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66話 決勝戦


 『さあ、今大会も大詰めの決勝戦を迎えました!!実況を務めさせてもらっている私フレイもそろそろ喉の限界を迎えております、が!!この試合で得たインスピレーションを無駄にしたくはないっ!!そしてこの試合を見た奴は私の書籍を買えっ!!

 

 ……さあ気を取り直して初めに入場するは根性だけで勝ち抜いてきたミリア選手!独自にアンケートを実施した結果、参加理由は『スイーツ巡りは乙女の嗜みなのよぉ?』と回答してくれました!!話を戻して彼女(彼)の戦績はなんと総被ダメ26,395!与ダメはなんとゼロ!全て固定ダメ―ジのみで撃墜しています!見た目は巨漢、中身は乙女!完全無欠の根性系女子(?)が今入場しました!!』


 「さぁ~てどう可愛がろうかしら?」


 フレイの紹介と共にリングに上ったミリアが軽く伸びをする。それだけで彼女(?)の鍛え上げられた筋肉がはち切れんばかりに膨張する。一部男性陣が大きな盛り上がりを見せた。中には二リアにボロ負けした者たちが大きな怨嗟の声をあげていること以外は大いに盛り上がっていく。


 「クッソ!スターさんとこの食べ放題あと少しだったのにぃ……!!」


 「準決勝までは食い込んだのに……!!」


 『次に入場するのは今大会で純粋な物理攻撃でのみ勝ち上がってきたシズ!!今更だが忍者だぞコイツ!!ぶっちゃけほぼ侍の彼女は決勝戦はどんな戦いを見せるのかっ!?炎剣帝シズ!!登場しましたっ!!』


 (こいつ……正攻法では勝てないね)


 フレイの紹介と同時に入場したシズはミリアを見てすぐに察した。彼女(?)には得体のしれない力があることを。身近な者で例えればサナやガリル、そしてつい先ほど戦ったレンが筆頭である。そんな彼らと同じ雰囲気をミリアは纏っていたのだ。


 (大丈夫。まだ奥の手(・・・)はあるからどう組み立てていくかね)


 「あらぁ可愛い子ね。おねぇさんとしては傷つけたくは無いんだけどぉ……」


 「その余裕がいつまで続くか楽しみね」


 『試合開始いいぃぃぃっ!!』


 コングが鳴り両社が動き出す。ミリアの使っている武器は拳で副装備に盾を装備している。そして装飾品を多く身に着けていることがシズの印象に残った。


 (職業は守護者。でも軽装なのはなぜ?相手は魔法を使う気配もない。まるで攻撃を待ってるみたい。なら―――)


 だがその思考を搔き消すようにミリアがシズを殴る。


 「【生命譲撃(ライフ・コンバート)】っ!!」


 「―――っ!?」


 シズに大きなダメージが入った。そのことにシズは驚愕を隠せない。攻撃が当たった時点でダメージはゼロだった。それなのにHPがきっちりが999削られていたのだ。固定ダメージだと即座に判断できたが固定ダメージにここまでのダメージは普通は出せない。そこまで考えてミリアの警戒のためにシリアを見ると彼女のHPが1になっていた。


 (生命(HP)を固定ダメージに変換するスキル?回復アイテム禁止の闘技大会で?)


 困惑しながらもシズは体勢を整えて反撃に手裏剣を投げるが、ミリアは避けずに攻撃を受けた。だが、ミリアは死亡せずにリングの上に立っている。そしてそのままシズを再び殴る。


 「【復讐の一撃(ヘヴィ・カウンター)】っ!!」


 今度は6ダメージ。それでようやくシズも彼女のスキルを朧げに理解した。


 (ミリアのスキルは完全に受け型。それも多分一回限りじゃない。攻略法は弱い攻撃でちまちま残機を減らしながら逃げ続けたらいい。さっきの攻撃は受けたダメージを固定ダメージに変えるスキルって暫定して過剰分も適応される。つまり死ななかったらその分私の退路が狭まる。なんで闘技大会でノーミス狙わないといけないのよ)


