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第八七回 弱点


「……皆殺しだなんて、物騒な神父だな」


「いや、神父だからこそだ。そのローブの色から漂う独特の気配……久々に楽しめそうだ……」


「……」


 魔女なだけあって、やたらと好戦的な神父だ。やるしかないのか……。


「兄貴! あっしが囮になりやす!」


 馬車からソースケが下りてこようとしてきたので、俺は手で制した。


「いや、ソースケ、大丈夫だから俺に任せてくれ」


「協力くらいさせてほしいっす! 相手はあの魔女っすよ!?」


「魔女とはいえ、神父だ。俺一人でも対抗できる」


「あ、兄貴……わかったっすよ……」


 すごすごと戻っていくソースケ。あいつの気持ちはありがたいが、どうせやるなら一対一でやりたい気持ちが強い。自惚れているつもりは毛頭ないが、俺は前代未聞のジョブ反魔師なんだ。ここまで来たら、自信を持ってやり合うつもりだ。


「神父を舐めてもらっては困る。行くぞ!《エル》……」


 魔女の神父が手を掲げてからまもなく、大きな光球が迫ってきた。素魔法とはいえ、古代言語付きだから試しに食らってやるつもりはない。


「《カウンターボール》」


 俺は輝くダーククリスタルロッドで光球を弾き返す。


「な、何っ……?」


「《エレメンタルチェンジ》」


 相手が目を丸くする中、さらにぶつかる直前で属性を変化させてやった。神父にはそっちのほうが効きそうだからな。


「ぐおおっ……!」


 胸を押さえてひざまずく魔女の神父。やはり相当のダメージになったらしい。


「……ハハッ。只者じゃないとは思っていたが、まさかここまでとはな……。魔法を跳ね返すだけでも驚きだというのに、属性まで変えてくるとは。それも直前で……」


「……これで満足か?」


「……いや、まだだ。次は本気を出す……」


「え……」


 神父がニヤリと笑って立ち上がると、すぐに大きな光球を物凄い勢いで連発してくる。


「……くっ……」


 あまりにも高スピードで撃ってくるため、俺は《カウンターボール》で跳ね返すのがやっとだった。属性を変える暇もない。しかも、光球を受けてもやつはまったくダメージを受けてない様子。神父なだけあって、光属性には滅法強いのかもしれない。それも、魔女だからな……。


「それそれっ! どうした!? 跳ね返すだけか!?」


「……」


 普通なら、これだけ大きな光球を飛ばし続けたらすぐに精神力が尽きるはずだが、構わず連発してくるし勢いも落ちる気配がない。やはり、ただの神父とはいえ魔女なだけあるな。恐るべし……。


 それでも、徐々に間隔が緩くなってきて、さすがに精神力がなくなってきたかと思いきや、急にまた勢いを戻してきた。どうやら緩急をつけて油断させようとしてきたらしい。


 このままじゃ埒が明かないのでアレを使うか……。


「《ダークフォレスト》」


「……ぬっ!?」


 暗い森の中、さすがに光球の命中精度が落ちてきたところで、闇色の《カウンターボール》連発で仕留めてやる。


「うぐおぉぉっ!」


 立て続けに闇の球を受けた神父が苦悶の表情でひざまずくのがはっきりとわかる。《ダークフォレスト》のレベルが2になっているのは既に確認していたが、さらに一つ上がったっぽいな……。


 しかし、苦しそうな中でも妙に嬉しそうに口元を吊り上げてるところが怖い。まだやる気なんだろうか……。


「……参った。こりゃ本物だ。まさか人間に負けるとはな。これが勇者ってやつか。ハハッ……」


「――ルドお兄様、お戯れを……」


「……」


 え、この声はまさか……。


「ひいぃっ!」


 森が消えて、ラズエルの悲鳴が聞こえてくる。それもそのはずで、魔女のリュカが俺たちのすぐ側に立っていた。いつの間に……。


「お、リュカ、帰ってきてたのか。具合は良さそうだな」


「うん。しばらくは持つと思う。しばらくは、ね……」


 ルドお兄様とか言ってたし、兄妹ってことか。


「それよりリュカ、お前が忌み嫌う人間ではあるが、彼を殺さないでほしい。面白いやつなんだ……」


「知ってる」


「え、リュカの知り合いなのか……?」


「うん。ね? コーちゃん」


「あ、ああ……」


 リュカに微笑まれてびくっとなってしまった。情けないかもしれないが、ちょっとした仕草でも迫力あるんだこれが……。


「こりゃ驚いた。妹のリュカまで手懐けるとは……」


「ルドお兄様、死にたい?」


「……い、いえ、まだ死にたくないです……」


「よろしい」


「……」


 どうやらこの神父、妹の尻に敷かれてるらしい……。

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