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世界の秘密?

 じゃあまず、軽くどういう経緯で私達がその場所にたどり着いたのかを説明するっスね。


 ……おぉ。メルクさん、メモ帳を構えるのが早い……。見習わないとですね……。


 っと、迷妄機関ビジョン・ダヴァーニでの話っスね。

えっと、まず私達はそのワールドの3Fで目覚めたっス。

辺りに棺桶が沢山置かれていて、扉が開いているものもあれば開いていないものもあるような場所でした。


 で、そこで目覚めたのは私だけじゃなかったっス。

イグニスさんにとらんぱ三号さん、バーチャルアイドルの二人と……『霊園リュミエール』で死んだ四人がここへ来ていたんスよ。


 で、ちょっと話はズレますが不思議なことが一つ。

あの後、アリスさんはオグロさんと団長さんに助けられた、そう言ってたっスよね?

結局あの二人はロンリさんに倒されたんス。なのに、何故か私達の居た場所へは来ていなかったそうなんですよ。


 ま、その辺の考察は後に回すっスね。

とりあえず私達はその場所から出て、落ち着ける場所を探すことにしたんス。

近くに扉を見つけた――というよりはそれしか出口が無かったのでそこから出ることにしたんですけど。


 まあ、出てみた結果物凄い景色の場所に出たんです。

あ、これが私達の見つけた凄いものじゃないっスよ?とにかく景色が圧巻、ってだけっス。特に世界の秘密とかには関係なさそうなんで、楽しみを奪うことにならないように黙っておくことにしました。


 で、どうにか私達はその場所から移動することに成功したんス。

そしたら今度は通路みたいな景色のところにたどり着きまして。


 そこで始めて遭遇したモンスターを私達は軽々撃破したんスよ。まあ未来が見える人が居るんで当然っちゃ当然なんですけども。

そしたら幽霊みたいな人?が私達を手招きしてるんですよね。

かなり危なそうだったんスけど、まあ行くじゃないっスか。

いやというか凄い気になるじゃないっスかそういうの。という訳で行くことにしたんスよ。


 闘技大会用の素材集めで一度来たことがある、ってイグニスさんが言ってたんでアリスさんももう知ってると思うんスけど、《レヴォルト》って街に辿り着いたんですよね。

で、そこで見たものに問題があって。


 そうそうそれっスよ!色んなエリアの映像が映ってる奴!あの、中央の巨大な塔の周りのモニターに映ってる奴っス!

で、それが一番の問題だったんですよ!


 あの映像、最初見たとき物凄い違和感があったんスよ。

正直私もなんで違和感を感じたかっていうのは分からなかったんスけど、しばらく考えてやっと分かったんス。


 ――あの映像、“種族の初期ワールド”が映ってないんスよ。


 ……お、流石メルクさん。何か勘付いたみたいっスね。

そうです。『霊園リュミエール』や『虹の一端』といった、最初に行くことのできないワールドしか映ってなかったんですよ。

……いやまあ、まだ初期ワールドは未開拓な場所も多いっス。でも初期ワールドと似た雰囲気のある映像がどこにも無かったんです。


 そこで私は考えたんス。迷妄機関ビジョン・ダヴァーニは……何らかの理由で最初に行けるワールドの映像を流すことができないんじゃないか、と。

だっておかしいっスよね?遺跡とか、天国みたいな場所とか、ほんと色んな場所の映像が映っているのに初期ワールドっぽい雰囲気の映像がないなんて。


 あぁまあ、確かにゲーム的な“チラ見せ”っていう役割を考えるのならそれは正しいっス。でもNHOですからね……。何かしらの意図を感じざるを得なかったんス。


 ……まあ、この考えにも少しだけ矛盾があるんスよ。

その、『真なる原風景(インサイドザイン)』だけは映ってたんです。

私もそう考えた後すぐそのことに気づいて、やっぱり違うっスか~なんて思ってたんですけど。


 その時、電流がビビッと来たっス。

真なる原風景(インサイドザイン)、あそこちょっと変な特徴あったっスよね?

