38話 生産開始!
店主にスキル【超改造】を譲り受け能力を改造して生産能力を飛躍的に上げたサナは早速アイテムを作り始めた。
「じゃあまずは鍛冶から始めようかな」
鍛冶の手順は子供でもできるように比較的簡単だ。まず、鍛冶具を使用して鍛冶台と、携帯溶鉱炉を取り出す。
次に、携帯溶鉱炉に火を灯し一定の温度になるまで放置する。鍛冶台を設置し、水を張った桶と鍛冶槌を用意する。
「今回は前のイベントで破壊したボスの剣たちを打ち直す」
前回イベントボスとは大量の武器を投擲していたゴーレムの事で、その時に破壊した武器とゴーレムの一部を加工する事にしたようだ。
ちょうど携帯溶鉱炉の温度が鉄などを溶かせる温度になったようだ。
すかさずサナは携帯溶鉱炉の中に持ち手等を取った剣と、ゴーレムの破片を放り込んだ。
本来なら時間がかかる金属を溶かす工程だが、あくまで此処はゲームの世界、スキップできるのだ。
溶けた素材を取り出し型にはめる。そのままでは柔らかすぎて加工ができないので少し冷やす。
サナはその間に作るものを決める。
「武器は……今はいらないから……装飾品?腕輪にしようかな」
作るものを決めたら鍛冶メニューから形状を指定し、制作するカテゴリを選ぶ、今回は輪の形状で腕輪を指定した。
指定を済ませるといよいよ加工に入る、と言っても必要量まで取り出した金属を鍛冶槌で必要回数叩くだけである。
「頑張ろう……って200回!?」
ただ、作る装備のレアリティの高さや熟練度で叩く回数が変動するが。
「あわわわわっ……!と、とにかく打たないと!」
そうして叩き始めるサナ。打ち始めると同時にカーン、カーンといった鍛冶スキル使用時の音声エフェクトが発生し始める。
余談だが、鍛冶による鍛造は叩くリズムや規則によって効果が変わる。勿論使用する素材によっても変わるが千差万別な性能になるだろう。
2分後。
サナが最後の一回を叩くとキィーーンと一際甲高い音がなって腕輪が完成した。
「で、できた〜〜……」
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名称:未設定
種類:腕輪
効果:VIT+5%
(スキル:【代命】)
(代命:生命が尽きる攻撃を受けたとき時一度だけダメージを肩代わりする。ただし腕輪は破損する。※パッシブスキル)
(使用素材:鉄剣身×1、ゴーレムロードの身体片)
製作者:サナ
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「……微妙だけど初めて作ったにしては上出来かな?かっこの中は多分【天龍眼】で見えてるのかな」
上出来どころか、普通にレアな装飾品を作り上げていたが、本人が知ることは出来ない。
「名前は……うん。【守護の腕輪】にしようっと」
《装備に名称が授けられました。条件を達成。【守護の腕輪】のレシピが完成しました。これより【守護の腕輪】作成のショートカットが可能になりました》
「ショートカット?……あ、つまり加工を省略して作れるって事ね」
そうして鍛冶メニューを見てみると新しく「ショートカット」の欄が追加されていた。開いてみるとウィンドウが広いところを見ると一つ一つのショートカットになっているようだ。
「試しに作ってみよう【ショートカット】」
すると新しく「守護の腕輪」がサナの手に現れた。
「あ、MP減ってる……えーっと25減ってるから、「守護の腕輪」はあと……43回は作れるのかな?」
そう、サナのMPは最低値の1000に、装備で増えた100の1100。つまり最大44個「守護の腕輪」を作れる計算になるのだ。
当然レシピと冠されているので素材は消費される。
一息ついてからサナはもう一度「守護の腕輪」を鑑定した。
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名称:守護の腕輪
種類:腕輪
効果:VIT+5%
親和度:火◎水◎風○土△光○闇✕
(スキル:【代命】)
(代命:生命が尽きる攻撃を受けたとき時一度だけダメージを肩代わりする。ただし腕輪は破損する。※パッシブスキル)
(使用素材:鉄剣身×1、ゴーレムロードの身体片)
製作者:サナ
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「あれ?なにこれ?親和度?」
初めて目にした単語に困惑するサナ。だが、すぐに気持ちを抑え頭の中で整理する。
(これは私が鍛冶スキルを使うのが初めてだから分からないのか、それとも条件を満たしているからなのか)
結論は出なかったがひとまずサナは親和度をより詳しく鑑定してみることにした。
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親和度:「魔力の性質」による属性との親和性を表す値。
☆:最も相性が良い
◎:相性が良い
○:普通
△:相性が悪い
✕:相性最悪、性能にマイナスの補正が入る
星にに近づくほど相性が良い。
