【後半戦】高校生、経営者とポーカーをする
途中の話をすっ飛ばし。
忘れない内に書いておく(後で作品として肉付け予定)
日付は他の銘柄とかぶるので、最終的にはかぶらないようにずらす予定。(つまり架空の日付に置き換わる)
「おじさんってポーカー好きなんだよね。」
「なんだ唐突に」
放課後いつものように株について勉強していたオサムだが、ふと気になることがあった。
それはカヨシの部屋にある本とトランプ、そしてチップである。
本は英語の本のようで、ポーカーに関して書かれたものということだけはわかった。
「ポーカーってさ、株と関係あるの?」
オサムは単刀直入に聞いた。
「んー、そうだな。あるといえばあるが、ないといえばない。」
「どういうこと。全然分からないんだけど。」
「ウォーレン・バフェットの名言で"ポーカーをやり始めて20分たっても、まだ誰がカモかわからない人は、自分がカモなのだ。"って言葉がある。これは別にバフェットが言い出したわけじゃなくてポーカーの格言から来ている。
"周りを見渡してカモがいないのなら誰がカモなのか明白である。"って言葉だ。
これを株に置き換えることも出来るが、分かるか。」
「うーん、株におけるカモってなんだろう。株価の急騰に飛びついちゃった人ってこと?」
「まぁ、そうだが。漠然としか思い浮かばないなら、答えにはたどり着けていない。」
「株価の急騰に飛びついた人がカモ。株価の急騰で売り抜けた人が勝ち組。そういうことかなぁ。」
「それだと正解はやれんな。根本的なところを理解してないからだ。
いいか、株っていうのはどういうときに上がる。」
「良いニュースがあったときとか?」
「そういう話じゃない。いいか、株っていうのは買うやつがいるとき上がるんだ。」
「そんなの当たり前じゃん。」
「いいや、お前はわかってない。いいか、今の価格よりも高い価格で買うやつがいなくなったら株は下がるんだ。
つまり、自分の次に誰が買うのかを意識しなきゃいけない。自分よりも後に同じ値段以上で買ってくれるやつがいたらそいつがカモだし、自分よりも後に高い値段で買ってくれるやつがいないなら自分がカモなんだ。」
「な、なるほど」
「こういう"置き換え"が出来るなら、ポーカーは株にとって良い影響を与えるだろうし、そういう置き換えが出来ないならポーカーは何の役にも立たない。言い換えると、置き換えさえ出来るなら別にポーカーじゃなくてもいい。
株で大きな資産を得たヤツの中にパチンコで生計を立てていたやつが多いっていうのは知っているか。」
「そうなの?」
「それは簡単な話で、パチンコで日常的に勝ってる奴は勝ち方を知ってるんだ。後はそれを株に置き換えればいい。株の勝ち方を見つけてそれを続けていけばいい。分かるか。」
「うーん、パチンコよくわかんないや。やったことないし。」
オサムはまだ高校生である。
「そもそもパチンコに置き換える必要がなかったな。ゲームでいいか。オサムの好きなRoRでの勝ち方を株に置き換ることが出来るか。」
「RoRのランクの上げ方は簡単だよ。勝率が6-7割ぐらいの戦い方を選んで数をこなせば、自然とランクは上がってるよ。最終的に適正ランクまで到達すると勝率は5割ぐらいに落ち着いてランクが上がらなくなるんだよね・・・。
そうか、それと同じことなのか。勝率が高い方法を延々と繰り返せば株の資産も増えるってことなんだね。」
「その置き換えが出来るなら、RoRの経験は株と関係があるといえる。結局何にしたって勝ち方は同じだ。高い勝率を選び続ける。高い勝率ではなくなったときは、すっぱりとその手を諦める。それだけだ。」
「なるほど・・・僕にとってはRoR、おじさんにとってはポーカーってことなんだね。」
「まぁ、それ以外にも色々応用は出来るけどな。たとえばポーカーの面白さは読み合いにある。相手の表情、視線、まばたき、全ては何らかの意味を持っている。それを読み解くことに長けていれば、経営者の意図をときに理解することも出来る。」