いやアリスさんが知ってるかどうかは微妙な特徴なんですけど。


 えっと……じゃあ言うっスね。

真なる原風景(インサイドザイン)って、“モニュメントが何故か登録できない”んですよ。

ちなみに、その特徴があるワールドはそこ以外に霊園リュミエールと虹の一端だけっス。


 っスから、私は考えたんス。迷妄機関ビジョン・ダヴァーニはモニュメントを登録できないワールドの映像しか入手できない、と。


 それにっスね。

私、レヴォルトで幽霊達やあの幽霊のトップっぽい二人に色々と話を聞いてみたんです。

で、その結果なんスけど……。


 まず、真なる原風景(インサイドザイン)を除いた初期ワールドについての話っス。

そしたら「そんな場所なんて知らない」、という答えが返ってきたんスよ。


 で、次に虹の一端と霊園リュミエールについての話。

これについては色々と話が返ってきたっス。

例えば、虹の一端なら「あの場所から水を手に入れている」。

霊園リュミエールなら「そこから霊体の基礎を手に入れた」。


 そして最後に真なる原風景(インサイドザイン)について。

これに関しては、どういう訳か住民の間でタブー扱いされているらしいっス。

反応を見るに多分知ってるらしいんスけど、話を聞くことはできなかったっス。


 まあこの辺りのことから判断するに、幽霊が知ってるワールドは映像を映すことができて、幽霊の知らないワールドは映像を映すことができない……んだと思うっス。


 で、じゃあどうして幽霊が知ってるワールドと知らないワールドの二つがあるのかって問題っスよね。

そこで私は仮説を立てたっス。


 その名も……別世界仮説っス!


 はい。

名前通り、NHOにはいくつかの世界があるんじゃないかっていう仮説っス。


 今のところ、この仮説の中には三つ世界が存在してるっス。


 一つ目が真なる原風景(インサイドザイン)除く初期ワールドで、二つ目が迷妄機関ビジョン・ダヴァーニと、虹の一端、霊園リュミエール、そして真なる原風景(インサイドザイン)のモニュメントに登録できないワールド。

そして三つ目が、原初の平原一帯っス。


 ちょっと三つ目の世界は説明が長くなるので後にするんスけど、一つ目の世界と二つ目の世界のワールドは一ワールドにつき一つ、相互に繋がっているものがあるっス。

例えば『霊園リュミエール』は『名画テネーブル』に、と言った具合に。

だからその間で移動できた、ってことになるっス。その移動ルートこそが年表画面で出てきた「隠し通路」だと思うんスよ。


 ……で、っス。

じゃあどうして原初の平原一帯が三つ目の世界に分類したかなんスけど。

これは、錬金術の形相継承について学んだ時のあの会話があったからっス。


 フリップさんとフロップさん。あの妖精の二人。覚えてるっスか?

……あ、良かったっス。

あの時、原初の平原の《アリア》にある錬金棟に来てくれないかって私尋ねたっスよね。


 でも、返答は「できない」っス。

そして、「ヘルメスならできるかもしれない」とも言ってたっスよね。


 多分、あの二人がどうしても行くことができない理由は……原初の平原一帯が別の世界にあるから、だと思うんスよ。

でも、私達プレイヤーは“モニュメント”を使うことで世界間を越えてワープできる。

ただし現状二つ目の世界には何らかの事情でワープできないみたいっスけど。


 じゃあどうしてヘルメスなら行けるのか、って話っスけど……。

そもそも、ヘルメスって名前自体かなり色んな場所で出てきてたっスよね。


 まず一つ目の世界のエルフの初期ワールド『大樹海』、フリップさんとフロップさんとの会話。

次に二つ目の世界、霊園リュミエールで見つけた巨大な墓。

最後に三つ目の世界、『逆転湖ルラックホール』でアリスさんが体験した、『錬金都市プラハ』についてのヘルメスさんの録音データ。


 これらのことを踏まえるに、多分ヘルメスさんは世界を行き来することのできる存在だったんだろうと考察できるっス。

つまり錬金術を極めれば世界を移動できる、ということにもなるっスけど。


 以上がNHOの世界観だと思われるっス!どうっスか!?



――――


アリス▽


――――


「以上がNHOの世界観だと思われるっス!どうっスか!?」


 アイナさんは鼻息荒くそう語った。

確かに筋は通ってるような気がするけど、でもなんというか……。

何か違う気がする。気がする、というだけだけども。

どこかに矛盾があるような感じがするんだよね……。


「確かに今までの経験からすればおかしくはないですね。ですが……」


 メルクは顎に手をやって考え込む。


「で、ですがっスか?」


「私もよく分からないんですけど、多分この説は何かを見落としている……ような気がします」


 メルクはそう言い放った。

おおう、私も思ってたっちゃ思ってたけどざっくりいくね、メルク……。

いや、でも中の人のことを考えたらおかしくはないか。


「分かったっス。再検討します。具体的にどの辺がおかしかったとか、教えていただけると嬉しいんスけど」


「……やはり、迷妄機関ビジョン・ダヴァーニが気になります。二つ目の世界にあるのであれば、そこだけモニュメント登録が可能というのはおかしいと思いますし。それに、真なる原風景(インサイドザイン)からそこへ移動した際に「隠し通路」という単語が出てきました」


