プロローグ
…… さむっっ。
え?
どこ?
痛っっ。
あぁ…
思い出した…
買い物してたら地震がおきて、店の外に出ようと思ってるうちに上から何かが落ちてきて…
最悪じゃん。
それで、私は今、なにかに挟まってるわけか…。
全然動けない。
左手は見えるけど、右肩も腰辺りも押さえつけられてるみたいにまるで動けないし、なにより、めちゃくちゃ痛い。
それより、パパとラムちゃんは無事??
あぁ…一人で買い物なんて来なきゃ良かった…。
気持ち悪い…。
吐きそうだし、気が遠くなってきた…。
寝ゲロしたらどうしよう。
薄暗い潰れた建物の中、回りからうめき声や、助けを求める声は聞こえてくる。
少し離れた場所からも悲鳴や怒号。
こりゃあ、そうとう大きな地震だったんだね。
ラムちゃん、大丈夫かな…。
ハスキー犬のラムちゃん、メス7才。
今の旦那とは42歳の時に再婚して、子供は作らないことにした代わりに、ラムちゃんを我が子同然に大事にしてきた。
大きな体のくせに、小心者のラムちゃん。
ひとりぼっちの時にこんな大きな地震、どんなに怖がっていることか。
パパが家にいるときで良かった。
って、犬じゃなくったって怖いわっ。
中野 美咲 49歳
これで人生 The END ??
あっ!
ヤバい!
バイブ処分しとけば良かった。
あと…ずっと隠し持っていた、元カレの写真。
あと、あと…いや、もう考えても仕方ないな。
死後発見されて恥ずかしいとか、ヤバいものってやっぱり出来ちゃうんだなぁ。
って、もしかしたら、マンションも倒壊してて私のモノだってわからなくなってるかもしれないじゃん。
薄れゆく意識の中で、そんなことを考えていたのでした。