「ははは、おじさん、それは飛躍しすぎだよ!」
「ばか、お前本当にあるんだよ!」
「はいはい。おじさんがそう言うならそうなんだろうね。僕にはわからないけど。もう時間だから帰るね。」
帰宅するとオサムはいつものようにパソコンをつけて、株式ニュースを眺めていた。
その中で1つ気になるものがあった
『【10月速報】過去最高となる EC 受注高を記録!営業利益も単月で上期(半年)を上回る水準へ』
「なんだこれ・・・証券コード355X。ドロンコ?そういえば聞いたことあるな。たしか靴とファッションの通販サイトを運営する会社だっけ。」
ここまで調子が良いならこれは業績に必ず見えてくるものだとオサムは思った。そうなれば、より多くの買いが入るだろう。そして明日が天井ということは考えにくい。なぜならば株価は1日では動かないからだ。
それはオサムの持論であった。
この情報化社会であっても、すべての投資家に即座に情報が伝達するわけではない。この個人投資家で活況する時代だからこそ、情報に敏感なものと鈍感なものがいる。明日1日でその全員が株価を触るわけではない。それがオサムの判断である
同時にオサムはドロンコのこれまでのチャートを開いてみた。
そしてそこにこれまでのニュースを書き込んでみた。
(A)上場した日。ドロンコは今年3月に上場した企業だ。ここから株価はズルズルと落ち込んでいった。上場直後はこういうチャートになりやすい
(B)決算発表日。決算への期待が高まり株価は上昇した。しかし決算は期待をかなえるものではなかった。
(C)決算発表翌日、通期の決算と来季の決算への失望から株価は大きく下がってしまう。
(D)決算発表日。しかし決算予想通りのつまらない内容。
(E)決算発表日。再度同じような決算が発表される。しかし2Q連続の低迷した決算で、株主達は悲観する。結果株価は大きく下がってしまう。
(G)今日、ついに株価は大きく下がってしまい、一時1500円を下回ってしまう。しかし、その日の引け後に月次好調IRが出た。
「なるほど、直近の決算に対する悲観で株価は1900円から1500円まで落ちてきたのか。そしてかつて決算期待で2300円まで上がっていたのか・・・とすると、決算絶望時の株価は1500円で、決算期待だと2300円。これは今回の月次の内容に対する期待で株価は2300円まで株価が上がるんじゃないだろうか。」
オサムは翌日ドロンコの株を買おうと決心した。明日ストップ高の1784円で勝ったとしても決して高いとは思えない。オサムは大量にドロンコを買おうと決心した。
翌日1730円で始まった瞬間、オサムは資産の全てをドロンコに突っ込んだ。
ドロンコは一時ストップ高まで上がったが、その後1626円まで落ちる瞬間があった。だがオサムは動揺しなかった。必ずこの株は業績への期待から上がるだろう、そして直近の決算によって下がってしまった反動で勢いよく反動するだろうと期待していた。しばらくして再びドロンコは上昇を続け、ストップ高1784円に張り付いて終了した。
「よしっ!!」
オサムは計画通り株価が上がって大いに喜んだ。
数日後株価は2100円の高値をつけた後、1900-2000円で推移することになった。だがそこから株価は上がろうとしない。
「これ、1度落ちるかもしれないな。」
オサムはチャートの出来高を見て、調整があるかもしれないと感じていた。
株価を大きく上げるにはどうしても出来高が必要になる。出来高が増加すればその株を多くの人が触っているということになり活況を意味する。だが、その出来高が逆に減少するということは、その株の話題性が落ちたということである。
あるとき特定の話題性を持って上にあがった株があった場合、その下部は大きな出来高と共に上にあがる。だが話題性が落ち、出来高が減っていくと、短期的な値上がりを期待して飛びついた人達は失望する。するとその失望が短期的な下落を生む。それが調整である。
