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第七一回 反


「……」


 ラズエルのやつ、すっかり大人しくなってしまった。


 あれだけ堂々と先頭を歩いてたのが、今じゃ後方で杖に寄りかかるようにしてとぼとぼと歩いている。魔女のリュカに力の差を見せつけられたからだろうが、その分敵の魔法攻撃は俺に集中し、ほとんど《マジックキャンセル》で受け止める格好になっていた。


 もちろん、物理で倒せる敵はアトリに任せることにしている。それはいいんだが、新しい術のレベルが3になって無効化しやすくなったとはいえ、きりがなく攻撃されるのでイライラしていた。素魔法で何匹か撃退したがきりがなくて、《ダークフォレスト》も一度使ったが、聖所の中央付近まで来たところで切れてしまった。常時こんなのを使ってたら精神力が持たない。


 このままじゃ、神殿から出る頃には夜になっているだろう。やつら、俺が無抵抗だからってやりたい放題だ……。


「ちょっと、ラズエル、あんたも仕事しなさいよねっ」


「してくださらない……?」


「するのだー!」


 この状況を見かねたのか、シャイルたちが援護射撃をしてくれた。


「……わ、我は……その、具合が悪くて……」


「じゃあ、あんたはこれからブルーオーガじゃなくて、ブルーフェイスねっ」


「シャイル。それいいですわね。この臆病者にはぴったりですことよ……。オーッホッホッホ!」


「やーいやーい! 青い鬼さんじゃなくてただのブルーフェイスなのだあ!」


「「「キャッキャッ」」」


「……ぬぐぐ……」


 悔しそうなラズエルだったが、それで少しは元気が出たのか歩くスピードが速くなり、その結果俺の出番もかなり減って楽になった。


「――……ん?」


 聖所を抜けて大分余裕が出てきたので、ブライトマンの魔法攻撃を杖で受け止めたあと、手持無沙汰で軽く杖を動かしてたら、呼応するかのように杖から光球が飛んでいった。


 ……これは、まさか……。俺は渦状の通路の半ばで立ち止まった。


「みんな、待ってくれ。ちょっと確認したい。ラズエルも、しばらく止まっててくれ」


「は、はっ。コーゾーどのっ」


 恐縮した様子で、ビシッと敬礼するラズエル。随分としおらしくなったものだ。凄い変わりようだな……っと、それどころじゃなかった。急いで精神鏡を確認する




 名前:宮下光蔵


 種族:人間


 称号:勇者


 ジョブ:反魔師


 所持属性魔法:地レベル3 火レベル3 水レベル3 風レベル3 無レベル3 闇レベル3 光レベル3


 習得術:《ダークフォレスト》レベル1

     《マジックキャンセル》レベル3

     《???》レベル1


 固有能力:全ての魔法に対する耐性80%




 ……やはりそうだ。また一つ習得している。杖が輝いていたことと、攻撃手段が欲しいと思っていた矢先にこれだから、《マジックキャンセル》に関連するもので、攻撃意識が術習得のトリガーになったのは間違いなさそうだ。


「ターニャ、鑑定を頼む」


「はーい! ……んんっ……」


「コーゾー様、また覚えたんですか?」


「「「またー?」」」


「ああ。多分、今回はレベルが上がったからっていうより、意識の問題っぽい」


 攻撃したいと思っていなければ覚えなかったわけだ。そう考えると、敵の攻撃を一方的に受け続けることで鬱憤が溜まっていたのが怪我の功名になった形だ。忙しい中、やり返したいと思いながら《マジックキャンセル》をしてたからな……。


「わかりました!《カウンターボール》っていうみたいです!」


「おお……効果は?」


「えっと……光ってる間……受けた魔法を……んと……凝縮して、攻撃魔法として跳ね返せるそうです!」


「やはりそうか……」


 俺の思った通りだ。カウンター攻撃ではあるものの、相手の魔法を利用するわけで、その分自分の精神力を使わなくてよさそうなのがいい。素魔法と違って術を凝縮しているわけだから威力もありそうだ。


「ありがとう、ターニャ」


「じ、自分こそお役に立てて嬉しいです――」


「――待つのだっ! あ!」


「――わわっ!」


「おっと……」


 シャイルたちを追いかけていたヤファがターニャがぶつかり、倒れそうになったところを俺が受け止めたわけだが、その結果俺とターニャが深く抱き合う格好になった。


「こ、コーゾーさん……」


 ターニャが赤い顔でぼんやりと俺を見上げていた。や、やってしまった……。でもこれはただの事故だ。そう思って離れた途端、パンッという鋭い音が響いて、見るとアトリがターニャの頬を張っていた。


「……あう……?」


「……あ、アトリ、ターニャは何も悪くない。今のは倒れそうになったのを受け止めただけで……」


「……そうなんですね。ごめんなさい、ターニャ。私の頬を張ってください……」


「い、いえっ、大丈夫ですっ!」


「……うっ?」


 背中に抱き付かれた感覚がしたと思ったら、アトリだった。


「……コーゾー様、私も倒れそうになったので、事故ですっ。なので、しばらくこのままでお願いします……」


「……アトリ……」


「あたちもするっ」


「わたくしも……!」


「あたいも!」


「我も……」


「……」


 ラズエルもか……。なんだか頭痛が痛くなってきた。さらに悪化するという意味で……。

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