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【第三回】誰の文章だゲーム  作者: 誰文企画
2/5

ふたりめ

 ため息を吐きながら、再度手元の脚本に視線を戻す。あまりにも大雑把な内容と、あまりにも大味な演出。要約してしまえば『持ってる戦闘手段を観客に見せきってから大技で決着をつけてね』としか書かれていない。


 何よりも問題なのは、一番最後の部分。「覇王」の大魔術を真正面から受けるという部分だ。


「文化の違いを感じる……」


 大魔術というのは、一般的なものでもスケールや威力の点では最新鋭の攻城兵器に近い。当然、人間が生身で食らえば死ぬ。性質にもよるが葬式が挙げられるだけの死体が残るかどうかも怪しい所だ。

真剣勝負であれば撃たせないようにひたすら超接近戦を仕掛けるだろうし、観客に見せつけるのなら真正面から大技をぶつけて相殺する。少なくとも生まれ故郷である共和国ではそうだ。だいたい、そんな大技が対策もなく通るなんて、見てる観客も違和感を感じないのか?


「資料の残りは…… なんだこれ……」


 一枚めくるとマイクパフォーマンス用資料と銘打った、その実対戦相手の個人情報でしかないものがびっしり。もう一枚めくっても、さらにめくっても、もう一枚めくっての最後の一枚にまでそれが続いていた。

 目を通したのはほんの一部分だが、どう考えても人に見せていいものじゃないだろう。


「というか「覇王」って王族だよな? 演出家なんて辞めてスパイに転職した方が良いんじゃないかコイツ」


 そしてヘマして大魔法で死ね。悪態は心の中でだけ。

 どこに報道陣の目が有るか分からない以上、極端に「超者」のイメージが崩れる言動は慎まなければ。


 目を閉じて、自分の考えを纏める。観客が求めているのは「超者」と「覇王」のどちらが強いかという真剣勝負ではないのか? ――だが、演出上それは難しい。どちらが強いか分からないという程度なら良いが、極端な実力差や、相性の問題で一瞬で決着してしまっては会場がシラケてしまう。

 真剣勝負に近い立ち回りで観客に違和感を抱かせないようにする、というアプローチに慣れ過ぎていて、こちらのやり方に違和感が有るだけなのでは?


 強烈に過ぎるマイクパフォーマンスでお互いを煽り、本気じゃない訳が無いと観客に思わせた上で、空間を広く使う派手な立ち回りで見た目にも楽しませる。

 ダメだ! やっぱりわざわざ直撃もらう意味が分からん! というかフレスベルクではそれで盛り上がるのか!?


「これは実際にいろいろ見てみるほうが早いな」


 国を挙げた催しものだけに、戦闘形式も試合形式も違う闘技もたくさん行われている。

 トーナメントや総当たりで有れば、マイクを使う時間こそ少ないだろうがフレスベルクの選手同士の試合も有るはずだ。








 なるほど、おおむね理解した。まさかあそこまで煽るとは。実際に見なければ躊躇った結果煮え切らない挑発になってただろうな。

 隣にいた人から解説を聞けたのも大きい。相手の大技を避けたり小手先の技で回避したりというのはフレスベルクではちょっと「格好悪い」行いであるらしい。そして、受けきられたのなら返しの大技も潔く受けなければいけない。

 悪役選手になると敢えて返しの技を避けてブーイングをもらうということも有るのだとか熱弁された。チャンピオンと挑戦者っていう括りじゃないのか。というか『受けの美学』って何だよ。

 まあそういう文化圏で有るなら、大魔法を受けるという演出も理解できる。不安要素が有るとすれば、「覇王」は普段闘技場で観客のために戦う選手ではないことだが、まあまさか加減や演出を知らない訳じゃないだろう。

 だから大魔法を受ける算段を付けておくのは念のためだ。受ける瞬間に回復すればギリギリいけるか……? 妖術でダメージの一部を一時的に無かったことにするのもアリだな。

 ツインヘッドジーローチをも超えると言われた「超者」の生命力を見せてやろう。見せなくて済むのが一番だけどな。


「よしっ、後考えるべきはマイクパフォーマンスの内容だな」


 使える情報は多いが、系統を絞らなければとっ散らかったものになる。俺に文才が有るとは思わないが、ベストを尽くす!

