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49話 集う者達


 「あれは……狼?」


 突如現れレッサードラゴンの首筋に牙を立てている四足歩行の獣を見てシズは何か得体の知れない気配を感じ取り咄嗟に敵か否か判断を下せずにいた。


 迷った後、赫い狼を警戒しつつレッサードラゴンを討伐する方針に切り替え刀を振るう。


 「グオォオォォォオオォンッ!」


 そしてダメージを受け、残った体力が1割を切ったレッサードラゴンが咆哮を上げ行動パターンが変化した。残る力すべてを吐き出すように、絞り切るように攻撃が荒々しく凶悪に変化した。


 その様はまるで火事場の馬鹿力、また起死回生を彷彿とさせる程の動きだ。その攻撃を赫い狼が被弾し吹き飛び、地面に叩きつけられ消滅した。


 そこそこの強さであろう狼だったが一瞬にして葬られたためシズとて被弾すればひとたまりもないだろう。戦力差で底力を引き上げる【不退転】でも質を見ずに量を見るスキルのため意味を成さない。


 逃げようにも速度は圧倒的に相手に天秤が傾く。万事休すだ。


 「ここまでか―――ならせめて」


 せめて潔く負けようと刀を構え直したシズが一か八かその首筋目掛けて斬撃を放とうとするが―――


 「ちょっとゴメンね、バクガ【捕縛】、イオリ【治癒の呪い】、ウカイ【万刺羽刃】」


 割り込んできた中性的な見た目の死装束をまとった人物が先程の赫い狼を引き連れて現れた。


 そして巨大蜘蛛、大蛇、大烏を呼び出しそれぞれ、レッサードラゴンの行動阻害、シズ、ユズの回復、レッサードラゴンへの止めを果たした。


 残り1割を切っていたとはいえ残りHP総量100近くあったそれを削り切ったことにシズは感心していた。


 そして、モンスターの主らしき中性的なプレイヤーは二人の方へゆっくりと歩いて向かってくる。二人と目が合うと頬を掻きながら挨拶をしてくる。


 「いやー、ガカクが負けたって聞いたから来てみたけど、まさか国外プレイヤーがいたなんてねぇ、というか初心者の平原のボス倒させる気ないでしょコレ」


 最後はボソッと独り言のように呟いたプレイヤーだが、その言葉を聞き取れたシズもそのとおりだと考える。主に初心者からしての話だが。


 「あ、あの、助太刀してくれてありがとう」


 「ん?ああ、うん、むしろ横取りするような真似してゴメンね?」


 そして、協力への感謝を告げるとプレイヤーはそんなことより自身が獲物を横取りしていないかだけが気掛かりだったようだ。


 「いいえ、あと少し実力があれば倒せていたんですが、今じゃ勝てなかったので感謝してます」


 「そう?良かった」


 ホッと胸を撫で下ろすプレイヤー。その仕草は男とも女ともわからない曖昧なもので、本気でシズはどっちなのか考え始めるが、


 「あ、ボクは男だからね?そこのところよろしく」


 どうやら彼にとってはこの現象はよくあるのか軽く告げる。


 まじまじと見ていたこともあるのだろう、目が少し悪戯な色をしている。


 「あ、分かった。教えてくれてありがとう。ってそうだ貴方はサナってプレイヤーの居場所を知らない?この近くはラスタドールだがらそこ出身だよね?」


 取り敢えず教えてくれたことに礼を言い、本人からも聞いていたラスタドール周辺にいると言う手掛かりを聞いてみる。


 「へぇ?お姉さん達サナの知り合い、いやパーティ?でも今は多分会えないよ」


 「「え?知ってるの(ですか)?」」


 すると以外そうな顔で呆気なく情報をくれた彼は「ひとまず自己紹介をしようよ」と切り出し二人は未だ名前すら名乗っていなかったことに気が付いた。


 「ボクはレン。呪術師でサナとパーティを組ませてもらってるよ」


 「なるほど、パーティメンバーが増えたんだね。私はシズ。剣士で火属性が得意だ」


 「私はユズと申します。魔術師で精霊魔術も使えます」


 自己紹介を済ませ、立ち話もなんだろうということでラスタドール中央に繰り広がる街の一角『喫茶(カフェ)スバル』へとやってきた。


 中は以外にも空いていて軽く居座るのに丁度いい雰囲気の喫茶店だ。店内に漂うコーヒーの香りが程よく気を抜かせてくれるようだ。


 この店はつい先日オープンしたばかりで店主は生産職である【料理人】プレイヤーの『スター』という女性で、中でもスイーツ系の料理が得意なのだそう。


 外見は小柄で中学生くらいだろうか、髪は明るい茶色に左横髪に黒のメッシュが入っている。そして、店内の男性陣からは驚嘆、熱烈な、女性からは嫉妬の視線が集まる身長に見合わないほどの破壊力の双丘が、ユズとシズの目を掻っ攫っていく。


