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初めての錬金術

 耐久には振れ。そんな話をされた後、私はとりあえずレベルを上げるべく、オグロと一緒に草原を回っていた。


「お、ちょうどいい所に。見ろアリス、これが採取ポイントだ」


 そう言ってオグロが指し示したのは、仄かに光るエフェクトがかかった草むらだった。どうやらこのキラキラしたエフェクトがかかっている所が採取ポイントらしい。

早速採取を試みる。


 どうやって採取をすればいいのか悩んでいたけど、とりあえず手を近づけてみると、採取に成功しました!と書かれたウィンドウが表示されて、その下に手に入ったアイテムが表示された。

手に入ったのは『キーレ』と『クローバー』というアイテムだった。どちらも鑑定が可能だったため、早速鑑定を試してみる。


『キーレ』

〈食用〉〈植物〉

 食べる事のできる雑草。

 食事効果▽

  回復:微小


『クローバー』

〈植物〉

 三つ葉の植物。

 食事には適していないが、幸運を呼び込むとされ人気である。


ふむふむ。つまり、これはどこでも取れるね?

というかかなり説明がざっくりしてる……まあ【鑑定】のレベルが足りないからだろうけど。


 余談だけど、《鑑定》系統のスキルは○○学という類いのスキルレベルを上げることで効果がより詳細になり、(キーレの食事効果等がその例)《鑑定》自体のレベルを上げる事で説明文がより詳細になるらしい。

まあいいかな。錬金術は素材が命。もっと素材を集めればきっとレアっぽいアイテムも取れるでしょう。


――――


 疲れた……なにこれ……。採取が……辛い……。


「これだけ取れたら上出来だ。お疲れー」


 オグロがそう言う。

仮にこれで上出来だとしたら、どういうゲームバランスしてるのこのゲーム。そう思うほどの素材しか採取する事ができなかった。


 詳細に言えばキーレが5個とクローバーが2個、そして新しく見つかった『夜露草』が1つだけ。

かかった時間は20分ほどだけど、ずっと採取ポイントを見つけるために走り回っていたから死ぬほど疲れた。相当ヤバい。


「んじゃ、便利機能使えるレベル3になるまで戦ったら帰るか」


「えぇ……まだ戦うの……」


――――

『夜露草』 ▽

〈薬効〉〈植物〉

どんな日でも夜露を生み出す草。

――――


 その後20分程兎のようなモンスターと戦い続けた。だが、ついぞ一人で倒すことはできなかった。うん、やっぱりこのステータスってNHOに向いてない。

それと、モンスターからのドロップは何も出なかった。

ちなみにオグロは「教祖としての仕事があるから、すまんな」と狩りを終えたら帰っていった。いや、教祖って何……?


 ……話を戻そっか。今、ステータスのポイントは振ってはいないけど、スキルのポイントが4つ手に入ったので早速振ることにする。

振るのは当然採取に関係するスキルだ。どんなスキルがあるか知らないが、ないよりは確実にマシだろう。


《採取家》4/5 ▽

 採取ポイントから得られるアイテム量と、アイテムのレア度が向上する。


 ……うん、本当に気休め程度のスキルだねこれ。

効果量も書いてないし、非常に怪しい。

まあ、このスキルは置いておいて早速調合に入る事にしよう。


 まずは錬金釜を用意する。錬金釜は初期装備に入っていた。ありがたい。

そして次にそれをその辺の道に広げる。アトリエ?作業場?そんなものはない。釜があるだけありがたいと思うことにする。


 そして次にレシピの確認をする。レシピは既に〈レシピ本〉を雑貨屋で買っておいた。今回はそこに書かれていた内の一つを使用する事にした。

材料は簡単。『夜露草』+『水』+『ガラス瓶』だ。でもこれ錬金術である必要がないんじゃないの?

何か怪しい。レシピ本には『調合』って書いてあったし。

……もしかして錬金術と関係ないって事はないよね?


