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始祖の龍人  作者: どらっご
1章 少女と神龍
4/7

4話 学園


太陽が見える。

そう、ここは地上だった。


「……眩しい…なんであたしはこんなところにいるの」


雨愛は自称学園長こと或部田に連れられ、学園の校門前に来ていた。取り上げられたかと思ったが剣はちゃんと手元にある。


「来ることに同意したじゃないか」


確かに同意した。

割と無理矢理だったが。

のだが…。


「したけども…いきなり制服着せられて明日即転入って冗談かよって思ったんだよ…手続きってないの?」

「ああ、手続きならこれからする。ちなみにその制服は借り物だ」

「じゃあなんで着させたの」

「君の普段着の衝撃が強すぎる故、主に男子生徒に悪影響を与えると思ったからだよ」

「………は?何言ってんの」


疑問符を浮かべる雨愛。それを見て或部田も疑問符を浮かべた。


「まさか分からないのか…?」

「?」

「どんな生活したらそんな感覚になるんだろうな…はあ。じゃあ正直に言おう。君の普段着は所々破けているせいで腹は丸見え、足も太腿の半分くらいまでしか覆えてないしさらに胸もそんなに隠せていない」

「全身隠せるくらいの布あった気がするんだけど?」

「あれは顔くらいしか見えなくて逆に良くないよ」


こういうことだった。

雨愛の服は定期的に洗われているため汚れてこそ少ないが、度重なる戦闘のおかげで各部分が欠損してしまっている。

そのくせに彼女本人は余り人と接することがなく、その上自分の容姿に大した興味を示さず戦いのことしか考えていないので、欠損した服によって見えてしまう腹や胸元のことを一切気にしていないのだ。


移動するときなどは顔しか見えない様な大きな布を体に巻いているが、この目のやりどころに非常に困る服装のせいで妙に絡まれることが多いということを彼女の頭には理解できていない。あるいは絡まれたとしても殺せばいいと思っているからなのか。


