42話 その暗殺者魔術の世界に降り立つ3
想定外の能力が手に入ったのは偶然だが助かった。これで、次の職業への転職が心置きなくできる。
当然進路は決まっている、魔術師だ。すべての魔術を習得可能なのは確認済みであり、何より此処は魔術がメインの世界。
習得しておくことは必須だろう。それに試すこともまだ多岐にある。
攻略サイトを見る限り、基本職は街で転職が出来るとのこと。希少職は各地に点在するフィールドで転職ができる様だ。
そういったわけで俺はラスタドールの街のほぼ中心に位置する神殿を訪れた。此処は簡単に言えば教会であり、システム上では神界へのアクセスポイントといった役割を持っている。
こんな豆知識はなぜ持っているかと言えば気付いた人も居るだろうが図書館で神話に関する本を読んだからだ。
そのようなことは置いておいて、さっさと転職してしまおう。受付に向かいカウンターに座る受付嬢に声をかける。
「転職したいのだが」
「かしこまりました。ですがその前に能力値を測定します。冒険者登録をされていないようですので登録しても宜しいでしょうか?」
「任せる」
「かしこまりました。しばらくお待ちください」
すんなりと会話が進み能力測定の準備が始まる。転職は一定の条件を満たさなければ行えない。この条件は様々だが、基本的には、その職としてある程度実績(主に討伐数や、その質)が無ければやんわりと追い出される。
俺の弓士は大体ゴブリンを15〜30匹程度で転職出来るとされている。これは己のスタイルと噛み合わなかった際の救済処置で少ない数に指定されているのだそうだ。
む、準備が整ったようだ。これは……サーモグラフィー?
まるで小型の銃の形をした測定器を俺に向けながら受付嬢が測定開始を宣言する。
「お待たせしました。これより能力を測定します30秒ほどで終了しますので、楽に構えていてくれて構いません…………っ!!?」
少し気を引き締めて測定完了を待っていると。突然受付嬢が驚いたような反応をした。測定は終わったみたいだな。
「どうかしたか?」
少し気になり受付嬢に問いかけると受付嬢は「あ、すいません」と軽く謝罪し測定結果を告げる。
「基準は満たしています。ただ、レベルの割にと言うかレベル1でここまでスキルを得られる方はいないので驚いていたんです」
ああ、俺は【遅延】スキルで自身の成長を止めているので少しあり得ない能力構成になっていたのか。
一先ず基礎値らしき値を導き出すことはできたので、一度レベルを1だけ上げてまた基礎値を測定してみよう。それからはステータスを育てるとしよう。
「気にしないでくれ。そして、【魔術師】に転職したいのだが」
話が脱線しそうなので少し強引に話題を変える。すると受付嬢ははっとした表情を作り手続きをしてくれた。
「ガリル様の転職が完了しました【弓士】の職業では無くなりましたが能力はそのまま使用できますのでこれからは【魔術師】として頑張ってください」
「ご丁寧にどうも、ではまた」
俺は礼を言って神殿を立ち去った。
※
さて、俺が転職して少しステータスに変化が生じた。
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名前 ガリル 男 Lv1(5)/100
()の中は遅延の影響が無くなった際に到達するレベル。
職業:弓士→魔術師
ステータスポイント(SP1) 50
スキルポイント(SP2) 0
生命 100/100
MP 100/100
STR 0
VIT 0
DEX 0
INT 0
LUK 0
AGI 0
スキル
跳躍Lv1、加速Lv1、遠視Lv3、
集中Lv3、遅延Lv4、加速Lv2、
誘導Lv1、拡散弾Lv1、速射Lv1、
連射Lv1、剛射Lv1、遠射Lv1、
属性付与Lv1、状態異常付与Lv1、
感覚強化Lv1
追撃
称号
〈NEW〉
読書家、神話愛者、魔素を感じ取る者
読書家:飽くなき知的欲求を持つ勤勉な者に送られる称号。効果:読書による必要熟練度上限の低下量上昇。
神話愛者:限りなく神話を愛する者に送られる称号。効果:神話に関する事象に対しての遭遇率が上昇。
魔素を感じ取る者:魔素を感じその性質を朧気ながらに理解した者に送られる称号。効果:全ての魔術の習得を解禁。
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職業が【魔術師】になったまではいいとして、称号を3つも獲得していた。どうやら全て図書館で得た称号らしく、いつの間にか表示されるようになっていた。
ステータスに直接ではないが、大きな影響を与えてくれる称号だ。
そしてようやく魔術が使えるようになるので魔術の攻撃力や効果のもとであると思われるINTの基礎値も念の為測定しなければな。