 まあいいや、早速錬金術を始めることにする。

【錬金術】スキルを発動。適当に素材全部を釜に投げ入れ、釜に付属していた棒でかき混ぜる。ある程度混ぜていると【錬金術】スキルが完成を知らせてくれる。後はこれまた付属の、トングのようなもので引き上げるだけだ。


「なにこれ……?」


 私が引き上げたものは、よく分からない小さいガラスの塊となっていた。おかしい、掴んだ時は確かに感触があったのに。何かを間違えたんだろうか。

そう悩んでいると、機械音と共にメッセージが見えた。


〈クエスト発生条件を満たしました〉


〈クエスト「錬金の修学」を受注しました〉


「ん、これは一体?」


 早速クエスト欄を開き、そのクエストを確かめる。「錬金の修学」と書かれたそこには、“発生地点:《アリア》の『スロウス学院:錬金棟』”とだけ書かれていた。


――――

『ガラス瓶』

〈ガラス〉

ガラスでできた瓶。

――――


 モニュメントの一つから二分ほど歩いた所にその学院はあった。

それは新しく作られた、という雰囲気がひしひしと伝わってくるほど綺麗な学校だ。門の付近に立っていた門番に聞いたところ、立ち入りは自由との事だったので遠慮なく入る事にする。



「錬金棟どこ……」


 完全に迷った……。

元々私には若干方向音痴の気があった――いや、この学院内に地図が一切無かったのが原因だから。絶対私が方向音痴だなんて事はない。絶対。

それとどこが何棟なのか一切書いてないのも悪いと思う。人に聞こうにも周りに誰もいないし。


 そうして結構な時間歩き回っていると、不意に私は声を掛けられた。


「突然すみません。貴方も錬金棟を探しているお方でしょうか?」


 そう話しかけてきたのは私よりすこし背丈が小さい、すらっとした銀髪の女性だった。魔女っぽい帽子を目深にかぶっていて顔を見ることはできない。腰まで垂れたロングヘアも合わさって、いかにも童話辺りに出てくる怪しい魔女のような風貌をしている。


「えっと……そうだけど、どうして?」


「いえ。錬金棟に来たは良いのですが、そこからどうクエストを進行させれば良いか分からず。貴方は分かりますか?」


 どうやらここは錬金棟らしい。

なるほど、入っただけでクエストが進行しないなら道理で見つからない訳だ。


「ごめん、さっき来たところだから私も分からない……」


 そう質問に答えるとその魔法帽の人は首を軽く振って、こう提案をしてきた。


「いえ、謝らなくても。……では二人で探しませんか?その方が効率が良さそうですから」


――――――


「なるほど。錬金棟の教室に入る必要があったんですね」


 それに気づいたのはつい先ほどの事だった。何やら部屋の一つが騒がしく、そことクエストが関係しているのでは?そう察した魔法帽の人のおかげだった。

うん、これ私一人だったら確実に詰んでた。


 さて、今私達は最近見つかったとされる錬金術について記された板とやらに、室内にいた生徒らに連れられて街外れへと向かっている。

生徒らはその板を研究していたそうで。錬金術の謎を解き明かすために、来る者拒まずのスタイルで錬金術師を志す皆にその板について紹介しているらしい。


 ……と、不意に先導していた生徒が足を止める。

どうやら目的地に着いたようだ。


「皆さん、着きました。ここがその板です。私達はこれを《エメラルド・タブレット》と呼んでいるんですよ」


 ……なんか、すごい観光ツアーみたいなノリ。いや、こういうものなのかも……?


 その板は、名前の通り巨大なエメラルドの宝石の塊だった。縦は私の背の三倍ほど、横は10メートルほどの宝石の塊である。

それは綺麗にカットされているのではなく、ゴツゴツとした、まるで岩のような形をしていた。そんな塊が真っ二つに切り開かれていて、その切られ、新緑色に光り輝く面に何らかの文字が刻まれていた。その文字の形に見覚えはなく、読むことはできないだろうと察せる。

その美しい宝石の塊に私達が見蕩れていると、不意にシステムメッセージが流れてくる。


〈アリアの街の新しいモニュメント『エメラルド・タブレット』が解放されました〉


 どうやらここへワープすることができるようになったらしい。これは便利だね。

というか、モニュメントって増えるんだ。覚えとかないと。

そしてもう一つ、システムメッセージが流れてくる。……って、何これ!?


〈クエストの発生条件を満たしました〉


〈クエスト「賢者の記憶Ⅰ」を受注しました〉


〈エメラルド・タブレットが一部解放されます〉


〈エメラルド・タブレットを一段階読めるようになりました〉


 そのメッセージと共に、エメラルド・タブレットの一番上に書かれていた何らかの言語が弾け飛び、更に飛んでいった文字の破片が再生し、私のよく知る日本語に置き換わった。

そこには――。

「錬金の修学」発生条件 ▽

 錬金術に一度失敗する

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