 「「でかい(です)」」


 思わずといった様子でスターを見ていた二人がこぼした台詞に苦笑しているレンは二人を席に案内しスターにレンコーヒーを、二人はミルクティーとクッキーを注文し向かい合って譲り合いの後レンが話し出す。


 「さっき話した会えないっていうのは物理的に何だけど、今サナは魔界にいてそこでかれこれ5時間近く引き籠もってアイテムを作ってるんだ。魔界は条件を満たさないと出身者以外入れないからそれがさっきの理由かな」


 「へぇー、つまりお姉ちゃんに会うのには、お姉ちゃんから会いに来ないとできないってことですね」


 そう、現在魔界出身の者しか自在に出入りできないため、サナの気分次第でしか合うことは出来ない。


 「そうなるね、でも一応パーティチャットがあるからそれでも呼び出せると思うけどまだ試していないから今は会えないって言ったんだ」


 パーティチャット、それはその名の通りパーティメンバーとのみチャットができる機能であり基本的にどこにいても―――戦闘中は見る余裕は無いだろうが―――行える。


 「そう、なら別に急ぎでもないし、明日試そうかな」


 もういい時間だしと言外に意味を含ませてシズが言う。それもそうだねとユズが賛成したところで三人に商品が届く。


 「女子会楽しそうだねぇ、マカロンオマケしておくね」


 スターが微笑ましそうに三人を眺め奥からマカロンを2つずつ三人に渡す。それに困ったのはレンだ。


 「ちょっ、ボクは男―――」


 「楽しんでいってねー」


 訂正しようとしたレンだがその声はスターの声に掻き消され届くことは無かったが。


 それきり悩んだものの折角なのでマカロンは美味しくいただくレン。笑いを堪えているシズとユズはあえて無視してマカロンを口にする。甘すぎない程度の味付けで柔らかいマカロンは苦いコーヒーにも、甘いミルクティーにもよく合いそうだ。


 一瞬「このまま女に間違えられてもいいかな」と考えてすぐにこの考えを追い出す。レンにも男としての挟持はあるのだ。


 そうして互いに飲み終わるとまた明日この店で集合することを取り決めて三人はログアウトしたのだった。


           ※


 「こんなところかな」


 今しがた完成したアイテムを吟味して満足気に頷くサナ。彼女の周囲にはおびただしい数のアイテムで埋め尽くされていた。平均してその質はCランクで、中にはAランクに届くアイテムまである。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 魔力増幅の指輪

 (ランクB5級)

 MP+200、STR−10

 親和度:全属性対応

 (素材:魔界樹の枝、ウッドスライムゼリーのニス)

 付与魔術:スピードアップ(消費MP10)



 肉喰(にくは)みのナイフ

 (ランクB3級)

 攻撃力150、耐久値1000/1000

 親和度:風☆その他×

 (素材:血狼の刃牙、血狼の魔石、闇梟の翼筋)

 スキル:吸血、血刃



 物納スライム

 (ランクA4級)

 種類:ゴーレム

 親和度:上位属性☆

 (素体:スライム、素材:泡沫の実、オオフクロカズラの巨大袋)

 スキル:収納Lv3


 級:大まかなランクを更に区切ったもの5〜1と数が小さくなるにつれ高くなる。更に希少級、超級、災厄級、神話級が存在する。(ランクSSSのみ)



 ポイズンヒーラー

 (ランクC1級)

 種類:ポーション

 効果:毒(Aα)の治療

 (素材:紫天狗茸エキス、ハンテンダケエキス、ヒールポーション)


 毒A:体内組織を破壊する猛毒。

 毒α:即効性を示す。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 近くにある物でもかなりの性能があり、癖のある物も多い。装備者を選ぶ物もかなりの数に及ぶだろう。


 その出来は短時間にしては上出来すぎる結果だった。そして時間を確認して顔を少し青くしたサナはそそくさとログアウトしていったのだった。

結城 蓮です。


次話から暫く現実編です。

取り敢えずサナの身の回りと学校生活を基本にします。

もっと語彙力がほしい……。


面白いと思ったらブックマーク登録や評価をよろしくおねがいします。

また次回合いましょう。

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