「なるほど……やっぱりそこ二つがネックっスか」


 二人はそのまま俯いて考え込み始めた。

とりあえず、私はアイナさんの説が正しいとしてみる。

わざわざその話をした、ということはきっと何かしら繋がるものがあるからだろう。


 まず、本当に正しかったのなら浮上する新たな謎は二つだ。

まず一つ、ヘルメスとは一体何者なのか。

錬金都市プラハに加え、本当にアイナさんの話が正しければ世界間の移動もできる。多分、ヘルメスさんが錬金術師の最高到達点であることは確実だろうから……あれ?もしかして錬金術師ってかなり凄い職業じゃない?


 ……一旦それは置いておこう。そして次に出てくる二つ目の謎は、プレイヤーとモニュメントとは一体何なのか、ということだ。

確か、結構前にシエルさんにモニュメントでワープしてもらおうと思ったが結局できなかった覚えがある。

多分、プレイヤーのみに使える機能なんだろうけれど。一体どういう原理なんだ?


 というか、結局謎が出てきただけじゃんこれ。

私はこの話をどうしてしたのかアイナさんに尋ねてみることにした。


「で、結局この話何でしたんですか?」


「え?あぁ、錬金術を一杯頑張って欲しいなって思って。だってほら、錬金術を頑張ったら世界を移動できるかもしれないんスよ。ってことはつまり錬金棟に錬金術ができる教師を連れてこられるってことっスよね」


「え?まあそうだけど……」


 確かにそうだ。

だけど、それで何かストーリーが進むのかな?

……私はとりあえずアイナさんの次の言葉を待つことにした。


「ほら、錬金棟ってかわいそうじゃないっスか。ずっとシエルさんとパラケルススさんと他何人かっていう小さな生徒だけでやりくりしてて。一応来るプレイヤーは増えたけど、それでも錬金術を学びに来るNPCは全く増えてないんスよ……」


 アイナさんは瞳をうるうるとさせる。

……。全然ストーリーとか関係無かった。

というか何か、この人錬金棟にかなり感情移入してない?前からこんな人だったっけ?


「でも!すごい錬金術のできる教師を呼べばきっと……!他の棟に負けないくらい立派に成長すること間違いなしっス!」


 アイナさんは手をぐっと握る。


「錬金棟の近くにある魔法棟は専用の校舎まで用意されて物凄い煌びやかに!豪華に!なっているというのに……錬金棟はボロボロの校舎の一教室だけ当てられているなんて!悲しい話だと思わないっスか!?」


 いや別に思わないです。……よし、アイナさんは放っておこう。

と、いうか。横に居たイグニスさんが何か言いたそうな表情してるんだけど、どうしたんだろうか。


「イグニスさん、どうしたんですか?」


「……あ、顔に出ていたか?いや、ちょっとアリスとメルクに伝えたいことがあるんだ」


「えっと……何ですか?」


「種族人魚の初期ワールドに『渡津海島ブルーホール』というマップがあるのは知っているだろう?」


 渡津海島ブルーホールね。昔に何回か素材集めに行ったことがある。

そこは周りを海に囲まれたドーナツ状の巨大な島のあるワールドだ。

内部の湖と外側の海。リゾート気分になれてとても良い場所なのだけれど、そこがどうかしたんだろうか。


「夏休みの大規模イベントがそこで行われている。アリスは知っているか?」


「いや、知りませんでした。どんなイベントなんですか?」


「詳しいことは公式がしっかりと告知していないので分からないが、渡津海島ブルーホールでの獲得経験値量が増えたり、これまでには見られなかったワールドクエストが発生したりと……とりあえず渡津海島ブルーホールで物凄い何かが起こる、というイベントだそうだ」


 ……私が居ない間にそんなイベントがあったのか。

くっ、できることなら初日から参加したかった……。課題さえ……課題さえなければこんなことには!


「で、夏休みイベントが始まってから一週間。ある程度ワールドクエストも攻略されて、イベントストーリーの概要も分かってきた。そしてここからが問題なんだが……」


 問題、か。

一体何なんだろう。


「現時点で分かっていることは、渡津海島ブルーホールの湖の中央にヌシが存在していてそれを操り渡津海島ブルーホールを滅ぼそうとしている黒幕が存在する、ということ」


 なるほど、確かにそれは凄い規模のストーリーだ。

くっ、再三言うけど初日から参加したかった……!


「そして問題なのはこの次だ。ヌシを操り渡津海島ブルーホールを滅ぼそうとする黒幕が――ヘルメス・トリスメギストスだと、確定した」

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