置時計
チリリリン
チリリリン・・・
目覚まし
「・・・」
隣でむくっと起きる気配
そして
ゆさゆさ
「朝だよ、起きて」
少し大きな掌が私の肩を揺らし
寝起き声で温かく私を覚醒させる
「うぅ・・・うん、今起きるから・・・」
その声になんとか答えながら体を起こし
彼を見る
そして眠気眼に見つめる先に
「おはよう」
そういってこちらを見る彼がいる
「うん、おはよう」
そういって軽くキスをせがむ
その姿に
彼はすぐに反応してくれて
口に軽くあたたかな感触が灯る
「ふふ」
「ほら、起きてしたくしないと」
「は~い」
そういうとあたたかな布団から出て
現実へ引き戻されたような感覚を感じながら
朝の支度を二人共どもにはじめていく
「朝ごはんどうしようか?」
その問いに彼は
「うーん、どこかで買って食べるかな?」
「わかった、じゃ私もそうするね」
そんな朝の確認と慌ただしい感じ
甘かった時間をあっという間に置き去りにして
二人は社会の激しい流れへと身を投じる
そんな気分
そして支度が終わった彼は
「それじゃ、先にいくね」
「うん、いってらっしゃい!」
「あ、あと今日遅くなるかも」
「わかったよ、気を付けてね」
「うん、いってきます!」
その言葉のあと彼はドアを開けて
外へと歩き出す
その背中を愛おしく見送る
「ふー、私もがんばろ!」
そうやって自分に今日一日へのやる気を入れる
彼から遅れて部屋をでた
人の波
時の流れ
どれも早くて振り落とされないように
しがみつくような日々
社会人になって感じるのは
多忙という言葉の本当の意味
そんななかなんとか乗り切れてるのは
この扉の向こうに彼が待ってくれる
彼のぬくもりがあるから・・・
ガチャ
「ただいま」
扉の向こうは暗い部屋
「あ・・・そうか今日遅いって言ってた・・・」
そのことを思い出してすこし華やいだ心が
しゅんっと落ちる
しかし
「そうだ!」
そのまま外にまた出かけてスーパーに行く
そして買い物の済ませて
また部屋に戻る
そして買い物の中身を台所に広げて
支度を始める
昔は得意じゃなかった料理も今は少しは上達した
そして
彼に初めて食べてもらった料理を作る
チクタク・・・
チクタク・・・
部屋の置時計が時間を刻む
彼を思い流れる時間
そこには今朝のあたたかいぬくもりが戻ってきていた
[あー早く帰ってこないかな]
胸の中でそんなことを思い
流れる時間に身を任せる
置時計の秒針のリズムは
二人の暖かな時間へのカウントダウン
扉が開き
「ただいま!」
その声が聞こえたそのあとも
時を刻む二人の日常を眺めながら