表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

101/112

第百一回 慕情


 広間にいるのが魔女でないと判明し、ソースケに参加したいと言われたが、5%の壁を破られ続けて不吉ということで、全会一致で不参加となった。


 相手が人間とはいえ召喚師は威力が高いし、もし当たったら即死する可能性もあるからな。魔物も出るしラズエルには味方を守らせるとして、結局俺が一人でやることになった。


「それじゃ、行ってくる。《マジックキャンセル》――」


 小声で呟き、短い階段を駆け上がって広間に入る。


 人影が目の前まできたと思ったときには、杖に重い感触が伝わってきた。


「こ、これは……」


 間違いない。闇の精霊シャドウだ。ってことは……。俺は杖の輝きが消えかかってることに気付いて、《ダークフォレスト》で周囲を暗い森に変えると、素の風魔法を自分にかけて後退した。


「……あ、あるぇ、どこぉ?」


「……」


 案の定、召喚師とシャドウは俺を見失ってる様子。


「お前……ヒカリじゃないか」


「あ、その声、コーゾー君!?」


「……何をしてるんだ?」


「何って、冒険者殺しだよっ」


「……」


 やっぱりヒカリは真っ黒だった……。


「なんてことしてるんだ……。選定の儀式に間に合わなくなったらどうする気なんだ……?」


「大丈夫、まだギリギリ間に合うよ! それにね、もう少し遊びたいの……。だからお願い。死んでっ!」


「……」


 わかってはいたが知り合いでも容赦なしか。彼女の策略のおかげでリュカに会えたとはいえ、お仕置きが必要だな……。


「見えたっ! 食べちゃって!」


《ダークフォレスト》が解けて猛然と向かってきたシャドウに対し、《カウンターボール》で弾き返す。精霊なためか《エレメンタルチェンジ》はできなかったが、巨大な闇の塊にして、ヒカリごと壁にぶつけてやった。


「ぎゃふっ!」


 ……って、あれ? 悲鳴とともに消えた……と思ったら、潰れた闇の塊が壁を横に移動していて、そこからヒカリが顔だけを出してきた。まさか、素魔法に変えたはずのシャドウが元に戻ったというのか。やはり精霊というだけあって変換できなかったし、すぐに復元するのかもしれない……。


「……いたた。コーゾー君、変な術を使ってきたねっ。今の効いたよぉ。僕、君のこと好きになっちゃったかも……。次に会うときまでに対策考えておくから、覚悟しててっ!」


「……」


 ヒカリが再び影と一体化して、笑い声とともにどこかに行ってしまった。一応警戒して待つも、出てくる気配はない。アトリたちもこっちに来たし、もう安心してもよさそうだな……。


「コーゾー様……終わったのですね」


「ああ、アトリ、もう大丈夫だ……」


「……兄貴、お疲れっす。召喚師って聞いて、もしやと思ってたら……」


 下で待ってるようには言ったが、さすがにソースケは声でわかるか……。


「勇者だけ狙うかと思ったけど、冒険者までやるとはな……」


「ありゃ完全なサイコパスってやつで、殺しが好きでしょうがないんすよ。今度見つけたらただじゃおかねえっすから……」


 サイコパスか……。確かに遊び感覚で殺してるっぽいしな。悪意を感じないところが逆に怖い。


「サイコパスといえば、シャイルのことですわね」


「リーゼのことでしょ」


「二人ともなのだー」


「「ガオッ!」」


「ひー!」


 広間はすっかりシャイルたちの遊び場になってしまった……。


「さあ、先に進もうか」


「……あの、コーゾー様……」


「ん、どうした? アトリ――」


「――好きです、コーゾー様、お慕いしております……」


「……え?」


 一瞬、時間が止まるかと思う。シャイルたちまで黙り込んでしまった。


「……もうわかっているとは思いましたが、この先どうなるかもわかりませんので言わなければと……」


「アトリ……俺……」


「大丈夫です。私の片思いで構いません。ただ思いを伝えられただけでも……」


 暴走した魔女相手に全滅なんてことも考えられるわけだから、アトリの言ってることもよくわかる。王の間にあるという薬草を採取し、調合して飲む前に狂ってしまえば、俺たちはとんでもない相手と戦うことになるんだ……。


「こんな俺を好きになってもらって、こっちが悪いくらいだ」


「え……それじゃ……」


 アトリの顔がパッと明るくなるのが逆に辛い。


「でも、まだ自分の気持ちがよくわからないから……」


「……ですよね。リュカのこともありますし……」


「ごめん……」


「いえ、謝らないでください。誰を選ぶかはコーゾー様の自由ですから……」


「……」


 アトリ、顔は笑ってるがまた目が死んでしまった。こういうとき、アトリを選べない自分が悔しい……。


「……兄貴、さっさと行きやしょう……」


「……ん……って!」


 少し離れたところにいるソースケの周りに人だかりができてると思いきや、ミイラに囲まれていた。これだけの数に襲われてるのに当たらないなんて、さすが95%も回避するだけある。それにしても、一様に恨めしそうな顔をしていてまるで配下のようだ……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちらの投票もよろしくお願いします。
小説家になろう 勝手にランキング

cont_access.php?citi_cont_id=777296142&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