30話 出身地と新たな仲間
個人的な仕事で一週間休みます。すいません。
海の家から帰宅途中の美波。
「どんな感じになったんだろう……楽しみだな」
今日は色々あったけど、結局いい思い出になったしいいや。
どんな世界になったんだろうなぁ……。
できればプレイヤーとは戦いたくは無いけど、もし倒したときに報酬が貰えるとかだったらやっちゃうかも。
でも、今は新しい素材!今はまだ出来ないけど防具も作りたいもんね。
よし……帰ったら早速ログインだー!
※
―――金本家、美波の部屋―――
現在時刻は午後7時。
「疲れてるけど、やりたいもんね!」
そう言ってスキャナーを被りOMOにログインした。
だが、いつもの様に宿屋で目を覚ますことはなくゲーム初期設定以来の真っ白な空間に立っていた。
「あれ?バグかなぁ……?」
しかし暫くすると1つのウィンドウが開いた。
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ランダムリスポーンの為宿屋を引き払いました。
利用期間:一ヶ月/二ヶ月
1日の宿泊料:100G
返済金額:3000G
条件を満たしましたので称号を獲得しました。
好奇心
条件:宿屋を一ヶ月以上一括で借りる、鑑定系スキル持ち。
意味の無いと思われる事でも挑戦した極度の物好きな者への称号。スキル【鑑定記録】を獲得。
鑑定記録
一度鑑定したモンスター、アイテム、武具の情報を記録するメモ帳図鑑。鑑定を繰り返し新たな情報が見つかれば更新される。
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「あー、宿屋の……ていうか物好きなの?これ」
そんな呟きを置いてサナは白い空間から消え去った。
※
目を開けるとサナの目に飛び込んできたものは血色の空だった。
「いやいやいや……待って待って待って」
周囲を見回すと蝙蝠の翼ようなを持った人間、獣の耳を持つ人間、異形の化物―――数え出したらキリがない程のいわゆる亜人と呼ばれる者達が豊かに暮らしている。
「えぇぇぇぇぇえええ!!?」
サナはどうやら俗に言う「魔界」へと飛ばされたのであった。
………
……
…
所変わってシズ。
シズは江戸の日本としか形容のできない繁華街にいた。だが……そこには所々に物怪が確認できる。
そして―――侍、忍も。
「まるでこの装備のイメージぴったりの国ね」
そう呟きながら見事なグラフィック技術に見惚れていると
「其処の忍!見ない顔よな……何処の闇忍だ!」
NPCと思われる忍に絡まれシズはこの先の展開を察して少し面白そうに溜息をつき、
「典型的なテンプレね」
名も知らないNPCと相対した。
………
……
…
一方ユズは森に囲まれた里にいた。
「こんなに精霊達の気配が大きいなんて初めて。何か重要な物でもあるのかな?」
精霊装備を装着しているユズは少し精霊を感知することができる。
普段は余り感じない強い精霊の気に驚いていた。
「もしかしたら仲間になってくれるかも」
そんな期待を抱いて里の探検を始めた。
※
初めこそ驚いたサナだが、2週間も経つ頃にはすっかり慣れ、この国の事を知り始めた。
AI搭載されたNPCとの会話は楽しく見た目怖くともサナには「気さくな国民」と言う認識になった。
そしてNPC達との会話で色々な知識を得たのだ。
分かった事として3つ。その内2つがサナの興味を引いた。
・魔王が国を統治している。
・魔界を出るには国の東西南北4箇所のポータルを
踏めば出ることができる。
・魔界のすぐ外にホラースポットである幽霊屋敷が
ある。
サナはその中でも幽霊屋敷が気になり自分に最も近い西のポータルに歩いていった。
魔王も気になったがまだ弱いので後回しにした。
「魔界意外とイケるかも」
もうすっかり慣れちゃっかり宿も借りたサナは最早住人と変わらない。深淵装備も相まって違和感ゼロである。
そしてポータルにたどり着く。
「うーん……何処につくかはわからないけど幽霊屋敷があるのは確かだよね」
意を決してポータルを踏む。
そして辿り着いた場所は―――最初の街の外れの廃れた屋敷の近くだった。
「えぇー…………い、いや知ってる場所で良かったって思おう。うん。それが良い…………よし、幽霊屋敷、幽霊屋敷」
結果見なかったことにしたサナは幽霊屋敷と思われる建物に入った。
「おじゃましま~す……」
現実と違い1日が20時間のこの世界ではもう真っ暗な外と相まってかなり禍々しい屋敷だが、サナは肝試しする気でいたのでどんどん進んでいく。
「あっ!宝箱だ!」
宝箱を見つけ開けるが中身は呪いの装備が入っていた。
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災難の指輪【束縛の呪い】
効果:LUK値に−2倍。
ありとあらゆる災難が詰まった呪いの指輪。装備すると所有者に災難をもたらす。
【束縛の呪い】
これを一度装備すると呪いが解けるまで外すことができない。
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「私には無縁だね……一応持っておこうっと」
まだまだ進んでいく。
そしてちらほら幽霊やら不死性魔物がいるが幽霊は攻撃などをして来ないため無視し、不死性魔物は全員【捕縛】で捉えて探索する。
すると、とある地点から一気に幽霊、不死性魔物が増えた。少し苦労するものの奥へ進む。
