28話 怒涛の討伐劇
「頑張らないとね」
そう呟き、シズはかつて自分の攻略した迷宮に移動する。
アイテム等が揃っているのを確認するとシズは中へと歩いていった。
中では既に戦闘準備の取れたモンスター達がシズに向かって襲い掛かってきた。
あっという間にモンスターに飲まれ光となって消えた。
侵入者を葬り元の配置に戻ろうとした一体のモンスターから白いダメージエフェクトが飛び散り爆散した。
「甘い甘い。【加速】!」
他のモンスターが気を取られているうちに加速を使い素早く残りを片付ける。
「やっぱり便利だね。……でもそろそろスキル増やさないとなぁ」
現状スキルが少なく、戦法が数えるほどしかないのだ。そのため多くのスキルを手に入れたいのだ。
「うーん……どうやったら手に入るかな……あっ!」
考え事をしながら歩いていたため足元のスイッチに気が付かなかった。軽く舌打ちしながらどんな罠が来てもいいように周囲を警戒するが何も来ない。
しかし、すぐ隣の壁が幕のように上がっていき、その奥に通路が伸びていた。
「隠し通路?……運がいいのか悪いのか」
行かないという手もないのでシズは、そのまま通路へと足を運んだ。
―――忍耐の試練場―――
その場所は中世ヨーロッパの闘技場のような舞台に繋がっていた。
「へえー……これは何かと戦うのかな?」
そう言っていると案の定アナウンスのような言葉が聞こえてきた。
《ホブゴブリン1万体、ゴブリンキング1体を討て》
それはもうサラッと何気ない感じで
「え?……嘘でしょ……」
ホブゴブリンはこのゲームで登場するゴブリンの上位個体だ。この力は強く、団結すれば危険度は跳ね上がる厄介なモンスターだ。
ホブゴブリンはシズ1人で簡単に倒せる。だが1万体となると話は別だ。この闘技場の広さからして一気にホブゴブリンが溢れてくるだろう。
最悪キングがホブゴブリンを率いて登場するかもしれない。
「「「グギャアァァァ!!!」」」
早速お出ましだ。逃げることは出来ない。既に入ってきた場所は閉まっており死ぬか滅ぼすかしなければ出ることはできない。
「やるしかないか……頼んだよ『如月』」
自分で勝手につけた朧霞の直刀の名前を呼ぶ。
そのまま抜刀すると一気に駆け出した。
「【朧霞】【加速】【幻妖炎竜巻】!」
一先ず幻影を生み出し、自分の姿を隠しそのまま距離を取る。幻影を相手にしている内に広範囲殲滅用の妖術を使用する。
面白いほど簡単におよそ100体のホブゴブリンが消滅した。だが、幻妖炎竜巻のMP消費量は多く、乱発は出来ない。精々後3発が限界だろう。
「やぁああ!」
だから確実に1体1体を素早く多く殺していく。
しかし当然攻撃が当たる事もある。だが、体力を7割ほど削られれば【朧霞】で身を隠した僅かな間にポーションを使いまた復帰する。
繰り返す事2時間。シズに変化があった。
《条件を達成しました。スキル【剣術】を体得しました。剣術のレベルが1になりました。【剣技】を習得しました。》
技を身に着けた。しかしまだ続く、現実では偶然、または必然、奇跡とも言える管理AIによる乱入だ。
《全プレイヤーに通知します。スキルに不適合が見つかりました。最適化を開始します―――【剣術】を【刀術】に【剣技】を【刀技】に修正……完了。新たな武器種を作成します……完了。刀が武器として成立しました。また薙刀も武器として成立します。これにより【槍術】【槍技】が【薙刀術】【薙刀技】になりました》
これにより刀、薙刀が新たな武器として成立しより技が増えた。
「【属性剣:火】【加速】剣技……【一文字】!」
火を纏い切れ味の増した如月を横真一文字に高速の斬撃が飛ぶ。
そしてそれは刀のリーチも相まって多くのホブゴブリンを葬った。
《刀術のレベルが2になりました。よって新たな剣技を習得しました》
斬る。
《刀術のレベルが3になりました。よって―――》
ひたすらに斬る。
《刀術のレベルが4になりました》
己の感覚が研ぎ澄まされるのを肌に感じながら。
《刀術のレベルが―――》
《刀術の―――》
《刀術―――》
《―――》
※
どれだけ経っただろうか。もうホブゴブリンの数は100体ほどに減った。そしてそれを皮切りにゴブリンキングが現れた。
「いいね…………やってやろうじゃないの」
息も絶え絶えで満身創痍でありながらも興奮したようなシズだが不思議と冷静さと集中力はどんどんと増していた。
そしてシズは今までに感じたことの無い感覚に居た。まるで世界から自分と相手以外全てが居なくなり音のない世界にいる様ななんとも言えない感覚。
視界から色が消え去り余計な音も全て聴こえなくなり、止まったときの中にいる静けさが身を包む。
