◆包囲突破
木の頂上に到着した。相変わらずいい眺めだな
でも、恐らくこれで見納めになるのか
いつもなら ここでぼーーっとして景色を眺めてる
その何でもない時間が私はとても好きだった
なのに、こんな形で出て行かなきゃならないなんて・・・
『ユウ、これからどうするの?』
焦る気持ちからか、急かすような言い方になっちゃった
ちょっと悪かったかなと思ったけどユウは特に気にしていないみたいだ
ある一点を指さし問い返してくる
『うん、その事なんだけどさ・・・アイ、「あれ」なんだと思う?』
『あれ?』
ユウの指さす先には洞窟が見えた
森から出てすぐの辺り、草原に不自然な感じに入り口がある
『あ、ホントだ! 前見た時は無かったよね? なんだろ?』
『・・・』
ユウは厳しい顔で洞窟を凝視している、何を考えているんだろう?
『包囲を抜けた後、どこを目指すか考えてたんだ。
じいちゃんは南の魔境を目指せって言ってたけど南へ行くのは難しいし・・・
アイはどこへ向かうべきか意見はある?』
魔境へっていうのは
私たちを敵から遠ざける為の方便だし、気にしなくてもいいと思う
でも確かにどこへ向かうかは問題だよね
他種族は基本的に襲ってくるし、うまい具合にスライム族を見つけられればいいんだけど
スライムってどこにでも生息出来るからな~
いざ探すとなると難しいよね
『どこへ向かうべきかは、分からないよ・・・
集落の外がどうなってるかもよく知らないし』
『そっか、まあ俺もよく知らないんだけどさ・・・
でも、特に意見が無いんなら あの洞窟行ってみない?
多分だけどあそこってダンジョンだと思うんだよね「山」と感じが似てるし』
『似てるかな~?』
『似てるよ~!』
そう言われて洞窟に意識を集中させてみると、う~ん・・・
どこが、とは説明できないけど空気が似ている感じがしなくもない、かな?
おじいちゃんはダンジョンを目指せって言ってたし
あの洞窟がダンジョンである可能性はそれなりにあると思う
行く価値はあるかな?
『う~ん、分かった!じゃあ目的地はあの洞窟に決定だね! でも、どうやって行くの?』
『へへ、それなんだけどね! ちょっと俺の体に捕まっててよ!離しちゃダメだよ!』
『ん?こう?』
ぎゅっとユウに捕まる、なんか恥ずかしいな
『へへ! そうそう! じゃあ行くよ!』
『え? ちょっ! ええええええええーーー!!』
ユウは何を思ったか20メートルはある木の頂上から空中へジャンプした
私もユウもおじいちゃんから訓練は受けてるけどまだ空を飛ぶ事は出来ない、筈だ
恐怖のあまり目をつぶってしまい、ユウに捕まる手に力が入る
しかし、いつまで経っても私たちが落下する事は無かった
『ちょっとアイ! 苦しい! そんなに力入れると苦しいよ!』
その声に目を開ける、もしかしてユウはこっそり特訓でもして飛べるようになってたのかな?
いや、何か、おかしいぞ?・・・
『・・・』
『ちょっ! なんでリアクション無いの? もっと驚いてくれると思ったのに~!』
ユウが何か言ってるけど私はあまりのショックに声も出なかった
なんとユウの背には翼が生えていたのだ、勿論そんな物を見るのは初めてだ
『え? ユウ? え? どういう事?』
『へへ~! 実は俺もさ、進化してたんだ! アイもラースになったんだろ? 俺もなったんだ! ラースウェポンスライムにさ!』
どうもラースウェポンスライムの肉体変形能力を使い翼を生やし飛んでいる様だ
むう、便利そうだな~! 私もあっちにしとけばよかったかな?
それにしても
『いつの間に? それに見た目全然変わってないよ?』
『変わってるよ! ブルーウォータースライムの時は薄い青だったけど今は水色と濃い青が混ざった感じになってるだろ!
もう! いつ気付いてくれるかと思ってドキドキしてたのに全然気付いてくれないんだから! 嫌になっちゃうよ、アイは!』
『そんな微妙な変化気付きません! 大体、進化したなら何で教えてくれないの? ひどくない?』
『お、驚かせようとしたんじゃんか・・・』
『むむむーー! それにさ、飛べるんなら木に登る必要無かったんじゃない? まさか私を怖がらせようとして登ったんじゃないよね?』
『そ、そんな訳ないだろ! まだ飛ぶのは自信無かったから高度を稼ごうと思ったんだよ!』
『どうだか!』
『ホントだってば!』
そんな言い争いをしながら地上を見ると集落の入り口を抜ける所だった
どうやら無事包囲を抜ける事に成功した様だ
たぶん敵に飛べる者が居たとしても幹部くらいだろう
そして幹部と思われる人たちはおじいちゃんの死体の傍に集まっていた
しばらくは安全と見てもいいと思う
◇一分後
それから一分ほど私たちは順調に目的地へ向かって飛行していた
ユウは飛行能力を使うのは初めての筈だが意外と器用に空を駆けている
速度もなかなかだ、時速100キロは出てるかな?
これなら目的地へもすぐに着くなと思っていたが、さらに一分を過ぎた辺りでユウがふらつき始めた
『ユ、ユウ? 大丈夫? ふらふらしてるけど・・・』
『う、うん・・・どうもこの変形能力って長時間使うのはきついみたい・・・
今は3分くらいが限界かな?
でも、もうすぐだし、このまま斜めに降りていけば目的地には着くと思う
アイもよかったら風魔法で飛ぶのサポートしてくれないかな?』
『え? 無理だよ! 私風魔法は攻撃しか使えないし・・・』
『そこを何とか頼むよ~! ああ、きつい・・・』
『無理だってば~! ちょっ!急降下しすぎ! もっと緩やかに降りてよ、きゃあああーーーー!!』