「ここは1度手仕舞っておくか。」とオサムは手持ちの資産の半分を売りに出すことにした。
翌日1730円で買った株の半分を2000円で処分した。(+15%)
オサムの予想通り、11月20日に株価は大きく下落し一時1800円を割った。終値は1810円であった。
その翌日11月21日に株価は1800円台をウロウロとし、その翌日11月22日も同じことだった。
オサムはふと最初に書き込んだチャートを思い出してみた。
「一番絶望していたときのピークが1500円だよな。もし今のチャートが1500円に戻ればどうなるだろう。きっと皆は買い増すんじゃないだろうか。でも1500円に落ちるとは思いにくい。実際1600円まで落ちるのも厳しいと思うんだよな・・・。底は1700円かもしれない。」
11月24日(金)もドロンコの株は1800円をウロウロしていた。
オサムは出来れば1700円で買い戻したいと思ったが、本当に1700円まで落ちるか自信がなかった。頭と尻尾はくれてやれ という格言がある。ここが買い戻しが必要だろうかと悩んでいた。
週末の25日・26日、オサムは気になることがあり、パソコンで調べ物をしていた。
パソコンのモニターに映るのはドロンコの社長のツイッターだった。
昨今、上場企業の社長がツイッターで情報を発信していることは珍しくない。とくに新興企業ほど情報の発信を大切にしている。
社長のツイッターには11月7日に「まだまだこんなもんじゃ終われない。」と書き込まれていた。
もともと口数の少ない社長のようだが、ふとオサムは社長のツイート数をグラフにしてみようと思った。
「今年の後半になってツイート数が増えている気がするな。微々たる数字だけど・・・気のせいなのだろうか」
ふと株価の出来高のかわりにツイート数を入れてみることにした。
「うーん、関係があるようなないような・・・わからないな。最近株価を意識してツイートし始めたと思ったんだけど、気のせいか。」
ふと、オサムは社長が別サービスでも情報を発信していることを思い出した。
BALUというサービスである。
オサムはそこで気になる投稿を見つけた。
「今日は個人じゃなくて会社の株価のココだけの話。流石に実態からかけ離れた株価だったため、実態みて欲しい訴えのIRリリースを出しました。嘘みたいな話で株価をふくらませるのは嫌ですが、実態見ないで株価下がるのも嫌なものです・・・って、これは11月1日のIRの件に言及しているのか。」
オサムは最近のドロンコの業績、IR、社長のツイッター、BALUを見て、1つの結論に達した。
「この社長、自ら情報を発信して株価をあげようと必死なのかもしれない。」
そしてこの週末25日26日もツイッターでつぶやいている。
そういえば、ドロンコの月次IRは11月1日に出た。となると、次の月次IRは12月1日に出る可能性が高い。前回の月次は成長性を感じさせる内容だった。とすれば今回も良い数字が出る可能性があるし、社長がこういう状況なら、どういう状況であれ何かしらのポジティヴな内容を書こうとするに違いない。2連続ポジティヴなニュースが続けばそれは決算への期待につながる。そうすればもっと買いが入るに違いない。
オサムは月曜日にすぐに買い戻さねばと決心した。
11月27日月曜日のドロンコは1840円でスタートした。オサムは始まった瞬間の1840円で全て買い戻した。2000円分売って1840円で買い戻したのだから多少は得をしたのだが、今思えば、ずっと持っていても良かったかもしれないと反省していた。売った後においていかれた可能性も多分にあった。あまり短期的なところを支配しようとしてはいけない。よほどなれていない限り、短期的な売買は負けやすい心理状況での取引になりやすいとカヨシが言っていたことを思い出す。今回は運が良かっただけなのだ。