 文化の違う二国の観客を双方盛り上がらせるというかつてない難題に、俺の花形闘士としてのプライドと情熱はかつてないほど燃え上がっていた。







 「覇王」のマイクパフォーマンスが終わった。見目麗しい美人が強気に単価を切って格好つける姿は非常に様になっていて、共和国の闘技場でも人気が出そうだ。共和国側のスタンドからも声援が飛んでいた。

 次は俺の番なんだが、ここでの最適なアンサーは?


「……ぷっ」

「?」

「ぶぁっはっはっはっはっはっはっはっはっはぁ! ひー、あっはっはっはっはっはっはっ」


 これが俺の答えだ! いかにも可笑しいとばかりに腹を抱えて笑い、ちょっと待ってっと掌を突きだしてさらに笑う。もちろん演技だ。普段はあまりしないタイプのパフォーマンスだが、一流の闘士としてこのくらいは朝飯前。

 おそらく「覇王」は共和国のやり方に合わせてマイクパフォーマンスをした。つまり俺がフレスベルクのやり方でマイクパフォーマンスを返して、二国間の交流イベントで有ることを印象付けるのが完璧っ!


「いや、ふふっ、すまないな。悪気が有った訳じゃないんだ、ひー、ひー…… ぷっ」


 誤解の無いよう言っておくと、高々三十秒笑ったくらいで息が上がるような鍛え方はしていない。これも挑発の一環だ。


「格好良くキメてる覇王様のお気に入りのデザートがプリンだということを思い出してしまってな。ぷっ、いや、プリンは美味しいもんなあ? ああ、安心してくれ、プリンなら祝勝会が流れて残念会になったとしても食べられると思うから……」

「な…… なにを……」

「それもぷっちんするやつが好きなんだって? いいよなぷっちんするプリン。もう「覇王」から「プリン王女」とかに二つ名変えたらどうだ? 似合うと思うぞ? プリン王女」


 共和国側のスタンドからどよめきが、フレスベルク王国側…… 長いし俗称でいいか。魔人国側のスタンドからは何故か歓声が上がる。

 すらっと背が高く、強者の風格を纏っている「覇王」に「プリン王女」なんていうあだ名が似合ってると本気で思ってる訳が無いが、他に良い煽り文句が浮かばなかったからなあ…… 俺は再びひとしきり笑いつつ相手の反応を待った。


「な、ならお主が負けたらお主も「超者」なんぞという大仰な名前は捨てて「でべそ太郎」に改名するがよかろう!」

「で、でべそ太郎……!」


 これ見よがしに肩を震わせる。もちろん怒りではなく笑いでだが。


「でべそ太郎っ、ははははっ。いやあ、流石王女様は言葉選びも優雅でいらっしゃる! でべそ……っ! あー、息が苦しい」


 魔人国側からの声援が止まらない。なんでだよ。煽られてるのお前らの国の代表だよな?


「ぐぬぬ……」


 ぐぬぬて。怒ってるアピールが古典的すぎないか。まあ普段は挑戦者をボコボコにするだけらしいから演出のレパートリーは少ないのかもな。


「王女様はお気に入りのひよこのぬいぐるみが無いと眠れないんだって? 今夜は存分にひよ子さんに慰めてもらったら良い。ああ、ひよこさんが血で汚れると可哀想だからちゃんと手加減してやるよ」


 そこでマイクをスタッフに返せば、会場が割れんばかりの歓声。……主に魔人国側のスタンドから。


「て、手加減!? 言うに事欠いて手加減じゃと!? もう許せん! 四肢を捥いだうえで全裸に向いて王城の見張り塔から逆さづりにしてくれるっ!!」


 褐色の肌でも分かるくらい真っ赤になった顔でとんでもない脅し文句を飛ばしてくる「覇王」。凄い名演技だ。これが演劇なら魔カデミー賞ものだぜ。

 脅し文句の内容も凄いぞ。 R18とR18G詰め合わせ~国際問題を添えて~ って感じだ。王族っていうからもう少しおしとやかな語彙なのかと思ってた。


 余裕たっぷりに舞台に上がる俺はまだ知らなかった。魔人国では決闘の形式の一つとして、お互いの名前を賭けるという形式が有ることを。演出家が酒の勢いで書いた脚本をそのまま提出したことを。それを一読した「覇王」が破り捨てて魔術で灰にしたことも。そして、無知の報いとして三日三晩生死の境をさまようことになることも……

続いてふたりめ。

これを書いたのは+−さんでした!

マイクパフォーマンスでのリリアナの語彙力の無さが可愛いですよね。

この後彼女の名前はプリン姫になってしまったのか……

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