人は疲労のピークで最も効率のいい動きをする。
今まさにシズはその境地に立ち入っていた。
駆け出す。今までで最も早く。自ずと理解した無駄のない足の運び方、剣道で培った足の運びの経験もあり、より無駄の無い走りへと昇華された。
《スキル【疾風】を習得しました》
そしてその加速を利用しホブゴブリンに斬りつける。
そして斬りつけた勢いを殺さぬよう流れるように次の技につなげる。これは決してスキルでは出来ない技のつなぎだ。
《スキル【流水】を習得しました》
そうして次々と未だかつてない速度でホブゴブリンを全滅させる。
ゴブリンキングはシズのその様子から戦闘形態を取り手に持った大剣を振り抜くが―――
「【属性剣:火】!せやぁぁああ!」
純粋な剣術を使い放たれた連斬に地に伏した。
そして
「【一文字】」
首をはねられ光となって消えた。
「…………ふうーっ……終わった……」
気力も限界となったシズが如月をしまう。
するとレベルアップ通知と共にワールドアナウンスと呼ばれる特定の功績を全プレイヤーに知らせる
《世界に認められました。プレイヤー:シズの技は剣技として登録されました。技の名は【鳳仙火】。スキル【炎剣技】が編み出されました》
《称号【ゴブリンスレイヤー】を獲得しました》
《称号【殺戮者】を獲得しました》
《試練終了。称号【不沈の剣士】を獲得ました》
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
不沈の剣士
万の軍勢相手に生き残った者への称号。一定数を超えるモンスター、プレイヤー等と戦闘になった場合、VIT+300、スキル【不屈】【不退転】を獲得。
不屈:自身が死亡するダメージを受けても生命1を残して耐えることができる。※パッシブスキル
不退転:戦力(この場合人数)が不利になればなるほどSTRが上昇する。※パッシブスキル
ゴブリンスレイヤー
数多のゴブリン種を単騎で殲滅した者への称号。スキル【ゴブリンキラー】獲得。
ゴブリンキラー:ゴブリン種に対して攻撃力が増す。※パッシブスキル
殺戮者
万を超える軍勢を単騎で殲滅した者への称号。スキル【連帯攻撃】を獲得。
連帯攻撃:敵を殺害するとその味方誰か一人に無条件で100〜99999ダメージが入る。そのダメージで死亡した場合、再び連帯攻撃スキルが発動する。※パッシブスキル。オン・オフ可能。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「使えるスキル結構増えたな……目的達成とはいえ疲れたなぁ……」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
名前 シズ 女 Lv12→20/100
職業:忍者
クリティカル率:25%
ステータスポイント 0→80
スキルポイント 20→100
生命 500(+100)/500(+100)
↓
1100(+100)/1000(+100)
MP 450(+200)/450(+200)
↓
1200(+200)/1200(+200)
STR 220(+170)
VIT 60(+20)
DEX 40(+30)
INT 70(+30)
LUK 0
AGI 270(+210)
スキル
加速Lv2→5、攻撃強化Lv3、防御強化Lv1
火魔術Lv1、風魔術Lv1、妖術Lv1→3、
属性剣Lv7、刀術Lv8、刀技、虚身、疾風、
流水、炎剣技、不屈、不退転、ゴブリンキラー、
連帯攻撃
装備
頭:幻影の滅温首輪(STR+30)
体:幻影の滅臭胸甲(STR+30VIT+10)
腕:幻影の滅気篭手(STR+30VIT+10)
足:幻影の滅音靴(STR+30)
刀:朧霞の直刀《真打》(DEX+30)
副装備:術媒介の呪術符(INT+30)
暗殺者の短刀(クリティカル率+5%)
称号
暗殺者、不屈の剣士
疾風:効率よく足を運ぶことでより早く移動を可能にする。
流水:実体のある物なら武器でいなし無効化できるようになる。また攻撃後の硬直を軽減する。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「さて……つかれたし帰ろうかな」
そう言ってシズはOMOからログアウトした。
結城 蓮です。
少し寝ぼけてて間違いがあったので修正します。ユズの装備の服系統をスキルを間違えていました。ごめんなさいm(_ _;)m
面白いと思ったらブックマーク登録や評価をよろしくおねがいします。
また次回合いましょう。