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島の中の戦い5

棚の下の様子を窺っていたレーシェルは、上を向いた海竜と目が合う事となった。海竜は洞窟を抜けたとはいえ、抜けたのはまだ頭だけで、長い躰はまだまだ洞窟の中に残っている。その所為か、海竜の動きはまだぎこちない。なので、こちらから攻撃をするには、絶好のタイミングともいえそうだ。


だが、残念ながら、レーシェルの体勢も不安定な状況にある。こんな状態では碌に狙いも定められない。

それに気がついたのか、クースが動き出そうとする。レーシェルの代わりに攻撃を仕掛けるつもりでいるらしい。もしかしたら海竜の注意を引き付けるという意図があるのかもしれない。

だが、その行為は無謀以外の何物でもない。


レーシェルはギリギリのところで手を伸ばしてクースを捕まえ、クースがレーシェルの魔法の範囲から外れるのを何とか阻止した。

と、今度はアルが突然レーシェルの身体を押し倒す様にしてふらつかせ、斜めにする。レーシェルはもちろん、今はアルもクースもレーシェルの魔法の範囲の中にいる。当然、アルもクースもレーシェルと一緒に傾ぐ事になり、結果、穴の中を上昇する三人の軌道は大きく変化する事となった。


直後、三人のすぐ隣を青白い光の筋が通り抜ける。そこは、軌道が変わっていなければ直撃していたに違いない位置だ。

急いで下を覗き込むと、海竜が上を向いて口を開け、次の攻撃を準備している。が、同時にまだ洞窟の中に残っている胴体を洞窟から引き抜くべく躰をうねらせていて、その所為で、今一攻撃に集中できていない。


この間に、レーシェルは元居た岩棚の上へと着地した。すぐに雛鳥達を壁際の方へと押しやると、攻撃の準備に入る。

ここは足元が安定しているので、先程までとは違って、狙いはずっと付けやすい。

しかし、海竜もこの間に完全に洞窟から抜け出る事が出来た様で、一足早くこちらに照準を合わせている。狙いはどうやらレーシェルのようだ。真っ先に排除するべきはレーシェルだと認識したらしい。


レーシェルも魔法で海竜を潰すべく動いてはいるのだが、残念ながら準備済みの海竜の方が若干早い。再三に渡ってレーシェルを救ってくれた雛鳥のアルも、クースと一緒に少し離れた場所にいるので、今回は助けてもらえそうもない。


ここは自力で何とかするより仕方がない。

レーシェルは咄嗟に自分の周りの重力だけを極端に上げた。自分の周りなら狙いを付ける必要がないので、いち早く魔法を発動させる事ができるのだ。


レーシェルが立っていた岩棚が崩れ、レーシェルの身体が瓦礫と共に落ち始める。それとほぼ時を同じくして、海竜が光の槍を射出した。


槍は狙いたがわずレーシェルを襲い、しかし、僅かに外れてレーシェルの髪の毛を掠って抜けて行く。

これは、海竜が狙いを外した訳ではない。レーシェルの周りの巨大な重力が、槍の方向を微妙に狂わせたのだ。


しかし、この状況下ではレーシェルもすぐには次の攻撃には移れない。強い下向きの加速度がついてしまっているからだ。

このまま落ちれば、穴の底に激突する事になる。そうならないようにする為には、穴の底に着く前に身体を軽くし、どこかにソフトランディングするしかない。


レーシェルは自分の周りの重力を一気に軽い方へとシフトさせた。

だが、いざ岩棚の上に着地しようと思っても、その対象となる岩棚の大半は既に先の戦いで失っている。その所為で、丁度良い高さに岩棚が見当たらない。しかも、海竜が洞窟から抜け出て以降、風向きはかなりランダムになっている為、かなり不安定な状況だ。


しかし、たとえそんな状況ではあっても、海竜が次弾を撃つ前に先手を打って攻撃をした方が良い事も間違いない。そう思い海竜の姿を探すのだが、狙いを付けるべき海竜の姿は何処を探しても見当たらなくなっている。


そんなはずはない、と思った所でレーシェルは大変な事に気が付いた。

左手に握っていたはずの緋玉がいつの間にか無くなっている。

思いつくのは重力を急激に変化させたあの時だ。あの時は意識が他に向いていた為、落とした事に気が付かなかったらしい。


まずい事に、緋玉を失ってしまった今となっては、もう正確な攻撃は望めない。かといって、黙っていたのでは、狙い撃ちにされてしまう。

ここは例えあてずっぽうでも、撃たないよりは撃った方がいい。そう思いレーシェルがあてずっぽうで魔法を発動させようとしたその時、


 ドドドドーン


突然、何か岩が崩れるような大きな音が、足元の方から響いて来た。

と同時に、海竜の姿が再び浮かび上がってくる。今のレーシェルは緋玉を持っている訳ではないので、海竜が幻術を解いたという事の様だ。


この間、海竜には次弾を準備するくらいの時間は充分あったはずなのだが、不思議な事にその準備は出来ていない。それどころか、海竜は無防備に後ろを振り向いている。

よく見ると、海竜の尻尾に何かが刺さっている。硬い鱗を貫いて尾の部分に突き刺さっているのは、三角錐の透明な物体だ。

一瞬、何が起こったのかわからず、レーシェルが戸惑っているその間に、


 ズダダダダダダン


海竜が抜けて来た洞窟の穴から、さらに数発の透明な槍のような物体が飛んできて、海竜と海竜の周囲の壁に突き刺さった。


間違いない、これは魔法だ。こんな派手な魔法が使えるのは、ヨンフリー以外に考えられない。

ならば、ヨンフリーの作ってくれたこのチャンスを逃す訳にはいかない。


海竜は身体中に透明の槍を受け、動けなくなりながらも、最後の力を振り絞って光の槍を放とうとしている。その狙いはレーシェルではなく雛鳥達の方だ。自分の不利を理解した海竜の、一発逆転を狙っての決断だと思われる。


この状況の中でどれだけ正確に撃てるのかは疑問だが、それでも雛鳥達を殺らせるわけにはいかない。

レーシェルは砕けずに残っていた一番下の岩棚の上に降り立つと、すぐに魔法を発動させた。


この高さで、しかも目標の動きが止まっているのなら、狙いを外す事などない。

魔法は狙いたがわず海竜の頭を捉え、海竜は口の中の光ごと頭を潰され大人しくなった。

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