1 どんな要素が読者受けするのか?
性癖を究めろ、n番煎じを恐れるな
「好き」ってなんですか?
あなたの「好き」なものはなんですか?
なんでそれを好きだと言えるんですか?
完全な読み専としては三、四年ほど、そこそこの数の作品を読み、好意的な感想は大きく三つに分類できることに気づきました。
・好き
・面白い
・上手い
ここで重要なのが「好き」な作品です。自分が好きな作品に対してどんな行動をとるのか把握していれば、分類はさほど難しくありません。私はこんな感じで分類してます。
「十回は繰り返し読み返すシーンが複数存在する作品」「エタっても完結したあとでもブクマを外せない作品」「感想欄を隅から隅まで読みにいく作品」が「好き」にあたります。
「仕事や勉強が手につかないしついつい寝る時間が後ろにずれていくくらい先が気になって一気読みしちゃう作品」が「面白い」になります。
「すらすら読めてかつ作者さんの見せたい部分がわかるなーと読みながら分析できる作品」が「上手い」作品です。
あくまでも私の場合なので、みなさんもなろうで読者をしているようでしたら、自分が好きだとどういう反応をするのか考えてみて、その反応に当てはまる作品を並べてみてください。
二次創作の作品でも、商業の書籍でもいいです。とにかく、自分が「好き」な作品を列挙してください。
私の場合、「好き」な作品や「好き」だった作品はこのへん。ちょっと古いかもしれないけど……。できるだけ有名そうな順番で並べます。
・デスマーチから始まる異世界狂想曲
・フェアリーテイル・クロニクル
・人狼への転生、魔王の副官
・新しいゲーム始めました。
・メニューをどうぞ
・戦国小町苦労譚
・かわいいコックさん
・平凡な脇役Aは画面の片隅で躍る
・ハラペコTS(R18)
・イリアの世界
・理論屋転生
・まおうさまのははうえ
・魔道学園日記
「好き」な作品がこれでまず絞れました。
はい、不思議なことに、並べてみると人気だけど、似たような作品なら他にももっとあるじゃんっ思った方、いらっしゃると思います。
でも、違うんですよ。この作品たちは私にとって特別なんです。ありふれているように見えるかもしれないけど、なんか好きなんですよ!!!
さて……、なんで好きなんでしょう?
次のステップはなんで好きなの? を見つけることです。
私の好きな作品を何度も読み返す習性は、先述した通りです。よく読み返すシーンを抽出して、共通点をさがす……、そういうことをします。
あるいは、同じジャンルの作品と比べてみる。この作品とこの作品、何が決定的に違うのかしら。ギャンブル・クリエイターのときはVRMMO作品内で比較しましたね。当時ド嵌りしてたので、共通点を探すのは割と簡単な作業でした。
「生産シーンばっかりだな」、「主人公が身近な周囲を振り回す展開が多い」、「他者視点の回(掲示板)」なんかは画面が擦り切れてないの不思議だな、とかですね。
なんでこんなに好きなんだろう?
で、考えたわけです。読んでいる間に自分の心がどう反応しているか、いろんな言葉を当てはめてしっくりくるのを探します。
どうしてもわからないという方は、好きな作品の感想欄を覗いてみましょう。共感できる感想やなるほどと思える感想がヒントになるかもしれません。
そんな経緯を経て、「主人公の認識と周囲の認識のギャップから生じる笑い、優越感、期待感」とか「意図した方向や経路は辿らないけど結果的に主人公の得になる展開」とかが私の性癖なんだなって気づきました。
で、これを満たすのが掲示板回なので、掲示板回の働きをちょっと見てみましょう。
掲示板回がいかに素晴らしいのかを!!!
私大好きなんです掲示板回!!!!! 本編がないと成り立たないのが構造的欠陥だけど!!!
本当は先ほど紹介した作品の内容を引用してご紹介するのがいいのかなー、とは思うのですが、権利関係が怖いのでコピペはしません。
掲示板や他者視点の使い方は大雑把に二種類あります。もっとあるかもですが、私がしっくり言語化できているのはこの二つだけです。
・主人公をもちあげる。
掲示板の中の人がひたすら主人公をもちあげる。
「そうだろうそうだろう、そう思うよね! 世間もようやくそれを知ったか! まあ私は最初から知ってたけどね? あーっはっはっは!」みたいな鼻高々感!
