛してるよ。俺と婚約してくれるよね?」
いつの間にか目の前にいたルカは、私の手を取り楽しそうに微笑んだ。
意地悪な幼馴染に脅されていたんだけど、愛さているみたいなので逃げるのはやめました。
文字数制限がらなかったら…こうなりました(笑)
監禁まではいかなかった。
溺愛系ヤンデレ×推しに憧れ少女
推しは推しだから!
好きだけど、そーゆーんじゃないから!
わかる(笑)
あと、皆様お気づきでしょうか。
一度消して復元した前半部分と、後から完結させる為に書き足した部分には、ある分岐点があります。
あきらかに前半のセリフと後半のセリフ変わっている所が…
心情の変化に混ぜて、前半わざと変えずに残しました。
後書きまで読んで頂きありがとうございました!!
評価して頂けると喜びます★
次の話は…