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29話 世界実装!


 「やっぱり面倒くさいなぁ……」


 少し早い朝。美波はそんな事を言いながら歩く。


 その行く先は学校。休日以外毎日行ってるとはいえ、余程家にいたくない者以外はとても憂鬱な場所だ。


 「あぁ〜〜いきたくな〜い」


 誰もいないが言いたくなったからそんな声を漏らしているとサラッと会話に混ざる者がいた。


 「いや、明日から夏休みでしょうが」


 「そうだけど―――って海!?」


 海である。海は気配を隠すのが上手く、たまにクラスメイトを驚かせている先生が少し困っている癖がある。


 「今日だってただ終業式なんだし勉強もないよ?」


 明日が夏休みなのだから当然である。


 「終業式は眠くなるし、その後の大掃除はいつもより長くてつまらないし宿題は山ほど出るんだよ!?」


 夏休みなのだから当然である。


 「午前中しかないから良いでしょ。宿題は私と一緒に今日終わらせる?」


 「えぇー……疲れたあとにやるのー……?」


 美波は後回し、海は速攻タイプである。美波には海の考えこそは分かるが実行となると渋る美波。


 だが今回は海が上手だ。


 「私の家でお菓子食べながらする?それに宿題終わらせたらOMOしまくれるよ?」


 好物で釣る作戦。因みに美波はクッキーが好物だ。


 「確かに……でも……」


 だが踏みとどまる。仕方ないので奥の手。


 「家に2つ本体あるけど、休憩とかで久しぶりにFAOファントム・アニマル・オンラインやる?」


 FAOとは自分が動物になる事のできるゲームで癒やし系ゲームだ。しかし、実在しない動物になることも可能で、男女共に人気のあるゲームだ。


 「やる」


 その手に見事掛かって地獄を見るのはお約束である。


           ※


 豪快な銃撃音が辺りを埋め尽くす。被弾しそうになったアルサト(美波)は近くの障害物に隠れる。


 「いや、なんでこうなったのよー!」


―――3時間前―――


 「あれ……?終わった……?」


 美波は山ほどあった宿題すべてが終わっている事に驚愕していた。


 「思ったより多く見えたけど簡単だったからただの作業になってたね。何でか感想文はなかったし」


 そう、思いの外簡単に終わってしまったのである。基本的に好成績な二人には復習ワークやプリントなど意味なかったのである。


 「じゃあ……FAOやろ?」


 「そうだね」


 持参したスキャナーを嵌めた美波は海がソフトをセットするのを目を閉じて待ってゲームにログインしたのだが……。


 「え?……あれ?ここって……」


 荒れ果ててしまった―――恐らく東京だろうか―――街の真ん中に居た。


 そこに海がログインしてきた。


 「それじゃあ殺ろうか?アルサト。オンラインで一緒に」


 「は、嵌めたなぁー!?」


 そこで二人は光に包まれ消えた。


―――現在―――


 「何でアルサト(この姿)でやらなきゃいけないの……」


 銃撃が続く中そう言って美波―――アルサトは溜息をつく。


 現実とは違い、血色の瞳といくつかの真紅のメッシュが入った黒髪ロングをポニーテールにしている。


 アルサトは顔こそ美波のままだが、どこかの冷たい雰囲気が流れている。


 このゲームはアメリカ大手企業『サウザント』によるVRMMO―――GBOガン・バトルウォー・オンラインと言う。


 美波がかつてかなりやり込んでいたゲームだ。


 「ああ!!もう、うるさい!!」


 そう言って別の障害物に移る際に先程からの射手をヘッドショットする。


 「海め……このオンラインモードが死ぬか勝つまで終わらないの知っててこのゲームやらせたな」


 因みに海は既にゲームオーバーだ。あれはわざと殺られた節がある。


 このオンラインモードは死亡すれば他プレイヤーをリアルタイムで見ることができ、恐らくそれが狙いだと当てをつける。


 そしてオンラインモードの対戦人数は100人。今は98人。


 「なら、さっさと終わらせよう。OMOのお陰でフルダイブの感覚は戻ってるし、腕も余り衰えてないみたいだし」


 そう言って愛銃―――SigP228を片手に駆け出した。


―――観客席―――


 観戦者A いやー盛り上がってるねぇ。


 観戦者B そうだなぁ……あ、やれ!アルフレッド!


 観戦者C やっぱりトッププレイヤー強いね。


 観戦者B いや、確かにそうなんだが……な。


 観戦者A うん……まあ……。


 観戦者C ??どうしたの?


