【後半戦】高校生、目標額に到達するも・・・
期限の日まで残り1週間のところで、オサムの資産はついに目標額の500万円を超えた。
「ついに、ついに葉月さんを救える!!」
オサムは喜びのあまり家で大声で叫んでしまい、母親からお叱りを受けてしまった。だがそれでもオサムの喜びは止まらなかった。ついに葉月さんを井上の魔の手から救えるのだ。期限はあと1週間。本当にギリギリだった。
翌日、オサムは学校に登校したところ、教室で井上が葉月になれなれしく話しかけていた。
「あと1週間で俺たちは付き合うんだ!楽しみだな」
その声を聞くサクラは涙目でうつむいている。
オサムはついにこの時が来たと声をあげた
「いい加減にしろ。葉月さんはお前のものになんかならない。」
その声を聞いて井上はオサムの方を振り向いた。いや、教室にいる誰もが驚きオサムに注目した。
「佐藤、今なんていった。」
「もう1度いってやる。葉月さんはお前なんかと付き合わない。」
「佐藤、葉月は俺に借金がある、その借金が返せないなら葉月は俺の女になる。そう決まってんだよ。」
「その借金の500万円。俺が全部払う。それで終わりだ。」
「なに!?」
オサムの一言に井上だけではない、クラスの全員がどよめいた。うつむいていたサクラも潤んだ目でオサムを見つめている。
「俺は株で500万円を手に入れた。そのお金は葉月さんの借金を支払うためのものだ。」
「ぐ・・・ぐぐぐ」と悔しそうにする井上。
「2度と葉月さんに近づくな。」
教室から歓声が上がる。
「ぐぐぐぐぐ・・・・」と更に悔しそうにする井上。
だが次の瞬間、その顔は下品さを溢れさせる笑顔に満ちていた。
「なーんてな。そういう奴が出てくるのを俺が想定していないと思ったか?」
歓喜でざわついていた教室が一瞬で静かになった。
皆、井上の次の言葉を聞き逃すまいと井上を見つめていた。多くの顔に「まさかそんな」という表情が現れていた。オサムもまた同様の顔をしていた。
「そうさ。借金の額は500万なんかじゃない。1000万円なのさ。」
「うそ・・・」と一番驚いたのはサクラであった。驚きのあまり両手で口元を隠している。
サクラ自身知らなかったのだ。父親が本当はいくら借金をしていたのか。
「佐藤、お前500万円集めたって? 残念だったな。1000万円なんだよ。必要な額は。俺も株をかじってるから株で500万円集めたのは大したもんだと思うぜ。やるじゃねーか。お前株の才能あるよ。だが後1週間で500万円を1000万円にするのは株じゃ無理だよな。俺たち高校生は信用取引ができない。あと1週間で2倍にするのはどんな実力があっても無理だよなぁ。はっはっは!」
井上は教室で一人大きな声で笑っていた。
オサムはショックのあまり何も言い返せなくなった。
まもなく教室に先生がやってきて、朝のホームルームが始まった。
サクラは体調が悪いといって、松本アオイの付き添いで保健室へ去っていった。
オサムは先生に着席するように叱られた後、席についたが、何も考えられなくなっていた。
オサムを英雄視していた教室の空気は、オサムとサクラを憐れむ同情の空気に変わっていた。
オサムは人生で初めての絶望感を味わっていた。