完 全 に 麻 薬 で す 。
まあ、これは主人公が自分の評価を気にしておらず、かつ普段一人称で、一般的な共感性があんまりない(読者と主人公が分離している)作品じゃないと上手くいかないところがあります。
たとえば、普段からヒロインにおだてられてる内容と同じだとつまらないです。慣れちゃってますから。別方向からのおだて方がいいんです。
「主人公のいいとこもっと見てみたい! 別の方向から!」みたいな需要にこたえてくれてます。
主人公の視点では語られない部分が、「他人の視点から見たらやっぱりヤバいよね……」っていう推理が当たる楽しさや共感に変わるんです。たまんないですね!
主人公(や脇役)の掘り下げ的な役割もこなしてくれます。作者としてはホクホク。読者もニコニコ。
亜種として、主人公の行いが巡り巡っていいことに繋がる描写をすることで、「へー、主人公ってすごかったんだ……」な意外性や新鮮味なんかも演出できますね。
ギャンブル・クリエイターだと(VRMMOの生産系ならなんでもいいんですが)、主人公が本編で何気なく作った杖が掲示板回で「ヤバい性能の杖が売ってた! 生産者誰だ!?」などとモブたちを騒然とさせている回なんかがこの働きをこなしています。
・伏線として用い期待感を煽る。
作品の内部では主人公を話題にのぼらせないことで、「これから無名のすごい奴(=主人公)にお前たちはあっと驚かされるんだぜ!」っていう未来予想を読者にしてもらえます。
読者は「俺は誰が活躍するのか知ってるけどね」っていう優越感を抱くんです。
イベント前の掲示板での下馬評とか、運営のお知らせとかがそう。
一切主人公の話題は出しません。出してもいいけど、弱そうに装わせてね。
これから主人公が活躍できそうなイベントが発生するぞって感じを装うのが大事です。
読者の私からすると、もうわくわくが止まんないんですよ!
「主人公はどうやってこいつらを驚かせてくれるのかな? ああするのかなこうするのかな、作者さん、続きまだですか???」
で、私を含め読者は、作中のモブたちには言えないんですけど(画面の向こう側だからね)、感想は言えます。感想欄には秘密を共有している仲間しかいません。
作者さんを困らせるのをわかってても言っちゃう。楽しいから!
現実では口止めされたらさすがに話しませんよ? でも、秘密はしゃべってるときが一番楽しくないですか?
でね、感想返信で作者さんが困っているのを見るのも楽しいし、先の展開で予想が当たっても外れても楽しいんです。
ぼやっとした想像にしっくりくる順当な展開がきても興奮するし、当たったり採用されたらガッツポーズだし、ぜんぜん違う展開がきたり方向性はあってたけど斜め上だった系もテンション上がります。
結論として、作者さんは予定通りに書いてもいいし、感想欄見てこっちのが面白いなって思ったら採用していい。
そんなこんなで主人公と読者の間の「秘密」は読者を作品にグッと近づけてくれます。
他の作品(もちろん私の作品じゃない)でも掲示板回やちゃんねる系、他者視点は大人気ですからね!
ぜひ有効活用して供給してください。待ってます。
ただ、いくつか気をつけてほしいことがあります(※完全に個人の意見ですが)。
読者の展開予想を本編の展開に取り入れる場合は、アレンジを加えたりする必要がある場合があります。そのまま輸入は基本NG。
読者は作者に期待を寄せていますので、「自分の想像力程度は軽々超えるに違いない」と思ってます。だからそのまま採用されていると「この程度か……」って失望します。
アレンジは、結果か過程か、どちらかは自分で考えた方がいいでしょう。読者が予想していない、そこで得られるとは期待してなかった「その作品における定番の面白さ」を応用しておけば安パイだと思います。
読者の予想外を書く場合は、それが必然に見えるようにしておくことです。予想外の展開なら、主人公の特性を活かしたり、ありえそうなハプニングじゃないと読者は納得しません。
「は? そんなのありかよ(怒)」って冷めます。
読者はわがままなんです……。
でも、作者もわがままでいいんです。好きに書きましょう。