高校生、取引を開始する
「このIDとパスワードでログインしてみろ」
カヨシに与えられたIDとパスワードを入力してみると、口座には入金した100万円が入っていた。
「口座は色々なことが出来るが、とりあえずログインして口座管理画面と注文画面だけを開け。それ以外は触るな。分かったか。」
オサムはカヨシに言われたことは絶対守らなければならない。
「分かった。取引以外のページは開いちゃいけないんだね。
それで次は何をすればいいの? 何を買えばいいの。」
オサムは何かを買いたくて仕方が無かった。
「そうだな。とりあえず好きなもの買ってみろ。そしたら株というものが分かってくる。」
カヨシの教えはシンプルだった。
そんなことで本当に儲かるのかどうか分からなかったが、オサムはとりあえず買ってみることにした。
とりあえずゲームが好きだからゲーム会社。それがオサムの出した答だった。
選んだ銘柄は「仕天堂」
「ほぅ、ゲーセクか。」
ゲーセク、ゲームセクター。すなわちゲーム関連銘柄である。
仕天堂を100株。買ってみる。
エラー。お金が足りません。
「おじさん、お金が足りないって言われるんだけど・・・。」
「そりゃそうだ。お金が足りないからな。仕天堂は100万円じゃ買えない。最低でも150万円からだ。」
「でもこれ1万5000円って書いてるよ。」
「1株はな。だが売買が出来るのは単元という単位なんだよ。仕天堂の場合、1単元=100株だから1万5000円x100株=合計150万円必要ってことだ。日本だとそうなっている。アメリカだと1株単位で買えるんだがな。」
オサムは別の銘柄を探すことにした。
選んだ銘柄は「キプコン」
ボディハザードは大好きなゲームの1つだからだ。
価格は3015円。単元は100株。1単元買えば100株購入となるので30万円1500円である。
オサムはえいやと300単元を入力し購入する。90万円4500円の買い物である。
「いきなり90万円か。思い切ったな。」
「え、まずかった?」
「いやいい。それよりも株価に注意しろ。上がれば儲かるが下がれば損をする。」
株価をじっと眺めてみる、株価はひょこひょこと上がっていく。3020, 3025, 3030, そして3050。
3050円で売れば35円上がったわけだから35 x 300 = 10500円である。わずか10分で1万円が増えたことになる。
だが、そこから株価はずるずると落ちていく。ついに3015円に戻ってしまう。
オサムは慌てて3015円で売却する。同じ値段での撤退だ。
「ふぅ・・・あぶなかった。」
「オサム、お前なんで今売却した?」
「だってもっと下がりそうだったから。」
実際、株価は3000円を切り、今は2890円だった。ずっと持っていれば損を出す結果になっていただろう。
「ほぅ。」
カヨシは何も言わないが、何かを考えているようだった。
オサムはほっとして口座の残金を確かめる。すると同じ額で売却したにもかかわらず、お金が99万8950円になっていることに気づく。
「おじさん。口座のお金が減っているんだけど・・・。」
「そりゃそうだ。手数料があるからな。」
「手数料?」
「多くの証券会社の場合、口座を作るのはタダだ。年間の維持費用もない。
だが取引には手数料がかかる。それが証券会社の儲けってことだ。
証券会社は俺たちが株を買うとき、様々なことを裏で行ってくれている。その代行料ってことだ。」
「なるほど。」
「まぁ、業界でもっとも手数料の安いところで作っているから、たいした手数料ではない。あまり気にしなくていい。きちんと儲かる株を買えば誤差と思えるだろう。」
カヨシは手馴れた様子で語っている。
「とりあえず株の最低限の売買は分かっただろう。安く買って、高く売る。これだけだ。
あとは自分でやってみろ。とりあえず午後からは学校へ行け。スマホのアプリから取引も出来る。
学校にいるときに色々売買してみろ。ただし取引以外のページ、特に個人情報のページなどは開くな。下手に設定を変えられると面倒だからな。わかったな。」
「わかった。取引画面だけ開くね。」
定めたルールによればカヨシの命令は絶対である。オサムはカヨシの家を後にした。
ポイント
・証券会社は口座開設が無料、口座維持費が無料な代わりに、売買手数料を徴収します
・その売買手数料が証券会社の利益になっています(口座開設・維持にお金を取るよりも儲かります)
・インターネット注文であればかなり手数料は安くなります
・詳しい手数料については各証券会社の説明ページを見てください