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子育てファンタジー  作者: モモノ猫
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おらくる!!

 帰宅すると、家は静まり返っていた。

 女神様の出迎えを期待したのだが、可愛い姿が見当たらない。


 正直な話、焦った。

 夜遊び後の朝帰り、病気を貰って落ち込んでいる所に、娘達の失踪である。

 もしかすると誘拐かも知れない。

 いやな予感が膨れ上がり、まともな判断が下せなかった。

 家の中を無意味に駆け回る。


 そして、気付いた。

 部屋に設置されたクローゼットが不自然に開いている事に。


 躊躇う事無くクローゼットを開け放つ。


 そこには天使…いや、女神様が二人抱きしめあい小さくなって眠っていた。

 その顔には泣きはらした痕跡があり、疲れて眠りに落ちた様だった。

 手を触れて体温を確認すると、とても冷たい。

 長時間ここに隠れていた事が確認できる。


 何だろう…この光景に心が傷んだ。


 女神達の頬に手をあて人肌で温める。すると表情が和らいだ。

 そして、一しきり頭を撫でてからベットへと運び、毛布をかぶせ暖をとらせた。

 彼女達の血色が戻ってくる。それに安堵を思えた。

 ただ介抱中、胸にざわめく罪悪感が晴れる事は無かった。



 暫くすると、女神達が目を覚ます。

 部屋の中に俺の姿を確認し大声を上げた。

 体全体で喜びを表現し、確認し合う姉妹。


「パ―――パ!」

「パパ!」


 返す言葉がない。

 駆け寄ってくる女神達を、ただ優しく抱きしめた。


「パパ、いい匂い」

「うん、いい匂い」


 罪悪感がさらに刺激される。

 匂いには心当たりがあった。

 昨日の夜遊びだ。

 この匂いが俺の匂いと思われるのに抵抗があったので、女神達を無理やり引きはがす。

 その行為に、女神達が目に涙を貯めた。


 本当に情緒不安定な神様だこと…


「ごめん、パパは病気なんだ。

 うつすといけない。

 だから離れていてくれ」


 不安そうに見つめる女神達を、優しく撫でて誤魔化す。

 嘘は言っていない。

 しかし、彼女達は、


「病気…、パパ死んじゃうの…」

「だめ!死んじゃヤダ!!」


 過剰な反応を示し、縋り付こうとしてきた。


 まいったな、

 子供に性病を打ち明けるのは不味いだろうし、どうしたら…


 困った顔を浮かべる俺を見て、

 女神達が顔を見合わせ何かを思案し始める。

 そして、


「おらくる!!」

「おらくる!!」


 幼い女神が俺に与えたオラクル。

 それは、まさしく神託そのものだった。


 ただ、おバカな俺はそれに気づく事が出来ない。

 女神達の拙い言葉を理解して、

 スキルの『オラクル』に辿り着くのに、しばしの時間を要してしまった。



 スキル:オラクル 効果:神託を授かる。


 その効果に疑問を感じた。

 果たして意味があるのだろうか…取得が躊躇われる。


 躊躇われるのにはもう一つ理由があった。

 必要SP1000。


 2万のスキルポイントを保有する俺でも躊躇われる数値だ。

 ましてや、初めて取得スキルだ。

 後悔だけはしたくなかった。


 女神達が自信たっぷりに笑いかけてくる。

 後ほど吟味の上で取得スキルを決めるつもりだったが…

 俺はそんな彼女達を信じる事にした。


 目前に文字が流れる。

 スキル:オラクルを取得。


 そして、発動『オラクル』!!



 部屋の中が静まり返った。

 何も起きない。


 俺の頬を嫌な汗が伝う。

 もしかして…地雷スキル?

 その時だ。


『フフフ』


 頭に直接声が響いてきた。

 それは、何処か聞き覚えのある邪悪な笑みだった。

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