高校生、金稼ぎを模索する
帰宅して、ベッドに寝転がったオサムは、天井をずっと眺めていた。
どうすれば彼女を救うことが出来るのだろう、それだけがオサムの頭の中をめぐっていた。
辞めたバイトを復活させるのはどうだろう。
さらに数を増やしてみるのはどうだろう。そうすればもっと稼げる。
だが、バイト1年で400万円を稼げるとは思えない。
だとすれば、インターネットを使った方法で400万円を稼げないだろうか。
たとえば、Youtuberはどうだろう。Youtuberのトップクラスになれば1億円以上のお金を稼ぐことが出来ると聞く。
しかし、以前読んだ記事では、誰でも参入できるため後から参入する人ほど不利と書かれていた。
それでもアクセス数を稼げる人はいるが、話術に長けているとか、容姿が整っているとか、何か長所があるらしい。自分にはない。
過激なことをやってアクセス数を稼ぐという方法もあるらしいが、自分に出来る過激なことは既に先駆者がやっているだろう。
より激しいこととなると、通報されて家族に迷惑が及ぶだろうと思われる。やはりこの線は難しい。
転売はどうだろうか。
以前、コミックマーケットで夏と冬で50万円ずつ転売で儲けた人がいた。
しかし、それでも100万円だ。やはり稼ぎきれない。
そもそも自分は転売屋は大嫌いだ。お金のために恥ずかしいことは出来ない。
パチンコやスロットは年齢的な問題がある。そんなことをすれば停学や退学もありえる。
法律に触れることはしたくないし、倫理的に問題のあることもしたくない。
オサムはお金のためになんでもするような人間ではなく、それなりの良識は持ち合わせていた。
好きな女の子は助けたい。
でも、そのためにどんなことをしていいわけではない。
悪に手を染めたお金で彼女を救おうとしても、きっと彼女はそれを拒むだろう。
そういう女の子だからこそ、オサムは彼女を好きになった。
しかし、オサムにはどうすれば問題を解決できるか、一切のアイディアはなかった。が、1つだけ心当たりがあった。
「隣のカヨシおじさんに聞いてみるか」
オサムの隣人に変わり者の男性がいた。
名前は森田カヨシ。年は30歳手前。
オサムの隣にある大きな一軒家に一人で暮らしをしているが、自称ニートである。
ご近所さんの噂では、パチンコでかせいでいるプロだとか、親の遺産で暮らしているという話だが真相は不明だ。
ただ、悪い人ではないという意見は皆一致している。
オサムはインターホンをならした。
「なんだオサムか。どうした。」
「あ、おじさん? 相談したいことがあるんだけど・・・」
「恋愛相談じゃないだろうな。」
万年モテないを連呼するカヨシに恋愛の話はタブーだ。
「えっと・・・」
ある意味では恋愛の話だが、ある意味ではお金の話である。カヨシは返答に困った。
「帰れ。」
カヨシの機嫌が途端に悪くなる。
「恋愛でもあるけど、お金の話なんだ。」
「デートの小遣い代をせびりに来たのか?帰れ。」
カヨシはさらに機嫌が悪くなった。
「そうじゃなくて、好きな女の子が借金をしているんだよ。その子を助けたいんだ。」
「ほぅ、面白そうだな。よし入れ。」
ガチャリと門の開く音がした。そして玄関の扉の開く音も聞こえた。かなりのレベルのセキュリティが備え付けられている。カヨシの家には謎が多い。
オサムはカヨシの部屋まであがり、さっそく事情を説明した。
だが、サクラとの体育館裏でのやり取りは伏せておいた。
「ふーん、嫌なやつもいるもんだな。」
「どうすればいいと思う。バイトじゃ無理だし、Youtuberも無理だし、転売も無理だし、ギャンブルも無理だし。」
「そうだな・・・、オサム、おまえ今100万円持ってるんだよな。だったら株で増やすか。」
「え、株?株ってあの買ったり売ったりするやつ?」
「そうだ。上場企業の株式売買だ。」
「昔から社会の授業は苦手だったんだけど、それでも何とかなる?」
「大丈夫だ。俺がついている。」
「わかった。おじさんがそういうならやってみる。どうすれば株を始められるの?」
「とりあえず証券口座を作るか。話はそれからだな。よし、家に行ってご両親と話すか。後でそっちの家へ行くわ」
既に外は暗くなっていた。父親が帰ってくる時間だ。
オサムは感謝の言葉を述べると家へ走った。
玄関まで見送ったカヨシは難しそうな顔をしていた。
「うーん、1年で100万円を500万円か。高校生で信用取引もないし・・・相当キツイな。」
カヨシの言う通り、1年で500%の成績を収めることは奇跡を期待するレベルであった。