52話 商売開始!!
空中大都市の実装を宣言した運営はその後22時からシステムメンテナンスを開始し日を超えてついに6時、実装が完了した。
新たなシステムにプレイヤー達はどのようなイベントが開催されるか、どんなコンセプトが目立つか様々な推測や考察を交わしていた。
そして、実装完了と同時にプレイヤー達にメッセージが届いていた。もちろんサナは早寝早起きを義務付けられている―――守らないこともある―――ので早速目を通す。
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空中大都市スカイルーンが実装されました。この地は数多の浮遊島から成り立っており、大きく7つのエリアに分けられます。
1:バトルコロシアム、プレイヤーランキングの競争用闘技場エリア。
2:NPC商店街、あらゆる国、街、村のアイテムが販売されているエリア。未到達地域のアイテムは相場より高くなっている。
3:空中大都市首都、プレイヤーホームやギルドハウス等の建設を行える。
4:露店通り、プレイヤー間のアイテムの売買を行える。
5:カジノ、所持金を賭け勝負を行いレアアイテムや一攫千金を狙う娯楽施設。
6:魔力鉱山、魔力に満ちた枯渇しない金属の採掘を行える。
7:ダンジョン、広大に広がる空中大都市名物。レアアイテムの出現率が高い。
この他隠しイベント、レアスキル獲得の場も用意させていただいております。是非とも空中大都市スカイルーンをお楽しみください。
運営より
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「なるほど〜なら私は4番の浮遊島に行こう」
サナは商売区域を確認すると早速魔界の広場に設置された転移陣に足を踏み入れた。すると陣が輝き一瞬でサナを見慣れない都市に転移させた。
「うわぁ〜〜!」
サナから見た第一印象は冒険、いや未知との遭遇だろうか。
某天空都市を目指す有名アニメの浮遊島から木を取り除き、数を増やしつつ高度な文明の発展を覗かせる幻想的な風景に心奪われそうになるが我に返り露店の準備を始める。
どうやらショバ代は必要なく、商品を並べた瞬間露店扱いになる様だ。既に沢山のプレイヤーが露店を開いている。勿論見たことのないアイテムや武具はサナの興味を強く引く。
「負けてられないや……!」
悔しげにそう呟くや否や程々の人通りの場所に露店を開く。初めは誰でも扱える短剣やポーションを並べてこの日のために昨日急いで用意した看板を立てて客足を待つ。
看板には『サナの露店〜武具から料理まで販売中〜』の文字があり、とにかく広い範囲の物を売っていることをアピールしようとしているのだろう。
「ナイフは売ってないかな?」
そんな看板を見てか青年のプレイヤーが店を訪れた。背が高く無駄な筋肉のついていないような好青年でそこらの女の子は彼に視線を飛ばしている。
「どんなナイフを探していますか?」
が、サナは気にせず、というか気付かず初客の接客をする。
「う〜ん……そうだね……ステータス向上効果があればいいかな」
青年は少し悩み希望を告げる。それを聞き遂げたサナは倉庫の内容を確認して候補となるナイフを取り出した。
「なら、『風切りのナイフ』はどうですか?AGIとSTRを30上昇させてくれます」
そのナイフはBランク2級のモンスターであるジェットビートルを素材として作られたナイフで副次効果に風系統の効果を持つ物を断ち切ることができる優れもので、武器のランクはB1級である。
「そ、それは幾らするんだい……?」
その価値を見抜いた青年は少し顔を青くしてサナに問う。本来ならこのクラスの武器はショップ等で購入しようなら軽く20万Gが飛ぶだろう。その上この武器はショップのアイテムより遥かに質が良いため市場に流せば最低50Gは下らないだろう。
彼は40万Gを用意しているが明らかに足りないと感じているのである。見るだけ見てから何も購入せずに帰る。これは冷やかされるのと同義で中には出禁を食らうこともあるのだ。