早速魔術を覚えに行こう。
―――図書館―――
さて、全ての魔術の習得が可能なのだから、今は広く浅く魔術を習得しておく。レベルが低い内はあらゆる事象に対して対策を取って置かなければ簡単に死ねる。
そういうわけで読書に励むとしよう。
《『魔術入門書【初級編】』『魔術入門書【中級編】』『魔術入門書【上級編】』を読破しました。魔素概念の理解がより深くなりました。熟練度が一定に達し、スキル【魔力感知】を修得しました。》
3時間後。
《『魔素体循環の心得』『魔素放出の心得』『魔素回復の心得』『魔素増加の心得』を読破しました。魔力回路の存在を認識可能になりました。熟練度が一定に達し、スキル【魔力操作】を修得しました。》
《【魔力感知】【魔力操作】を修得しました。魔素の性質を完全に理解しました。条件達成。ボーナススキル【魔術独立化】を獲得しました。》
2時間後。
《『魔術式の法則【魔法陣】』『魔術式の法則【呪文】』『魔術式の法則【魔法言語】』を読破しました。魔術構築にあたる構築手段を完全に理解しました。スキル【魔術構築強化】を獲得しました。》
周囲が暗くなり始めている。部屋には光が灯り始めた。
《『火の魔導書』『水の魔導書』『風の魔導書』『土の魔導書』『光の魔導書』『闇の魔導書』『複合魔術のノウハウ』を読破しました。スキル【火魔術】、【水魔術】、【風魔術】、【土魔術】、【光魔術】、【闇魔術】を修得しました。複合魔術の存在を知り元素系魔術の法則を少し理解しました。》
《一定の理解度に達しました。【魔術構築強化】、【魔術独立化】を獲得しました。基本四属性の魔術を修得しました。条件達成。スキル【魔術創造】の領域に到達し、修得しました。》
《基本四属性の魔術を修得しました。統合されます。スキル【属性魔術】を獲得しました。》
《【光魔術】、【闇魔術】を修得しました。【属性魔術】に統合されました。》
《プレイヤーで初めてレベルに囚われず【魔術創造】を修得しました。魔術習得の必要熟練度の上限が低下しました。称号:【創作意欲の塊】を獲得しました。》
日が沈み切り周囲が静かになり始めた。
《『癒の魔導書』『補助の魔導書』『妨害の魔導書』を読破しました。スキル【回復魔術】、【補助魔術】、【呪怨魔術】を修得しました。》
周囲は闇に沈み草木も眠るほどの遅い時を時計が静かに告げている。
《『結界の魔導書』を読破しました。スキル【結界術】を修得しました。『世界地図帳』を読破しました。スキル【簡易地図】を獲得しました。》
朝日が差し込み始めている。
《『付与の魔導書』を読破しました。スキル【魔術付与】を修得しました。》
「…………ふぅ。半日掛かったが大体こんなものだな」
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名前 ガリル 男 Lv1(5)/100
()の中は遅延の影響が無くなった際に到達するレベル。
職業:弓士→魔術師
ステータスポイント(SP1) 50
スキルポイント(SP2) 0
生命 100/100
MP 100/100
STR 0
VIT 0
DEX 0
INT 0
LUK 0
AGI 0
スキル
跳躍Lv1、加速Lv1、遠視Lv3、
集中Lv3、遅延Lv4、加速Lv2、
誘導Lv1、拡散弾Lv1、速射Lv1、
連射Lv1、剛射Lv1、遠射Lv1、
属性付与Lv1、状態異常付与Lv1、
感覚強化Lv1
追撃
〈NEW〉
魔力感知Lv1、魔力操作Lv1、魔術独立化、
魔術構築強化、魔術創造、属性魔術Lv1、
回復魔術Lv1、補助魔術Lv1、呪怨魔術Lv1、
簡易地図、結界術Lv1
称号
読書家、神話愛者、魔素を感じ取る者
〈NEW〉
創作意欲の塊
魔術構築強化:魔術の構成法を理解し、より強固な術式を構築可能にするスキル。
魔術独立化:魔術の1つをスキルとして独立させるスキル。
簡易地図:世界の大まかな国の位置を記録されているスキル。
結界術:封印、防壁となる魔素を構築するスキル。
魔術付与:魔術を武具や道具に付与するスキル。
創作意欲の塊:広い想像力と、それを実現することの出来る者に送られる称号。効果:魔術創造の際の術式簡略化が行いやすくなる。
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これだけのスキルがあればあらゆることに対して対処は可能だろう。知識も身に付いたのでできることが圧倒的に増えたことも大きい。
さて、今日は少し疲れたので魔術の実験はまた明日だな。
結城 蓮です。
ここで一度ガリル編は終わりです。
これからレン編に移ります。
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また次回合いましょう。