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始祖の龍人  作者: どらっご
1章 少女と神龍
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6話 異形の襲来


「あー…、ドン引きするぐらい無防備なんですね…」

「ああ、確かに」


誰もが思ったであろうことを瑠蘭は言った。

アクニリディア自身そう思っていた。


「どうしてなんですか?徹夜で何かしてたんですか?」

「当たりだ」





「そういえば今日2年の留年組が闘技場エリアに行かされるっぽいね〜」

「…………すぅ」

「…安定ねぇ」


ここは1年生の講義室。雨愛と華奈は後ろ辺りの席に座っているのだが雨愛はばっちりしっかり眠っていた。

そして相変わらず悪い癖を発揮してどれだけ刺激されても起きないため教師も起こすのを諦めている。(スカウトされた者であるというのも理由にあるが)

ただ、幸か不幸か全く寝息もイビキもかかず一切の音を立てないため、見さえしなければ何ら害はないということで皆大体スルーしている。隣の華奈にだけかろうじてすうすうと静かに呼吸の音が聞こえている程度だ。


現在の講義は戦場での応急処置について、である。

胸骨圧迫のためのアイテムなどはあるが、想定している状況が状況なので大して使える模型がなく、基本座学である。暇。

そして残念ながら座学で知識をぶち込まれるのが苦手な人もおり、うとうとしているのもちらほら。


「その子また寝てるのね。超ロングスリーパーじゃん」

「だよねぇー…、私もそう思う」


近くの女子が話しかけてきたので応える。奇遇にも華奈と他の人達の認識は共通しているらしい。


「あんたとんだ貧乏くじ引かされたわね」

「慣れちゃった。いつも遅刻ギリギリなのにもね…」


雨愛は確かに華奈と同じ時間、正確には夜の11時には眠りについたはずなのだ。それなのに朝やや遅めに起きた後の今でもぐっすりと眠っている。


「可愛いけどよく寝るってなんかマスコットのコアラみたいね」


そう他の女子が言ったとき。

雨愛がゆっくりと起き、周りの空気を一切読まずに大きな欠伸をした。


「くぁ〜〜〜っ」


数秒間に及ぶ欠伸をした彼女の目尻には大きな水滴が溜まっていた。


「あ、起きたのね雨愛ちゃん。突然なんだけど質問い…」


すかさず教師が雨愛を当てたその時チャイムが鳴った。


「あらら、授業終わりのチャイムがなっちゃったわ」

「ちゃいむ…?おわり?しつもんなしぃ…」

「うーん?何言ってるのかなおばかさん?するよ?戦場で仲間が負傷した時、真っ先に駆けつけるのは正しいでしょうか?」

「ほけ……は?正しい…」

「残念、間違い!」


全く機能してなさそうな頭ながらも答えたが、どうやら違うらしい。

理由としては負傷者がいる場所=危険な場所なので不用意に近づくと自身も巻き添えになる可能性があるからだと教師は言った。


「ほへぇ〜」


完全に聞き流しているような気の抜けた声を出し、雨愛は再び眠りについた。

全くよく眠る女の子だった。

隣の華奈も思わずため息をこぼす。


ちなみにこんなにも寝る理由についてだが、実は夜にこっそり体を動かしているため、あまり睡眠時間を取れていないことによる。

元より1日8時間程は眠る雨愛は今までなら日中何かしら魔物と戦い、殺していることでついでで体を鍛えていたが学園に入ってからその時間を日中に取れなくなってしまった。そのためやむなくその時間を夜に移したのだ。


