55話 冥人
弟子、いや主君がOMOをプレイし始めてつられるように始めた俺だが最近魔術創造に凝り始めている。
元より弓士から魔術師に転職しようとしていたことはそうなのだが昔夢想していた理想の能力を再現できるのではないかと時間を忘れて術式を作っている。
そう、つまりもうレベルのリミッターを解除したのだ。あれから10レベル分ほど検証したが法則性を確立できたため現在は既にレベル50を迎えた。
当初魔術創造のスキルはレベル20からではないと使用できないとネットでよく呟かれていたが実際は『魔術師の職に就いた状態でレベルを20上げる』といったものだった。
そして現在作っている術式は闇属性に分類される魔術術式を改良、あるいは新たに意味のある式を作りそれらを組み合わせとある性能を持つように作っている。
あれからかなりの時間を読書に費やし式の意味を大まかに理解出来た故の成果だ。
今回作っている術式の効果は次の通り。
・自身以外の影に身体全身が浸かっている場合術者の認識を不可能とする。※パッシブ
・闇の衣を纏い速度、防御力、攻撃力を強化する。※アクティブ
・闇の衣を武具に纏わせ強化する。※アクティブ
といった所だ。現在はパッシブ効果となる式は完成しているがその他2つの実現はまだだ。
だが、完成も時間の問題だ。残りの2つの効果は既存の魔術にも存在している。問題はその式の解明が終わっていないのだ。
一つは【シャドウオーラ】。この魔術の式はわざわざ独自の文字を使用しており、解読に手を焼いている。
もう一つは【ダークネスウェポン】。これはただ単純に式が長い。普通の闇系列の魔術の優に5倍。まるで長文問題を解いているようだ。
つまりこの2つの魔術式さえ分かればその改良と式を増やすことだけで完成する。
精々あと3時間といったところだろうか。もう直に完成するのだ。気を張っていこう。
※
「完成だ。独自魔術【冥人】」
遂に完成した。このスキルは一度発動すればMPが枯渇するまで機能し、1つ目の効果の潜伏効果はMPの自動回復速度と量の方が勝っているため問題ない。
残り2つの機能は発動のための呪文を軽く唱えるとMPを消費し自動で発動できるため利便性も高い。
納得のいく魔術が作れた。
《魔術神と技能神が独自魔術【冥人】に興味を示しました……………………二柱から認められました。ギフトが届きました》
急にアナウンスが響き俺に告げる。どうやら作った魔術が認められた様だ。
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魔術神と技能神のギフト
・魔術スキル化
・機能追加強化
・全能力最適化
※開封と同時に効果が発動します。
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ギフトの内容を見ればどうやら悪い効果は一切ないようだ。勿論有り難く使用させて頂くが。
《独自魔術【冥人】がユニークスキル【冥人】になりました。機能が追加されました》
《全能力最適化を開始します。シュミレーション開始…………………………完了。再構築開始…………………………完了。ステータスを表示します》
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名前 ガリル 男 Lv55/100
職業:魔術師
ステータスポイント(SP1) 2750→0
スキルポイント(SP2) 550→0
生命 1000/1000→5000/5000
MP 1000/1000→5000/5000
STR 0→500
VIT 0→200
DEX 0→250
INT 0→750
LUK 0→30
AGI 0→1000
ユニークスキル
冥人
スキル
・遅延10+加速10→速度支配1
・魔力感知8+魔力操作9→魔力支配4
・属性付与7+状態異常付与6→全付与5
・魔術独立化+魔術構築強化→無詠唱
・誘導10+拡散弾10+速射10+連射10+剛射10+遠射10→変則射撃3
・属性魔術8+回復魔術10+補助魔術9+呪怨魔術7+結界魔術3→神聖魔術1、禁忌魔術1、全属性魔術1
・跳躍10×遅延10→縮地1
・透視10+遠視10+天眼10+簡易地図+記憶10→自動地図作成
・集中10+感覚強化10+直感10+危機察知10+気配察知10→超感覚1
・追撃+固定ダメージ付与→固定追撃