ただ、そんな彼女でも右の二の腕だけはしっかりと包帯などで隠していた。


こんな感じで女性としてかなり危うい容姿だったので、或部田は人目につく学園の近くに来る前に予め制服に着替えさせておいたというわけだ。


「さてと、とりあえず回ろう。明日から住み込む学園だ。どこに何があるかわからないと話にならない」

「あーい」


そうして学園の見回りが始まった。

まず来たのは寮。或部田曰くどうやら学園側が学生を管理下に置きたいため全員が入寮させられる仕様のようで、5階建ての寮が数個あった。


それぞれどうやら男子寮と女子寮に分かれているようだ。


「まあここは入学したら住む場所だよってだけだから次いくよ」

「あーい」

「あ、でも今晩から君はここの3階の部屋に住んでもらうから覚えておいてくれよ」

「あーい」


続いて来たのは食堂。

ただ場所を教えるために来たのだが、来た途端に雨愛の腹が鳴った。


「腹が減ったのか?」

「うん」

「昼食とるか」

「うん」

「金はあるか?」

「一応。ほら」


と言ってお金を出してきたがどことなく血が固まった様なものがついている気がする。


「うん、それ使うのはやめとこうか。奢るよ」


というわけで。食事。

雨愛はどんなものを食べるのか?と思っていたら、肉7割野菜1割米2割だった。

ちなみに或部田は野菜5割米3割肉2割と言った感じ。


「肉、多いな」

「普段からこんな感じ。ちゃんと野菜蛋白質炭水化物はとってるし大丈夫だって」


と言いながらフォークを肉に突き刺し、口に突っ込んだ。


彼女は元々教わるのが遅かった作法や意識といったものが定着しきる前に故郷を失った経緯があるため、ところどころ意識的に抜けているところがある。


「さて、食べ終わったら次は校舎に行くぞ。かなりでかいからな」

「ふーん、ひょっほひいあうあ」


口に物を含みつつも口を閉じながら音を発したためまるで何を言っているのかわからない。

雨愛がごくんと喉を鳴らしたタイミングで…、


「すまん、もう一回頼む」

「“ふーん、ちょっと気になるな”って言った」

「OK」


そして食事をを続けようとした時。


「あ、学園長じゃないですかー!なんすかその子ー?」


複数の生徒が或部田に絡んできた。

どうやらこの学園、学園長と生徒との距離感が近いらしい。


「ああ、その子は明日からここに入る子だよ。外から私が連れてきた」

「へー!スカウトっすか!って結構可愛いじゃないすか!どうもー!」

「…………ッ」


或部田にも見せた警戒心剥き出しの睨みをきかせて雨愛は食事を続ける。こういう類の相手をするのは非常に怠い物だと彼女はわかっており、なるべく関わりたくないのだ。

或部田とはあくまで双方にメリットがあるため同行しているだけで、このような、容姿にだけ興味があるような輩と話す気は毛頭ない。


「ねぇ君!聞こえてる??耳ついてる??鼓膜ある??脳みそある??返事してよ〜〜!話そ〜〜?」

「………チッ。うるせ」


思わず舌打ちをしてしまった。興味のない奴からのウザ絡みが本当にムカつく。


「煽ってんの?死ぬか消えるかどっちかにしてくれよ」

「うおー怖!そんなイライラしてると可愛い顔が台無しだよー?ほらほらー」


ウザ絡みは続く。その上絡みながら雨愛にベタベタ触れてくる。頬もつついてくる。雨愛は不快感MAXの顔をし、周りの者共は引いている。

だが周りの者共が引いているだけで何もしないのがさらに彼女の不快感を増加させていた。


「おいお前、その辺にしといた方が…」

「えー?何にも悪いことしてないっすよ!?ただこの子はちょっと口が悪いだけの大人しい子っすよ!俺には分かります!!ねー!」


ブチッ

雨愛の中で堪忍袋の尾が切れた。


「死ねよ!!!」


立った雨愛は男子生徒の顔面を思いっきり殴り飛ばし、柱にぶつけておいた。


「………!?」

「死ぬか消えろっつってんだからどっちかにしろよそれこそ耳付いてんのか!?あぁ!?」


怒りのまま怒鳴り散らした後、食事を続ける。


「死ね。死ね。死ね。死ね。……」


呪詛のように呟きながら。





「…本当に私たちの先祖様なんですよね?」

「そうだぞ?」


瑠蘭がアクニリディアに尋ねた。

なにか彼女の想像と氷川雨愛の話は違うらしい。


「ちなみに何を想像していたんだ?」

「もっと慈愛に溢れた女性なのかな…って」

「ああ、悪いことは言わんからそんな想像は早々に捨てておいた方がいいぞ。そんな奴は当時でまず存在しないからな」

「え、そうなんですか…?」

「滅星獄戦の最中だぞ?みんなギリギリを生きているんだ。慈愛に溢れた系の奴らは所謂“まともな奴ら”だが、そいつらは真っ先に死んでいったぞ」


戦争の最中でルールを重んじることは大切だが、あまりにまともすぎて律儀にルール云々言っているといざという時に先陣切って死んでしまう。だが、ずる賢くたとえ仲間を利用するということを平気でするような所謂“悪い奴”は生き残る。


まともな奴ほど死んでいく。

どこかで聞いたような言葉だ。


「なんか…残酷ですね」

「ああ、残酷だ。希望は降ってこない。そんな地獄の世界で君の先祖様は生きていたんだ」





「ここが校舎だ」

「でけー」


校舎へと案内された雨愛。だが、その校舎は彼女の想像を遥かに超える巨大さだった。


まるで講堂のソレかのような広さの教室が並んでおり、そのうちの4分の3が戦闘訓練室となっているらしい。

この学園自体変わっており、座学は基本1年次で次の2年次で実戦訓練に当てられて卒業する2年制なのだ。

戦士の仕組み上、多く人員が欲しいとのことからこんなにもハイペースなのらしい。


そしてさらに変わっていることがある。

もし学園外に優秀なな人材を見つけた場合、取り込むことができるという点である。大体学園長が外に出回っており、それで連れて来るためやや学園長主観になっているが現状狂いがない。


あまり大きい声では言えないがスカウトされた人たちの方が優秀な傾向があるので彼らを編入させて卒業させることで或部田の実績にしようという姑息な考えを持つ人もそれなりにいるらしい。


その或部田の目に留まって今回雨愛が連れてこられたのだ。


もっと変わっているところがあるが…、また後ほどにするとしよう。


しばらく校舎内を歩くが、生徒達は皆教室の中にいる。所謂授業中というやつだ。


一応は皆真剣に取り組んでいる。ただ…。


隣の者(ホンモノの敵)はいないのか?」

「いるにはいるけどらなかなか揃えられなくてね…」

「じゃああの訓練も大して意味ないな」

「だろうね。だから時々刺激が要るんだ。実際の隣の者との戦闘実習や、君のようなスカウトで転入する子達がね」


それは…効果は見込めるのだろうか…。

ふと雨愛は引っかかる思いをしたが別にこの学園(ここ)に愛着があるわけでもないのでそのまま流しておいた。



少しだけお久しぶりです。

ド深夜投稿のどらっごです。


学園ってよくわからないので完全に想像で書いてます。

新生活がんばれ雨愛ちゃん。


では、また。

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