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親和度とはいわゆる隠れステータスの事で、運営が密かに条件を設定しリリース当日から実施しているシステムだ。
条件は多岐にわたり初期選択した職業に始まり会話したNPCや、こなしたクエスト、討伐したモンスターの種類や数・強さ、獲得した能力に至るまでいと細かく設定されている。
当然確認する方法も用意されており、その方法は、各国に少数存在する魔族NPCに判定してもらうか、現在サナの出身国であるこの地の大人の魔族が、判定してくれる。
「う〜ん、よく分からないな〜」
サナが見て想像したことはまず、効果の変動。親和度という文字からして影響が出ることは明らかだろうが、サナにとってはさほど重要ではない。
「これじゃあ買い手によって作り分けることが出来そうなんだけど……私が魔力の性質が見えないからな〜」
そう、客に合った武具を作ることもサナの目標の一つなのでそれが分からないことはサナ自身が許さない。
せめて分かるようになれないかいくつか模索していたサナだが……。
「店主さんに聞こう。魔力の色と何か関係あるかもしれないし」
似たような単語を話していた店主に聞くことにした。
※
俺の名はリュゲイル。この店「悪魔の翼」の店主をやっている。昔はそれなりに名の知れた│狩人だったが怪我で引退してからは道具師兼道具屋として暮らしている。
そんな俺のもとに一人の人間がやってきたんだ。人間だって言ったがソイツは外の人間じゃねえ、この国で生まれ育った人間だから同じ国民だ。
とは言っても初対面だったがな。一度は娘のミュゼと同じ気配がした時には帰ってきてくれたのかと嬉しくなったが、違った。
その後ミュゼが死んだって気付いたのは酷だったな。なんせ嬢ちゃんの装備してた手袋にはミュゼが自分で刻んだ小さな紋章と何より捕縛の能力が備わってたからな。
一部の装備は大切にされていれば、持ち主が死んだときに魂の一部と能力が宿るっつう事が確認されてるからな。
赤の他人だが、ここまで色が似てたんだ。何かの縁もありそうだからできる限り手助けできればいいと思う。
そう考えているとカランコロンと店の入店音が鳴り嬢ちゃんがやってきたんだ。
「いらっしゃい、何を探してるんだ?嬢ちゃん」
この店に置いてあればいいが……
「ううん、店主さんに頼みたいことがあって来たんだけど……」
頼み?仕入れてほしい商品があるのか?それくらいなら出来そうだな。
「できることなら手伝うぞ」
「ありがとうっ!実は「魔力の性質」について教えてほしいんだけど、知ってる?」
魔力の性質か……魔力の色の事も知らなかったのに聞いてくるってことは……どこぞで知って魔力繋がりで俺の所にたどり着いたってところだな。
「勿論。俺達魔族は誰でも知っている」
「そうなんですか。……教えてくれますか?」
ふむ……姿勢を正して目も真剣だな……。
対して口外して駄目なものではないし……ここまで真剣ならな。それに手助けしようと決めた矢先だ、詳しく教えよう。
「魔力の色は前にも話した通りMPを操るための力のオーラの色のことだが、さらに詳しく説明すると、色によって得意、不得意があるんだ。それを魔力の性質って言うんだ」
「なるほど……ちなみに私の色と性質はなんて言うの?」
目の奥に好奇心を宿した目でこちらに迫る嬢ちゃん。まるで新しい玩具を見つけたみたいだな。
「まあ待て。先に種類を説明しておこう。まず何色にも染まっていない赤子同然の色の無色。属性を司るそれぞれの名を持つ色が複数―――俺には数え切れないな。王者たる色である金色、銀色。何色にも染まる純白。位だな」
「お、多いですね……」
俺が告げると少し顔を顰めて苦笑した。まあ、メジャーなもので他にもまだあるのがな。
「さて、基本的なものは伝え終わったから嬢ちゃんの色を教えるぞ」
「お願いします」
「ミュゼとほぼ同じ色って言ってたんだが……覚えてるな?そんでお前の色は生産職は喉から手が出るほど欲しいと言われている【ウツロイの色】……と若干【純白】が混ざっている。」
「生産特化ってことですよね?やった!」
嬉しそうだな、嬢ちゃんは商人かな?
「詳しく説明しよう。まず【ウツロイの色】は簡単に言えば自分の魔力を他人の魔力そのままそっくり同じに変化させる事が出来る。つまりオーダーメイドがを作る専門の色だな」
「つまり自分の作ったものが一番自分に使いやすいって事ですか?」
察しがいい。そう、誰もが何かを作る際無意識に魔力を流して己に使いやすくしている。すなわち客に最も相性のいい物が作れるという事だ。
「そうだ。次に【純白】だが先程軽く話した通り何色にも染まる事が出来るという性質だが、嬢ちゃんの色なら【ウツロイの色】の補助的な役割だな」
「そうなんですね~……店主さん、最後なんですけど……色の見方を教えて下さいっ!」
結城 蓮です。
あけましておめでとうございます。
今回長くなりました。
新年頑張って投稿していきたいと思います。
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また次回会いましょう。