36話 謎のプレイヤー
―――GBO市街地フィールド―――
荒廃しきった東京のようなデザインの街の中、まだ原型を留める数少ないビルの中の居酒屋で今現在ひっきりなしに呟かれる噂。
『最強プレイヤーが帰ってきた』
それは少し前まで存在していた一人のプレイヤーを指した言葉だ。
その特徴は「ハンドガンとナイフの二刀流」という少し変わった戦闘スタイルを取り、紅色のメッシュの入ったポニーテールと言った少し目立つ格好をしたプレイヤーと言ったところだろう。
特段優れたことは無いほどに平凡なステータス。
他のプレイヤーの様に目立つ能力も持っていない。
だが、彼女は最強だった。彼女の実績は、ハンドガンを持てば全て急所を貫き、ナイフを持てば首を落とす、と言った半ばあり得ないものだった。
当然、依怙贔屓やチート使いなどと言った誹謗中傷も現れ、いつの間にやら姿を消した。
そんな彼女がつい先日GBOに再び現れたのだ。
そして現在のトップをいとも簡単にキルし、無傷で8割方を葬るという快挙を果たした。
噂にならない訳がない。そして様々な考察が飛び交い一度とある掲示板が落ちるほどにアクセスが相次いだそうだ。
そしてその噂話を聞き流しながらとある男が愉しそうにだが静かに笑った。
「なんだ……あいつの事だからどうせ上手く口車に乗せられたんだろうが……観戦しておいて良かったよ。」
アルサトを知っているような事を一人呟きながら武器の手入れをする男に絡む者がいた。
「よぉ兄ちゃん……いい武器持ってるねぇ……こんなに良いもん持ってるってことは……金持ちだよなぁ?」
「俺達と『決闘』してお前が負けたら武器でも寄越せよぉ」
当然のように無茶苦茶な要求をしてくる男たち。本来なら断るところだが、質の悪いことにこの二人そこそこに強いのだ。
(面倒だ……俺は武器こそ持ってるが、金欠なんだがな)
さてどうしたものかと悩む男を無視して勝手に決闘が始まってしまった。
「『市街戦』か……なってないな、痴れ者め」
このゲームの決闘はいくつか種類があり、治安の悪そうなデザインそのままに問答無用で戦う『市街戦』。※ちなみに周りも被害を被る
バトルフィールドに転移してから戦う『平等戦』。
物をかけて戦う『賭博戦』。
が主に存在していて基本的に少数での『市街戦』はマナー違反として扱われる。最低でも参加に50人は居なければならない。
「知ったこちゃあねぇよ!雑魚のくせにこんなにいい武器も―――」
最後まで言葉を発せずに男の眉間に穴が空き物言わぬ死体に変わった。
「え?は―――?」
何が起きたか分からなかったもうひとりの男は困惑している内にあっさりと首と胴体が離れ離れになった。
実に2秒での出来事。その一瞬で二人を葬り去ったこの男の正体は、かつてアルサトの相棒にして師匠を担った影のトッププレイヤー(知る人はごく少数)、ガリルという名のプレイヤーである。
潜伏戦を得意としておりその隠密性の高さの余り認知されないガンナーだ。使う武器は全て。状況に応じて武器を変え確実にキルしていくスタイルである。
最も得意なものはアルサト同様ハンドガンとナイフの二刀流だ。
「そういえば、あいつはOMOを始めたと言ってたな……また共にプレイしたいし……俺も始めるとしよう」
そう言ってログアウトしていった。
あとに残されたのはいつの間にやら装備、所持金、アイテムをすべて奪われた二人の男の残骸だった。
結城 蓮です。
寒い……。自室に暖房ほしいよぅ……。
読者の皆さん、服にカメムシが入ってきだす時期ですよ。気を付けてくださいね。
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また次回合いましょう。