・貫通攻撃+属性剣10→斬鬼1+斬鉄10→滅斬竜1
速度支配:自他の速度を操作するスキル。他に対しては抵抗力により成功率が変動する。
魔力支配:自他の魔力を操作するスキル。他に対しては抵抗力により成功率が変動する。
全付与:アイテムや生物への属性、状態異常属性の付与が可能になる。
無詠唱:魔術使用の際詠唱を行わなくなるスキル。
変則射撃:矢を射る際自在に矢の軌道を操ることができる。
神聖魔術:万物を浄化する聖なる魔術。
禁忌魔術:万物を汚染する悪しき魔術。
全属性魔術:全ての属性の魔術を使用できる。
縮地:凄まじい速度で短距離移動ができる。
自動地図作成:自動で地図を作成できる。
超感覚:感覚が冴え渡り反応速度等を向上させる。
固定追撃:攻撃した対象に防御力を無視した固定1000ダメージを与える。
滅斬竜:竜を剣で退ける者のスキル。斬撃系統の切れ味、攻撃力を底上げする。
称号
読書家、神話愛者、魔素を感じ取る者、
創作意欲の塊
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かなりの強化を施されスキルもとにかく数が多かったのだがそれもコンパクトに纏められ使いやすくなっているだろう。多分。
そして、確認していないのは冥人の強化内容だ。自分で創り出したものに手を加えられたことは何とも言えないが最高権力者がやったのだから文句は言えない。
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ユニークスキル【冥人】
機能
極闇の衣:自身が己の影以外の影に潜んでいる場合攻撃行動を行うまで探知されない。※パッシブスキル
暴食王の闇:武具を取り込み冥人の一部に還元する。取り込める数に限界はないが初めに取り込んだ武具を具現化し取り込む前同様に扱える。発動すると全身を暗黒のオーラが包む。※アクティブスキル
黒闇大渦:あらゆるものを喰らい尽くす厄災の意志。喰らったものは全て冥人に還元される。※パッシブ、アクティブ共用スキル
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どうやらかなりの自信作に仕立て上げられている様だ。早速検証をしなければいけない。
先ずは極闇の衣を試すとする。パッシブスキルなのでとにかく木の陰にでも隠れてみる。
だが、これでは効果を発揮しているか分からないので、フィールドに赴いてモンスターのギリギリまで近づいてみる。
「ギャガガッ!!」
今回は運良く一匹のゴブリンを発見したのでそれにできる限り近づく。幸いにも森の中なので気兼ねなく近寄れる。
十メートル。ゴブリンは呑気に欠伸をしている。
五メートル。武器の手入れを始めた。
二メートル。こちらには見向きもしない。
一メートル。射程内だ。だが気づく様子はない。ナイフを取り出す。
「悪く思うな」
ナイフがゴブリンの首を撥ねる。あっけなく死体に変わり少し血の匂いが辺りに漂う。
どうやら武器を持つことは攻撃行動には入らないようで、攻撃に入った瞬間に極闇の衣が解けるようだ。
《黒闇大渦にゴブリンを喰わせますか?》
どうやら黒闇大渦は死体処理や証拠隠滅スキルのようだ。偶然にもう一つのスキルの検証も済みそうだ。
「喰え黒闇大渦」
スキル発動を念じると身体からドス黒いオーラが溢れそのオーラがゴブリンの死体を包み込み消し去った。
《ゴブリンを喰らいました。暴食値が1貯まりました》
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暴食値 1/1000
加算値 0
記録スキル
棍棒術Lv1
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なるほど独自のステータスが追加されるということか。まだわからない所が多いがいずれ分かるだろう。
最後は暴食王の闇だがこれに関しては現在は取り込ませていい武器や防具が無い。最初に取り込ませる物が重要とのことらしいのでそれに相応しい物を用意したい。
恐らくだが武器種ごとや防具は部位ごとに取り込めると予想するので早急に集める必要がありそうだ。
……刀はサナが用意してくれるもので良いだろう。
なら、これからすべき事は――――
「モンスターを狩り続けるか」
黒闇大渦を育てることだろうな。
俺は『死の密林』に向けて駆け出した。