71話 極一般のプレイヤー、サナ陣営の力の一端に触れる。
俺はクエイク。偶然キャンペーンに当選して無料でOMOを始めたプレイヤーだ。今まで沢山のVRMMOをプレイして、何と言うか肥えた?とでもいうかそこらのゲームじゃ満足なんてできやしないだろう、と高を括ってプレイしたけど現在絶賛ドハマりしてしまって夏休みを極限まで使ってプレイしてる。
運良く相性のいいスキルの組み合わせを見つけてトップとはいかないけど最前線を立つプレイヤーとして少しだけ有名になった。ついこの前もレベルが100に到達したし、頑張って輪廻の果実も手に入れて転生も果たした。今現在で転生までできたプレイヤーは俺を含めて7人。この中に入れてるのは自分でもびっくりだ。
「【デュアルスラスト】」
「うわぁっ!?」
《撃破!!エルとの対戦に勝利しました!経験値235を獲得》
やり込んだ甲斐あってかタイマンの勝負なら殆ど勝てるようになった。でも油断はできない。このゲームはスキルの組み合わせや職業の特性で大きく戦い方が変わって来るんだ。今回も相手がいきなり大量の斬撃を飛ばしてきたりした。咄嗟に躱したけど、背中に冷たい汗が流れた。でもこの緊張感が俺を楽しませてくれている。
「いい勝負だった。あの斬撃の雨には肝が冷えたよ」
「あはは~やっぱり強いですね~決定打が出せなかったです」
握手をして互いに称え合う。対戦後の気持ちのいい挨拶が俺は好きだ。でもそう言い合える人は少ないけれど、今回の対戦者はとてもいい人だ。
「流石【双剣の勇者】だな。勝てる気がしねぇ」
「それでいて全く驕った様子もないときた。悔しいけどいい奴じゃねえか」
周りの称賛にむずかゆくなりながら闘技場から退室する。俺は【双剣の勇者】と呼ばれている象徴の二本の愛剣を横目に見てからステータスを確認する。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
名前 クエイク 男 Lv1
職業:勇者【剣士】
種族:熾天使(闘神の眷属)
固有スキル
飛行10、聖翼展開、聖神属性付与、
SP1 0
SP2 5100
生命 1000000/1000000
MP 100000/100000
(基礎値+加算値=合計値)
STR 1500+3000=4500
VIT 500+1000=1500
DEX 1000+2000=3000
INT 500+1000=1500
LUK 100+200=300
AGI 1500+3000=4500
スキル
双剣術10、腕力強化10、刀術10、二刀流3、属性付与10、上位属性付与2、武器破壊4、
第六感6、
防具 △
頭:装備不可
体:聖天騎士の戦衣【破壊不能】【神聖障壁】【自動回復】【聖盾】
腰:聖天騎士の腰当【破壊不能】【空間収納】【聖域】【錬金】
足:聖天騎士の戦靴【破壊不能】【神速】【空間跳躍】【転移】
主装備:シィンエクソサイザー【破壊不能】【断罪】
副装備:カースブレイカー【破壊不能】【解呪】
装飾品 △
顔:聖天騎士の聖紋【破壊不能】【神眼】
右耳:なし
右耳:なし
指輪(右):闘神の指輪【破壊不能】【聖鍵:光】
指輪(左):なし
腕輪(右):なし
腕輪(左):時の旅人【時間旅行】
セット効果
HPを100万に固定、MPを10万に固定、HP,MP以外のパラメーターを3倍、
以降転生不可、聖属性絶対無効、聖属性以外の耐性を失う、闇属性からのダメージが2倍、
レベル上限が1になる。この効果が発動した瞬間から装備解除不可。
称号
双剣の勇者
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
何度見ても少しおかしいと思ってしまうけど、それなりに制限がかかるからこれ以上はおかしくならないと思う。対戦ではステータスがレベルが統一されるけどそれでも3倍の永久バフには対人戦闘で相手どれるのはそれこそ一人しか出会ったことがない。
トッププレイヤー。あいつは強かった。剣士とのタイマンで尚且つ自身は後衛職。圧倒的に不利な対戦だった筈なのに結果として俺のHPが残り1で勝利するという異常な結果で終わった。ファントムの方が先に転生を果たしたとはいえ、ほぼ同時期に転生した俺が勝てなかった。俺の勝ちだったけど、あれは俺の負けを意味している。
「RD手榴弾お一人様一個までのセールでーすっ!!買いませんかー!?」
闘技場から出ると近くの広場で誰かが露店を開いていた。声からして若い女性のようだ。いつもなら特に買い物はしないところだけれど、今日はなんとなく興味が沸いたから覗いてみた。
「威力の保証アリ!最後の切り札にお一つRD手榴弾はいかがですか?今なら半額でお売りします!!数には限りがあるのでお早めにー!!」
そこでは一度第一回イベントで入賞を果たしていた少女が大きな声で商品をアピールしていた。
ゾクッ……!
「…………?」
サナを見た瞬間自身の鍛え上げた【第六感】が一瞬警鐘を鳴らしたような感覚がよぎり。あたりを見回す。でも何もない。再びサナの方を見るとそこには変わらず客を捌くサナの姿がある。
「気のせいか」
そう呟いた瞬間一瞬サナと目が合った。その瞬間短くだがハッキリと【第六感】が最大級の警鐘を発した。サナの目はクエイクを捕らえず何か別の、例えば魂としか言いようのないものを見ていた。いつの間にか命を握られているような、そんな強大な感覚を感じたクエイクは思わず武器を構えた。
(コイツは危険だ。ファントムとは比べ物にならないくらいに―――っ!)
ステータスでは圧倒的にクエイクが上。だがそれを覆す何かがある。戦って本当に勝てるかは怪しい。そう判断する。
警鐘が収まらない中サナを見ると彼女は既にクエイクを忘れたように笑顔で接客をしていた。まるで『お前は手を出すまでもない』と見逃されたように。
「戦闘になるとは思わねえが、ここは一旦引き―――え?」
木陰に隠れその場から離れようとした矢先、軽い衝撃と共に自分の胸から刀が生えていることに気付いた。次の瞬間視界には動き逆さまになった首のない自分の身体が映っていた。
(【第六感】には何も反応がなかった。何故―――?)
「敵性反応の排除完了」
フェードアウトする視界の端に黒い人影が見えた気がした。