「『風切りのナイフ』一本で10万Gです!」
しかし、彼は幸運だった。サナの作るアイテムの材料は人間NPCより遥かに強い鬼人NPCが仕入れた素材を買い取って居るのだが、鬼人にとっては弱すぎて価値がないため実質殆ど無料で素材を得ていたサナは破格すぎるほどの優良価格で本人は知らずの内に売っていこうとしているのだ。
「えっ!?安っ!!是非買わせてくれ!」
「毎度あり〜〜♪あ、もし【破損】したら修理するので捨てないでくださいね〜〜」
ここで迷う青年ではなく即決で風切りのナイフを購入していった。そしてこの武器を仲間につい自慢してしまいその話が広がり大盛況をサナにもたらすのだがそれはまだ少し後のことである。
ちなみに破損とは武器の耐久値が4分の1以下にまで減った状態を指し、鍛冶スキル等で修復をしなければいけなくなってくる状態の事である。
その後も少しずつ客が訪れアイテムを購入していく。その全員が驚いた顔をすることにサナは首を傾げていたが。
「毒消しのポーションをくれ」
「は〜い、『ポイズンヒーラー』一本500Gです!」
5人目の客を捌き切り軽く喜ぶサナ。これまで全ての客に商品が売れているのだ。
中でも人気を誇るのはポーション類でショップより安く効果も高いと来て大半の客が必ず1つは買って行くのだった。
《サナの商品に評価が付きました。経験値10000を獲得しました》
《サナの商品が宣伝されました。経験値100000を獲得しました》
「うわっ!なにこれ?」
急なシステムアナウンスが聞こえ戸惑うサナ。だが、聞いた限り悪い効果ではなさそうだと判断したサナは在庫の整理を始めた。
その中で制作段階で試行し効果に癖のあるアイテムを見つけ好奇心で並べてみると偶然通りかかったプレイヤーが興味深そうに性能を聞いてきた。
サナはそのプレイヤーに決して笑わぬよう釘を差してから性能を説明した。
「これは『共喰いのナイフ』と言って攻撃力が他と比べて凄く高いんですけど分間100のダメージを受けるんです」
これは肉食みのナイフを作る段階で凶暴な種族であるキラーウルフの素材を使用して生まれた武器だが、装備すると戦闘時関係なく分間100のダメージを受け続ける代わりに与えたダメージと減り続けた生命の分攻撃力が上昇する使い手を制限する武器の一つだ。
「なるほど、でも、生命は長いから試しで貰おうかしら。これは幾ら?」
「えっと……7万Gです。」
だが、物好きとはいるものであっさりと共喰いのナイフを購入して去っていった。
「こんなの使えると思えないけど戦闘職のプレイヤーは考えることが違うのかな……ってうわっ!」
《販売商品:風切りのナイフが一定量の称賛を受けました。名声が100増加しました。》
《販売商品:ライフポーションの評価及び宣伝、称賛が規定値を超えました。名声+1000、スキル【薬物錬成】が【薬品錬成創造】に進化。称号【薬剤師】を獲得しました》
《名声が1000を超えました。商人ランクがGからFになりました》
相変わらずサナには意味のわからない単語がよく出てきているがスキルの進化と称号は理解できた。恐らくポーションの性能を認められて薬剤師として認められたからなのだろう。
「まあ、スキルも良くなったし経験値も貯まるし商人って実は最強職?」
なんちゃって。と一人で突っ込んでいると客足が増えてきた。考えるまでもなく評価と宣伝の効果でやって来たのだろう軽く50人は超えるだろう。
「うわぁ……マジですかぁ……」
商売繁盛するウハウハな状況だが、この人数を立った一人で捌かなければいけない事にサナは喜びと憂いを帯びたセリフを残し接客を始めるのだった。
結城 蓮です。
少ししてからみんなと合流させてギルドハウス作らせようと思います。
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また次回合いましょう。