龍神様と鱗姫
村は日照り続きで水不足に悩まされておりました。
村長は、遥か上空の天空に棲まう龍神様に、恵みを司る雨をお願いすべく、生贄を出すことに致しました。
村人は戸惑うでもなく、それとなく、しれっと一人の娘を選びました。
とても権威のある、それはそれは古い神社に、痩せた娘が現れました。
娘は何処か痒いのか、頻りに至る所を掻いておりまして、その後には何やらきらきらと光る、小さな鱗が落ちておりました。
娘を一目見た龍神様、その娘が鱗病と呼ばれる奇病であることを見抜きました。
そして悲しみました。年端も行かぬ幼き娘を、それも病に罹った哀しき娘を、生贄に出さねばならぬこの世の中に。そして誰もそれを咎めぬ村人達に。それは酷く嘆き悲しみました。
龍神様は娘に告げます。
「これより一年、貴様は口をきいてはならぬ」
娘は静かに頷き、村へと帰りました。
龍神様はその日、村長の夢の中へと現れました。
「あの娘は神に近い存在である。そのような者を生贄に出すとは、恐れを知らぬ行為であるぞ? 良いか、あの娘をぞんざいに扱うことは我をぞんざいに扱う事と同等であると知れ!」
夢の中で村長は、ひたすらに平伏し、目が覚めたときは冷や汗で、布団が酷く濡れておりました。
村長が障子を開けると、外は天が怒り狂うかのようか雷雨で、稲光がけたたましく、それは龍神様の怒りの表れでありました。
村長は慌てて娘を探しました。
娘は家へと戻っており、村長が娘の顔を見るなり、勢い良く平伏し、何度も謝り続けましたが、娘はただただ、首を振るばかりです。
それから娘の元には村長から、そして村人達から貢ぎ物が運ばれるようになりました。
娘は戸惑いましたが、沢山のご馳走を見ると、我慢が出来ずにそれらを食べ、その美味しさに笑顔が溢れました。
一年後、娘の奇病は治りました。
ご馳走を食べて栄養が行き届き、肌も良くなり、少しふっくらとした体付きになった娘は、神社へと赴き、龍神様に感謝の祈りを捧げました。
娘の元気な姿を見た龍神様は、村に恵みの雨を降らせました。
日照り続きの村は、雨に恵まれ、実り豊かな村へと変わりました。
娘は毎年、日照りの時期になると神社へと赴き、祈祷をしました。すると、それを見た龍神様が必ず雨を降らせるのです。
村人は龍神様への感謝と畏怖を忘れること無く、娘を神社の巫女として奉り、娘は生涯幸せに暮らしました。




