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花札の人達  作者: 染葉 楓
4/4

四枚目

四、


その夜、あやめさんの店“八ツ橋”へ再び向かった。

「いやーあのジグソーパズル難しいね!ほとんど空だったからどこもかしこも水色!火世ちゃんよく終わったよね・・・」

「しかし、想像以上に時間がかかってしまいました。定例会というものは遅れてないでしょうか・・・」

「あぁ、大丈夫だよ!何せ主賓がここにいるからね!それに集まれたのは子規ちゃんとすすき菊江きくえちゃんだけだし。」

「本来はもっといらっしゃるのですか?」

「そうだよ。まぁ今日は急に決めたからな。あ、そうそう。これを言っておくべきかな。」

くるりと振り向き、

「子規ちゃんは声が出せないんだ。今はまだ。」

「・・・やはりそうでしたか。」

「やっぱり気づいてたんだ?といっても、子規ちゃんは言葉なんて必要ないほど表情豊かで伝わるからそうそう不便なことはないんだけどな!」

「そのようですね。」

「そういうことだから、頼んだよ。」

火世は翔に言われたこの言葉の意味はよくわからなかったが、なぜか心にスッと入って染みこんだ。


そして店の前まで来て戸を開けた。

「いらっしゃい二人とも、待ってたわ。みんなそろってるわよぉ」

あやめさんに言われて店の中を見ると、子規の他に男性が1人と女性1人がいた。

「翔!」「翔さん!」

男性と女性が同時に声をあげた。

子規も翔と火世を見て笑顔を二人に向けた。

「いやー遅くなってごめんごめん。じゃあ始めるしようか!」


それから乾杯して、目の前にはあやめお手製の美味しそうなだし巻き卵や煮物に焼き魚、そしてリクエストのブリ大根が広がっていた。隣の翔と子規はいかにも幸せそうな表情で料理をほおばっている。

「うーーん・・・これぞあやめさんが作ってくれる幸せの味だな・・・」

子規もその言葉に同意し、しきりにうなずく。

「ちょっと翔さん!料理もいいけど早く秘書を紹介してよ!」

「あーいかんいかん、そうだった。じゃあ自己紹介としますかね」

絶対にしばらくの火世のことを忘れ、あやめのブリ大根を食べに来た翔が立った。

「えー、もぐもぐ。こちらが今日から秘書として来てくれた目白 火世ちゃんです!これから定例会のにも連れて来るからみんなよろしく。」

「よろしくお願いします。」

パチパチと拍手が送られた後

「はいはーい!私は酒上さかがみ 菊江きくえです!“秋長酒屋”の娘だからお酒のことは任せて!!職業は薬剤師だけどね!よろしく!!」

ビールジョッキを片手に菊江は勢いよくしゃべった。

「菊江ちゃんもう出来上がってきてるわねぇ・・・あら、もうビール飲み終わっちゃった?じゃあ日本酒にいこうかしらね」

あやめさんが嬉しそうに日本酒とおちょこを出して菊江の前に置いた。

「今日は飲むぞーー!あやめさんも一緒に飲もう!ぜーーんぶ翔さんのおごりだから!」

「あらぁ、じゃあせっかくだし飲んじゃいましょうかねぇ」

待ってましたとばかりにあやめもおちょこを出して注ぎ始めた。

「ちょっとそれ初耳なんだけど!?」

翔が立ち上がったが二人はもう聞こえないふりをしてぐいぐい飲んでいる。

「あーあ、酒豪達の宴会始まっちゃったな。じゃあ僕の自己紹介でもしとこうかな。僕は月岡つきおか すすきだ。今は新米の医者をしているよ。菊江とは幼なじみかつ腐れ縁かな。まぁ菊江と違って僕はお酒飲めないけどね。」

物静かに眼鏡をくいっとあげ手元のウーロン茶を飲んだ。

「月岡・・・ということは・・・」

「そっ。こいつも俺と一緒の五光家の一人ってこと。親父さんは商店街の中で唯一の診療所を開いてるからみんなお世話になってるよ、俺も含めて。」

「翔とは僕が15の時に初めて会ったからもう12年くらいの付き合いだな。結構松山家と月岡家はつながりあるからよく会うし。」

「だな!俺より1歳年下だけど俺よりしっかりしてるよな。(笑)」


話を聞いていた火世はふと子規に袖をちょんちょんと引っ張られているのに気づいた。

すると子規がタブレットを出し、そこにはいくつかの文章があり自己紹介だとわかった。

「私の名前は 藤村ふじむら 子規しきと言います。(^-^)16歳です。よく中学生と間違われるのが悩みです。(T-T)父と親戚で花屋をしています。学校には行っていませんが通信制の高校をしています。朝は来てくれてありがとうございました!(*^▽^*)翔さんはだらしないところが多いけど、とってもいい人だからきっとここの商店街の暮らしも気に入ってもらえると思います。(*´∀`*)私もよく翔さんにお世話になってて、この通り声を出すことが出来なくて迷惑かけちゃうけど、よかったら友達になってください!!m(_ _)m」

と、書いてあった。

文章からひしひしと感情がにじみ出ておりタブレットを持ちながら子規は恥ずかしそうに火世を見ていた。

火世は子規の様子を慈しむようにそしてどこか懐かしそうに表情がほんの少しだけ緩み、

「私もぜひ友達になってください。そして商店街のこと教えてね?」

と子規に言った。

子規は目を開いてから満面の笑みでタブレットに

「ありがとう!!(〃'▽'〃)よろしくね!!」

と書いた。


それから

「おーい、じゃあ歓迎会はこのくらいにして定例会やるぞ!そこの酒豪達が酔いつぶれる前にな。」

と翔が仕切った。

「ぜーーんぜん大丈夫だよぉ!まだまだいけるよーー!!」

「ふふふ、そうよぉ。私達まだ全然飲んでないわぁ。」

と新しい日本酒の瓶を開けながら酒豪達から返事がきた。

翔ははぁー、まったくというようにため息をつき、芒はそれを見ながらクスクス笑った。

「ほら翔。早く定例会開こう?」

「ったく、わーったよ。」

と少し面倒くさそうに頭をかいたが次の瞬間空気が変わった。

「それでは、定例会を始める!」


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