これにより睡眠時間が日の登った後にもずれ込んでおり、日中と夜の疲労を回復しきらねばならないため、寝れる時に死んだように眠るようになったのだ。


つまり、1人で放浪していた時には寝ている時に何をされても起きないという無防備の極みはしていなかったということになる。


だがしかし、記憶の奥深くに爪痕を残し、こんなにも泥のように眠り微動だにしない彼女をも起こす存在がある。


甲高いが人のものではない悲鳴のような叫び声が聞こえた時、眠っていた雨愛の目は開かれて顔を上げた。


「ん…」

「おはよう雨愛ちゃん」

「呼び声」

「ん?誰も呼んでないよ?」


自分に話しかけてきた華奈の声を無視して耳を澄ますと…。感じた。


「チッ」


舌打ちすると雨愛は側に置いてある剣を引っ掴み窓から飛び出て行った。

とてもいままでのんびり眠っていた人とは思えないほどの機敏な動きであった。


「ちょっと待ってよ雨愛ちゃん!!」


慌てて華奈も講義室を出て行った。


「雨愛ちゃん!どうしちゃったの!?」





少し前。留年組のいるコロシアム型闘技場。


「キィヤアァァァァァッッ!!」

「痛ェか!?もっとやるよ!!」


一体の二頭狼を15人程が取り囲んでいたがその中の数人しか攻撃に参加していなかった。


「コラ貴様!!教えた通りに動け!それでは危険行為すぎる!」

「うるせぇ!こっちは鬱憤溜まってんだよ!」


留年組は巷では不良組と言われている。試験で落ちた者たちの集まりなので皆程度は違えどイライラしているため粗暴な行いをするものが年度で数に差はあれども存在するのだ。


「待て!無駄に時間をかけるとまずい事になる!」

「うるせえっての!耳障りだから黙ってろよ!」

「取り返しのつかないことになるぞ!」

「いや脅しとかマジいらねーから!あんまりうるせーと殺すぞ!!」


全く教官の言うことを聞こうとしない生徒。

その時。


「クルルルルルァァァァァァァァァァァァ………!!」 


二頭狼が甲高い悲鳴を上げ、頭を地面に付けるように倒れた。


「いよっし!討伐完了!雑魚すぎ〜。マジで俺こそ卒業させるべきでしょアホじゃんここ?」


完全に油断していた生徒は気づかなかった。

自身に近づく空間の歪みに。


カーテンのような光と共に彼の右腕が肩から離れた。


「……?」


ドチャッという音とともに腕だったものが地面に落ちた。

不思議そうに見る視線の先からドバッと血が噴き出た。


「イッ!?いてぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」


何が起こったか気づいた瞬間に激痛に襲われ、彼はその場にうずくまり上空を見るとその存在にようやく気づいた。


その存在は全長10m程で4本の足で、背から生える8枚の翼を持って浮遊していた。


それは本来この付近にいないはずの存在。“隣の者”の中でもたかが人間如きでは敵うわけもない圧倒的上位の存在。


「ドラゴン…っ!」


ドラゴンと呼ばれたそれは二頭狼を守るように被さると空へ咆哮を轟かせた。

他の生徒達はおろか教官にも余裕がなくなった。


「補修中止!!全員非常口へ逃げろ!!」

「早くしろ!死ぬぞ!!」


隣の者には全種類共通の1つの厄介な習性がある。

それは自身が瀕死になると上位種を呼ぶというものだ。そして大体それに応えるのは龍であり、同じ人間を敵としている間柄として仲間である隣の者を傷つけられた龍は敵意を持って対峙してくる。


ドラゴン、又の名を龍族。彼らは隣の者の内で最強で、守護者で、仇なすものを蹂躙する破壊者であるのだ。


この龍が現れるのを避けるため、捕獲した隣の者を使用した実習や補修では最適な連携を取らせ迅速に討伐するのだが、どこかの誰かさんがその連携の学習をガン無視したせいで時間がかかってしまい、龍を呼ばれてしまったのだ。


ドラゴンは視線を巡らせ、下側を向いた時に動きを止め足を持ち上げた。

その先にはうずくまる生徒の姿。


「ひっ!や、やめろっいやだ!しにたくn」


グシャッ!!という生々しい液体混じりの音と共に彼はドラゴンの足の下敷きになった。


続いて口元に水を溜め、非常口の1つに狙いを定め放つと、着弾と同時に闘技場の構築物が炸裂した。

衝撃と共に発生した土煙が晴れると沢山の人々が倒れていた。


このドラゴンは水を扱うことを得意としていた。

そのため分類的には水龍となる。


水龍はそこから目を離さないどころか目を発光させて見つめている。

何をしているのかは人間にはには知られていないが、心音を探知している。つまり、まだ生きている人間を探しているということ。次なる目標を定めるために。


この能力のおかげで仲間を傷つけた敵を死ぬまで探知し蹂躙する。

さらに質の悪いことに、少なからず怒りを持った龍は呼び声を発生させる原因となった物を抹殺した後も周辺のものに襲いかかる性質を持っているということだ。これにより余計に被害が広がる。


そして見つけた方向へゆっくり進んでいく。


ここで露わになったものがあった。

水龍によって踏み潰された死体である。ソレはもうすでに肉塊と化しており、龍の重さと、人間と龍族の圧倒的な力の差を示していた。


「ひっ…」


目標を定められた少年は水龍の視線と肉塊を見たことで完全に腰を抜かし、動けなくなってしまった。


「嫌だ…来るな…くるな……」


そんな声が聞き入れられるならどんなに優しい世界だろう。

残念ながらそんな奇跡は起こらない。水龍はその口を開け、少年を喰らおうとした。


「っ……!」


少年は死を感じ、目を瞑った。

だが少年が喰われることはなかった。


ガコッという音と共に水龍の顎に剣が突き立てられたからだ。


「そいつは喰わせない…!」


別の少年が足を震わせながらも自分の剣を龍に投げつけ、動きを邪魔したのだ。


水龍は彼を見、敵意を乱入した少年に移した。


邪魔。消えるか、死ね。

そんな空気を纏っていた。


投稿サボ…遅れました。どらっごです。


最近某3人チームバトロワfpsにハマってまして、そっちばっかやってましたら小説のことすっぽかしてました。多分直りません。ユルシテ。


早い目に次話も載せます。でないと主人公ちゃん寝て起きて飛び出しただけになる、これはまずい。多分。


それでは今度はそう遠くないうちに、また。

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