そして最奥らしき所にたどり着く。
すると部屋の中心に2つのHPを表すバーが表示された。
ボスと考え構えるが何もして来ない。逆に2つの何かの片方の生命は尽きる寸前であったのだが、それがたった今無くなり、光になって消えた。
「やっと倒したー!」
そんな声が聴こえよく見るとボスだと思っていた2つのうち1人はプレイヤーだったみたいだ。
そのプレイヤーは喜んでいたがサナに気づいたようだ。
「ん?あれ……うわぁ!またモンスター!?」
だが、モンスターとしてだが。
「えっ……違うよ!」
「えっ?あぁ……プレイヤーかぁ……良かったぁ」
即座に否定したサナの言葉にプレイヤーは安堵の息を漏らす。
近づくとそのプレイヤーはサナと同じくらいか少し上の年の整った中性的な顔立ちと声をした男の子だった。
「プレイヤーなんて久しぶりに見たよ」
「え?そうなの?」
ラスタドールではかなりのプレイヤーがいたと思うのにと考えるサナだがそのプレイヤーの話を聞いて珍しく驚いた。
「僕は…………いや自己紹介が先かな?僕はレン。発売からプレイしてたプレイヤーなんだけど、ここに入ってから罠を作動させちゃって「クリアまで出られなくなる」と「死亡復活地点変更」っていうダンジョン脱出不可になってずっとここに居たんだ」
つまり、発売日からの一ヶ月25日ずっとこの屋敷にいた計算になる。
「運悪すぎない?その事にびっくりした」
ここまで酷い罠を踏むのは運が悪すぎるだろう。この罠は実は定期的に場所も変わり余程でないと踏まないのだ。
「まだあってね、ここで既に1万回死んだ」
「そんなに!?」
「罠が多い事と呪いのせいでこの数値だよ。お陰でスキルも手に入ったけど」
「そ、そうなんだ……大変だったね」
サナも苦笑するしかない。
「何でこんなに酷いことになったんだろう?」
普通はここまで死ぬ事も普通ないのだがその事にも秘密があった。
「僕には呪いがかかってて一定のステータスが固定されて、運なんかは−100なんて数値になってるんだ」
そう、本来のステータスより低く固定されてしまったステータスのせいでまともに戦えもしなかったのだ。
だが、サナは1つ閃いた。そしてあるものを取りだす。
「これ、装備してよ」
それは先程手に入れた「災難の指輪」だ。
「……君は僕を呪い殺したいの?」
「違うよ!……よく考えてみて数学じゃあマイナス×マイナスは?」
サナはレンにヒントを出す。そして直ぐにピンときたレンは笑う。
「なるほどね、試してみるよ」
そう言って指輪をつけた瞬間―――指輪が光った。
二人は目を瞑るが光はすぐに収まり目を開けるとそこには綺麗な装飾の施された指輪があった。
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幸福の指輪【装備者登録】
効果:呪いの効果を1つ打ち消し、運を2倍にする。
装備者登録
効果:1度装備した者を登録しその者だけの装備となる。
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「まさか呪いの装備にこんな使い方があるなんて……本当は教会や聖職者に頼むのに」
「そうだね……ってうわ!」
《【奇想天外】が発動しました。今回の効果は【技能追加】です。スキル【魔道具作成】が進化し、【道具師】になり、【魔道具作成】【呪物作成】が行えるようになりました》
急な【奇想天外】の発動に驚いていると
「?……でもまだ他の呪いはあるんだよ……ってうわっ!」
そう言った所でダンジョン攻略報酬の宝箱がある事に気付いた。
中身は―――
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死者の包帯【復活】【成長】【スキルスロット】
頭に巻かれた血が滲んでいる包帯。かつての怨念が囁く。
INT×−2
死者の装束【復活】【成長】【スキルスロット】
葬儀の死者が着る死装束。世の未練を悔やむ。
STR×−1、VIT×−1
死者の数珠【復活】【成長】【スキルスロット】
元は神聖な数珠だった。執念深い怨念は神をも堕とす。
DEX×−2
死者の黄泉路【復活】【成長】【スキルスロット】
この世の色とは思えないほどの闇色の靴。死者はその靴で黄泉路を渡る。
AGI×−1
セットボーナス
怨念の印:装備者の呪い全てを打ち消し、呪い:死者の王を付与する。
死者の王:死者を従えるスキル。複合スキル。
死者創造:不死性魔物を作る。死体と魂が必要。
集魂:プレイヤーキル時50%で魂を得る。
魂喰:魂を取り込み一時的に強くなる。
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かなり使える者が絞られる装備である。だがレンには都合のいい装備だったと言えるだろう。
「やっと呪いが解けたよ……仲間にしてくれないかなお礼に」
満足気に笑いながらサナに世間話のようにパーティ加入を申請する。
少し対応が遅れたがサナは
「面白いからいいよー!」
アッサリと認める。実にアッサリ仲間が増えたのであった。
結城 蓮です。
祝30話!
思いの外長続きしてます。
そして、いつも誤字報告ありがとうございます。助かってます!
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また次回合いましょう。