天使様は攻略本
『いやいやいや、中々に良い選択です。
まさか最初のスキルにオラクルを選ぶなんて…
貴方、良いセンスをしています』
その声は頭に直接響き渡っていた。
『そうだ、神崎さん。
そちらからは、思う事で通話が出来ます。
双方向通信です。どうです?
世間話でもしますか?』
一人で喋る糞天使。
そして話がゲスみを帯び始めた。
『昨晩、どうでした? 楽しめましたか?
従順な幼い二人の美少女。
そして、それをもてあそぶ野獣。
小さな姿態に覆いかぶさり、●●●プレス!
シチュエーションは完璧です』
『黙れ堕天使』
思わず反論。
俺もクズだがそこまで堕ちていない自信があった。
『えーーー。
まさか、まだ手を出してない?
貴方は男ですか?不能なのですか?
そして私は善良な一天使です。
言いがかりはやめてください』
オラクル…地雷スキル確定。
俺はそう思った。
『不名誉なレッテルはやめてください。
聞きたい事があるんですよね?
聞きたい事があるなら相談に乗りますよ。フフフ。
この世界の事、何でも知っていますよ。フフフフフ』
その含み笑いに腹が立つ。
しかし、相談があるのは事実だった。
だから打ち明ける。
支度金を使った豪遊。昨夜の夜遊び。
そして、貰った病気についても。
『…』
天使からの返答が来ない。
『どうした?性病はどうしたら治る?』
『…不潔です』
『え?』
『最低です!
何を考えているんですか!
少女二人を置いて、夜の街に遊びに出た?
それも、支度金での豪遊三昧?
そして性病のおまけつき???
馬鹿なんですか?馬鹿なんですね!分かります』
立場が逆転。
返す言葉がなかった。
自主的にその場に正座。
心配そうに見詰めてくる女神達に頭を下げた。
『ププ…』
どこからか笑いに耐える声が聞こえた気がした。
『プププ。アははははっはははははは』
忍耐が決壊し笑い声が、俺の頭にあふれる。
『うるせーぞ』
『だって、異世界に来た初めの日に、
性病を患うおバカさんが出るとは思わなかったからつい。
あり得ないでしょ?常識的に考えて』
もっともな意見。
やはり反論の余地が無かった。
『いいわ、治す方法を教えてあげる』
『どうすれば』
『慌てないの!』
イラ。
彼女の声音が愉悦を含んでいる気がして腹が立つ。
その怒りを感じ取ったのか、天使は答えを告げてきた。
『スキルを選びなさい。そこに答えがあります。
最悪、お金を貯めて教会にでも駆け込めばいい。
ぼったくりに会うでしょうけど。フフフ』
その言葉を聞くと即座にオラクルを閉じた。
本当にあの糞天使は人を不愉快にさせる。
オラクルは最後の手段だ、
出来うる限り使用しない。
俺は心にそう誓いを立てた。
すると、頭に最後の余韻が流れてきた。
『次の機会を楽しみにしています。
貴方の攻略本事、天使より』
気持ちの悪い余韻が暫く頭の中に響いていた。