一話
2ヶ月1投稿(しかも短い)
「リリエールよ、10日後にクルース国中央魔法学園へと入学するわけだが......何か聞きたい事、欲しい物等は無いか?」
とある世界、とある大陸のクルースというそれなりに大きな国。
その国内のとある伯爵家にて、30代前後の男性が言う。
「特に無いよ、父様」
男性からの質問に、10代よりほんの少し若い少女が答える。
彼女の名前は『リリエール・バース』
そして、男性の名前は『リグス・セスト・バース』
クルースのバース伯爵家の当主と長女である。
バース伯爵家は当主の夫婦と長男次男、長女次女の構成で年齢としては、長男>長女>次女>次男の順だ。
長男は13、次女は7、次男は3でリリエールは9となる。
先程話題に出たクルース国中央魔法学園は、入学と同じ年に10歳になる平民、貴族問わずの童子が入学する事が出来る。
「お前も今年で10になる。早いと言えば良いのか、やっとと言えば良いのか......」
「......」
「......まあ、お前は学園でも本ばかりを読むのだろう。交友関係は少しばかり心配だが、色々な事を学んで来い」
「......うん、わかってる」
彼女は物心ついた時には誰かに本を読んで貰い、字を覚えた時には自分から様々な本を読み耽る程の本好きであり、又本からの知識をほぼ全て理解していた。
周りは当然彼女を神童と呼び、将来を期待した。
だが彼女からしてみれば、それは出来て当然の事であり、逆にやり過ぎ無い様にする事の方が難しかった程だ。
(皆から、期待の視線を常日頃から感じるけど......今までやった大半の事は私から見て出来て当然だと思うし、それに......)
そう、彼女は......
(私、転生者だから)
彼女が自らを転生者であると認識したのは、3歳位の事。
前世ではちゃんと死んだと認識しているし、転生の際には女神とも会っている。
貰った特典は魔法の才能、それを活かす為の前準備として色々な知識を頭に詰め込んだ。
この世界の言語は意外と簡単だった。
何せ前世のカタカナを逆さにしただけの文字だったからだ。
まるで転生者に配慮したかの様だが、どうやらこの文字は昔むかしの遠い昔、最初の勇者なる人が広めた文字らしい。
最初の内は、文字が読め無いフリをするために、使用人の人に読んで貰って。
ある程度の期間で学習したと思わせる為に、簡単な本から一人で読み始めた。
幸い、お伽噺等も知りたかった為、絵本の様な物を読むのにも抵抗は無かった。
「......取り敢えずは、勇者の情報と記録集めかな」
歴代勇者はこの世界に文字だけでなく様々な知識や偉業を遺していったらしく、普段食べている物も何と無く前世に近い。
恐らく勇者は異世界転移者である。
勇者の知識を追って行けば、前世の知識を多用しても怪しまれなくなる筈だ。
「それにしても、すっかり女の子になったなあ」
彼女は所謂TS転生者である。
前世では男だったのだが、今現在は立ち振舞いも女になってしまった。
体が女である事に精神が引っ張られているのも原因ではあるが、主な原因は母親である『リディア・バース』に女性貴族としての教育をみっちりと受けさせられたからだろう。
「......まあ、TSしても違和感が無くなったのは良い事だし」
ともあれ転生者リリエールの人生はこれからである。
どうせ誰も読まないから好きな様に書きます