 観戦者D 知らないの?本当のトッププレイヤーの事。


 観戦者C アルフレッドじゃないの?


 観戦者A そうなんだ。名前は―――


 急に歓声が大きくなる。アルフレッド(現在のトップ)がキルされたのだ。


 観戦者C うそっ!?


 観戦者B おいあれ……。


 観戦者A あぁ、間違いない。


 観戦者D 引退したんじゃないのか?


 観戦者C な、何が起こってるの?


 観戦者D アルサトって女プレイヤーが居たんだけどね。今はこのゲームから去ったって聞いてたんだけど、このゲームで、最強のプレイヤーキラーだった。


 観戦者A あの髪色と独特な武器のチョイスをするプレイヤーは一人しかいない。


 観戦者B 何で戻ってきていたかは分からないけどアルフレッドをキルしたプレイヤーがトッププレイヤーだったんだ。


 観戦者C じゃあ……私は今凄いものを見てるのね!


 観戦者A、B、D あぁ!!



 結果見事アルサトがダメージゼロ、キル82の成績を叩き出した。


 そしてその事はオープンチャットや掲示板あらゆる所で話題になったのだった。


           ※


 少し疲れて現実に帰ってきた美波に先にログアウトしていた海が話しかける。


 「やっ!お疲れ!ア・ル・サ・トさん?」


 「シメテヤル……カクゴ……!!」


 「あれ?なんか怒ってる?いや〜ちょっとからかってみたくて〜って目が本気(マジ)になってる!本気(マジ)になってる!ってうわぁ!」


 ふざけ過ぎた海を美波が素早く捕まえ腕を極める。


 「イイノコスコトハ……?」


 「痛たたたっ!痛い痛いっ!ギブッギブッ……!…………!…………!……すいませんでしたーー!!」


 その言葉でようやく解放された海は荒くなった息を整える。


 「何でこれ(GBO)しようとしたの?」


 「だって美波強かったから久しぶりに見たいと思ったのと、少し参考にしたかったんだよ」


 少し申し訳無さそうに海が白状する。


 「私はあんな事があったから少し嫌だったんだけどね」


 「あんなこと?」


 「知らなかったっけ。実はただ楽しんでやってたあのゲームで陰口が酷くてね。『チートじゃないのか』とか『真っ先にキルしないと負けるぞ』とか下らないものだったけどね。それが嫌になったから辞めてたんだ」


 かつてトッププレイヤーだった頃この強さを妬む者が出たのだ。そういった者が居るのは当然だが、その頃の美波には少し早過ぎたのだ。


 「ごめん……知らなかった」


 「いいよいいよ!結局少し楽しいって思っちゃったから」


 暗かった空気を取り消そうとする様に明るい声で返す美波。そこで海は、あることに気付いた。


 「ありがとう。……あれ?じゃあOMOで『商人』になったのって、あんな目立ち方したく無かったから?」


 「そう、でも結局戦ってるから意味ないけどね。それに私は前みたいに弱くはないから、陰口どんと来いよ」


 そう言って胸を叩いた美波が少しおかしく見えて


 「あははははっ!クソ強い商人とか既に商人辞めてるけどね」


 「え……そ、そうかな〜……何て」


 このやり取りがおかしく思っ二人は


 「「あははははっ!!」」


 楽しそうに笑った。


 そんな時に海のゲーム機にメールが入る。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 いつもOMOをプレイ頂き誠にありがとうございます。


 運営よりフィールドの拡大をお知らせします。


 レベル25を超えたプレイヤーが10000人を超えました。これによりフィールド拡大の条件を満たしましたので開放されます。世界各地の我が社『インフィニティ』支部計100社で同時制作を行っていた、フィールド計100、街や国計39すべてが実装されました。


 これにより、新たなスキル、魔術、職業が追加されました。


 そして全プレイヤーはランダムで街、国、村に飛ばされ、その地点が出身地となります。尚、新規プレイヤーについても、ランダムでスポーンいたします。



 これからもOMOをよろしくお願い致します。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 「明日からやろうっと。今日は、お腹いっぱい」


 「そうだね……また明日。……あっ!日記はちゃんとつけてねー?」


 「わかってるよー」


結城 蓮です。

報告遅くなりましたが、500人超えのブックマーク登録ありがとうございますっ!

これからも頑張るのでよろしくお願い致します。

そしていつも読んでくれてありがとうございます。


面白いと思ったらブックマーク登録や評価をよろしくおねがいします。

また次回合いましょう。

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