11月27日、ドロンコは1840円ではじまると一時2008円まで上昇し、最終的に1923円で引けた。
そして11月28日には1998円ではじまると、2158円の終値をつけた。そして11月8日以来の出来高をつけていた。この出来高を見てオサムは再びドロンコに活況が戻ってきたことを確信していた。
「あとは12月1日に月次IRさえ出れば・・・・」とオサムは祈った。
そして12月1日の12時にオサムの読みどおりIRが発表された。
【11月速報】引き続き、過去最高のEC受注高を記録!昨対比2倍の利益計画に向けて順調に推移
「よし!よしよしよしよし!!」
オサムは昼休みの屋上で一人激しくガッツポーズを取った。
12月1日の午後にドロンコは大きく上昇し、最終的に2588円で引けた。
そして12月11日、ついに株価は一時3000円を超えた。その日、社長のツイートも大量に投稿されていた。
2日後の12月13日にはついに3000円を超える3130円で引けた。
「あとは1月1日の月次報告を待つだけだな・・・」
オサムは1月には4000円5000円もありえるかもしれないと期待を胸にいだいた。
だが1月1日にIRは発表されなかった。
そして1月4日、おもわぬ社長のツイートを目にする。
「自主的なサイレント期間ポリシーを年初に立てたのを忘れてました。決算発表日前の2週間、どんだけしょーもないコトも黙ります、ツイートもしません。」
オサムは妙な感覚になった。
このツイートの意味するところは何だろう。
なぜ社長はこんなことを言いだしたのだろう。
オサムはふとカヨシに教えられたポーカーの話を思い出した。
「たとえばポーカーの面白さは読み合いにある。相手の表情、視線、まばたき、全ては何らかの意味を持っている。それを読み解くことに長けていれば、経営者の意図をときに理解することも出来る・・・」
いつのまにかオサムは馬鹿にしていたはずのカヨシの言葉を復唱していた。
「今まで調子に乗って情報を発信していた人が、急に情報を発信しなくなった。調子の良いときはいつでも情報を発信していた人が発信しなくなった・・・それはつまり・・・」
RoRで対面の心理を読み解くことに長けているオサムだからこそ気付いた。
それはつまり12月月次の売上は情報を発信できるほど良くはなかったということなのだと。
「これはまずい。今すぐ処分しないと・・・」
既に1月4日の相場は閉まっていた。処分は翌日しか出来ない。
オサムは1月5日の株価が暴落しないことを祈り、次の日を待った。
翌日1月5日、株価は3060円で始まった。オサムは寄り付き3060円ですべての株を処分した。
「危なかった。3000円台をキープしてくれてよかった。」
そして1月12日の15時にドロンコの決算が発表された。
その内容は決して悪いものではなかったが、1-3Qまでの累計の進捗率は75%を超えず、63.8%にとどまっていた。
翌営業日の1月15日、ドロンコは第3四半期大幅最終減益を嫌気して大幅反落していた。
オサムはホッと胸をなでおろしていた。
あの1月4日の投稿のおかげで、3000円で手仕舞うことが出来た・・・。あのとき、あの瞬間、間違いなく自分と社長とポーカーをしていたのだ。そうオサムは思った。そして自分は社長の心理を読みとき、見事勝負に勝利した。もちろんこれは自分だけにしか分からない勝負なのだが。
オサムはRoRでの読み合いの経験が、カヨシのいうポーカーの読み合いを理解する一助になり、そしてそれが株の動向を掴むキッカケになったのだと思っていた。全力で勝負して培ってきたゲームの経験は決して無駄ではなかったのだと思った。
「どんなことだって全力でやれば得るものはある。でも所詮ゲームだと馬鹿にして全力で真剣に向き合わない人は何も得られない。ゲームだって、株だって、なんだって、全力で戦えば必ず得られるものはあるんだ。」
オサムは自らの株の取引に手応えを感じつつあった。
資産 +80%増加




