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第五六回 仲良し


 名前:宮下光蔵


 種族:人間


 称号:勇者


 ジョブ:反魔師


 所持属性魔法:地レベル1 火レベル1 水レベル1 風レベル1 無レベル1 闇レベル1 光レベル1


 習得術:なし


 固有能力:全ての魔法に対する耐性80%




「……」


 みんなとレストランで夕食を済ませたあと、宿の一室に戻って精神鏡を覗いてみたわけだが、アトリに言われていた通り、ジョブチェンジによって魔法のレベルが全部リセットされていた。


 見事にレベル1が並んでる……。ただ、俺の場合上げやすいしそこまで問題ないか。ジョブのところが埋まったからあとは習得術だな。どんなものを覚えられるか、今から楽しみだ。さすがに今日は疲れてるから、ゆっくり休んで明日から上げる予定ではあるが……。


 ……ん? みんなどうせ覗き込んできているかと思いきや、部屋の左右の片隅で何やら小声でごにょごにょと話し合ってる。アトリはターニャと、シャイルたちはいつものように三人で固まってる。何を話してるんだろう……? 精神鏡のほうを見つつ、まずはアトリたちに少し近寄って耳を澄ませてみる。


「……うふふ。それにしても、コーゾー様のジョブ授与の儀式、まるで結婚式みたいでしたね……」


「ですねぇー。結婚なんて憧れちゃいますっ」


「……でも私、チビだしぺったんこだしお子様みたいですから、結婚には縁がなさそうです……」


「そんなことないですよっ。そういうのが好きな殿方もいますっ。ロリコンの方とか……!」


「……な、なるほど……。コーゾー様も、そうだったらいいですね……な、なんて……じょ、冗談です。聞かなかったことにしてください……」


「あははっ。アトリさん、顔真っ赤ですよっ」


「……もー……」


「……」


 思ったより際どい話をしてるな……。耳に毒になりそうだからこれ以上聞くのはやめておこう……。さて、次はシャイルたちだ。


「……で、誰に賭けるの? あたちは、魔女のリュカに賭けるっ。次点はもちろんあたちっ」


 あれ……なんでシャイルが魔女の名前を知ってるんだ? さては、起きてて聞いてたか……。


「……コーゾー様の真面目な性格からいって、結婚するのはアトリ様に決まってます。次点でわたくしです」


「アトリはわかるけど、次点であんたはないないっ」


「まったくないのだー」


「そんな風に決めつけてると、フラグになりますわよ? オーッホッホッホ!」


「……」


 俺が誰と結婚するか賭けてるのか。こっちも際どいなあ……。


「「ヤファは?」」


「ターニャなのだ! 次点であたいー!」


「ターニャかあ。大穴ね。ヤファは大穴っていうより崖下の巣穴だけど」


「崖下に飛び込む殿方はいませんわね……」


「「きゃっきゃっ」」


「ガルルッ……」


「「ひー!」」


 見事に落ちがついたところで、俺は自分の定位置に戻った。なんか、どっと疲れた……。




 ◆ ◆ ◆




「ぶ、無礼者! 私を誰だと思っている!?」


「……罪を犯せば誰であろうと関係ない」


 商都リンデンネルクの聖堂内、司教シーケルが槍を手にした重装備の憲兵たちに囲まれていた。その一人、唯一青いローブに身を包み、ブルークリスタルロッドを手にする青いセミロングヘアの少女が涼し気に笑う。


 彼女は結界術師の中でも指折りの名人として知られているラズエルという少女で、商都の治安維持部隊の隊長として誰であろうと厳しく罰するため、美麗な容姿でありながらブルーオーガと呼ばれて恐れられていた。


「わ、私が何をしたというのだ!」


「調べはついている。お前の部下が全てを吐いた。ルコカ村の件でな……」


「……な、な……」


「尋問するゆえ来てもらおうか。この者を捕えよ」


「「「「「はっ!」」」」」


「や、止めろ! 助けてくれ! ロエルッ! ミリムウゥ! 私はここで終わるわけにはいかない! 私は教皇になるのだ! 教皇になるのだぞおおおぉぉっ!」


「「……」」


 他人の振りをするロエルとミリム。シーケルを捕縛したラズエルと憲兵たちが立ち去ると、二人はお互いの顔を見合って噴き出すように笑った。


「……策士策に溺れるってのはこのことだな。神父を殺そうとした重罪人のシーケルに比べたら、うざいおっさんや小娘を殺そうとしてる俺たちなんて可愛いもんだぜ」


「ですねえ。それにしてもお、お雑魚さんたちが刺客を捕まえるなんてえ、考えられなかったですう」


「……だな。けど、あいつらだけでやれるとは思えねーし、誰か協力者がいるんじゃね?」


「お雑魚さん同士の戦いとはいってもお、ミリムもそう思いますう」


「それで、どうする? ここで待つか? シーケルが捕まったし、ここでこれ以上騒ぎを起こさないほうがよさそうだが……」


「ですねえ。そろそろ出発したほうがいいと思いますう」


「……巻き込まれて選定の儀式に間に合わなくなったら本末転倒だしな。……まー、行く場所は同じだからいずれは会えるわけで、今は躍らせておくか」


「それがいいですう」


「ユージ様!? どこ!? どこなのおぉぉ!? 早く出てきなさいよコラアァッ!」


 血眼で雄士を探し回るセリア。その相手の雄士はすぐ後ろにいたが、彼女が気付くことはなかった。雄士はセリアの後ろが一番安全だと気付いたのだった……。


「……どこに行ったの……クスン……」


 だが、彼女が徒歩で鏡の前を通ったことでついに露見することになる。鏡に映ったセリアの満面の笑顔と雄士の恐怖で引きつった顔は、最早人間のものではなかった。


「……みーつけた! 私の王子様ああぁぁぁっ!」


「ぎっ……ぎゃああぁぁぁああああああああっ!」


「「……はあ」」


 ロエルとミリムの溜息は今日もタイミングがぴったり合っていた……。

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