 ……だからと言って絶対に勝てるという訳ではないが。要は一定間隔で攻撃を繰り返しながら相手の攻撃を一切受けてはいけない。更に相手が後何体残機がいるかも分からないといった鬼畜ゲーをしなければいけないという事だ。


 「あらぁタネが割れちゃったみたいね。じゃあ……全力で行かせてもらうわ!」


 「っ!危なっ!」


 だが難易度はさらに上昇した。自身の能力が割れたと感づいた瞬間にミリアが短期決戦に切り替えたのだ。そして一気に加速してシズに拳を放つが体術【霞】の補助を受けたシズは間一髪で攻撃を躱した。


 「あらぁ避けられちゃったわね。ステータスってわけじゃなくて直感かしら?」


 「どんだけ残機あんのよ……っ!!」


 回避直後に二発程カウンターを食らわせたがミリアには余裕の顔が張り付いている。その様子を見てシズは腹を括った。


 シズの視界から色が抜けていき、周囲の音も気付けば聞こえなくなっていた。完全な集中。シズが意図して行える特技であり打たれたテニスボールに書かれた文字まで見通したこともあるシズの奥の手だ。そしてその状態でシズは如月を構える。


 「―――【超神速】」


 そしてそのままミリアに向かって直進した。刹那シズは光と言うべき速度でミリアに肉薄した。ミリアはまだ気付かない。


 一閃、二閃、三閃、四閃、五閃、六閃、七閃、八閃、九閃、十閃―――!!


 「なっ―――!?」


 ここでミリアが驚愕と焦りを見せる。だが、シズは止まらない。


 十一閃、十二閃、十三閃、十四閃、十五閃、十六閃、十七閃、十八閃、十九閃、二十閃、二十一閃、二十二閃、二十三閃、二十四閃、二十五閃―――!!


 ミリアは反撃しようとするが肝心のシズが捕捉できないため攻撃ができないまま残機だけが減っていく。そして超神速の効果が切れたシズがミリアの後ろに現れた。しかしシズの表情は暗い。


 「…………仕留めきれなかったなんてね」


 「残念ねぇ。私も焦ったけど後一撃あれば倒せてたのにねぇ」


 ま、私の残機ももうないけど―――とミリアは付け足しシズにとどめを刺すために拳を挙げる。シズは【超神速】使用時の超高速の連続判断で脳の処理が限界間際になり動けない。要は自身の速度に気合で食らいついていたのだ。その状況下で相手の隙を探して斬るという芸当をこなしたのだ。普通なら当然のように気絶は免れなかっただろう。そしてミリアの拳がシズに迫る。


 「お疲れ様。【復讐の一撃(ヘヴィ・カウンター)】」


 「諦めたなんて私は一言も言ってないわよ?」


 「えっ―――っ!?」


 シズに986372のダメージ!!


 だが、シズは1残して耐えている。驚愕で動揺しているミリアにシズは技を放った。


 「炎剣技―――【火廻】」


 「…………!!」


 悔しさと驚愕で顔を歪めたミリアの姿が掻き消えてリング外にミリアが蘇生した。シズは最後まで残心してから剣を収めた。


 『しょ、勝者はシズだー!!息をつく間もない高度な接戦を制したのは【炎剣帝】シズだーーっ!!』


 今日最大の歓声が巻き起こり観客席から紙吹雪が飛び交う。


 (不倒健在がなかったら負けてたな。でも楽しか―――)


 その中でしみじみと勝利の感触を確かめていると―――


 ―――チュドォォォォオオオオンッ!!!!!!!!!


 明らかに厄介ごとの気配しかしない巨大な爆発音が炸裂した。


 「…………もうおなか一杯」


 シズはそう言わずにはいられなかった。

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[一言] 残機があるのは自分だけだと思っていたのかい?
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