◆山のダンジョンのスライムvs銀色のハイエナ その3
今スライム族は円を描く形で陣を構えており人間どもはそれを包囲する形を取っている
ユウとアイはその包囲の外側、南側から姿を現した
何故ユウとアイがそこに居るのじゃ?もうとっくに集落を出た頃だと思っていたが・・・
芝居に気付かれていた?いや、そんな風には見えなかった。
戦闘音を聞いて駆けつけて来たのか?いや、理由等どうでもいい
敵にも気付かれた様じゃが、幸い敵の幹部連中は包囲の北側に居るし
ユウとアイもまだ遠い所に居る 急げば間に合う筈じゃ!
「ユウ!アイ!こっちへ来てはならぬ!わしらの事は心配いらぬから南を目指しなさい!」
「ぐすっ!嫌だ!俺も、一緒に戦う!くそ、お前ら!じいちゃんに何すんだよ!」
「おじいちゃん、ごめんなさい!私も、みんなを置いてはいけないよ!」
2人はそう言って包囲南側の敵に向かい近付いていく
やはり言っても無駄か、妙な所で頑固じゃからのう・・・
2人は強いが、さすがにこの状況では勝ち目はあるまい
仕方が無い、作戦変更 わしは地上へ降り仲間たちと「最後」の会話をする
「どうやら最後の時が来た様じゃ
わしらが居る限り子供たちはここを離れようとはしないじゃろうからな」
「そうですね、時間が経つほど子供たちの脱出は難しくなります急ぐとしますか!」
「ユウ、アイ!マスターの・・・いや、俺たちの子よ!元気でな!」
各々最後の言葉を残し わしに取り込まれていく
スライム族奥義「合体」 他のスライムと合体する事で短期間ながら爆発的な力を得る事が出来る
使った後は反動でしばらく動けなくなるがの、もはや「後の事」は考える必要はない
「みんな!やめろよ!そんな冗談、笑えないよ!嫌だよ・・・」
「うう、おじいちゃん、みんな、死なないで・・・」
2人とも泣くな・・・
わしらの心はマスターが死んだ時 一度死んだんじゃ
そして、それを蘇らせてくれたのはお前達じゃ
わしらはお前たちが居たから幸せに生きてこれた、笑って死んでいける
返そうとしても返しきれん借りがあるのじゃ その借りをちょっぴり返すだけの事よ
そう、お前たちには借りがある
例えこの身が滅んでもお前たちだけは死守してみせる!
最後の1人を取り込み全員と合体完了した
敵は遠巻きに魔法や矢を撃ちこんで来るが、もはや多少のダメージは関係ない
「我は汝と契約を結ぶ者なり、雷を司る神よ、汝の裁きを今ここに仰ぐ トールハンマー!!」
詠唱と同時に包囲南側へ突っ込み「自身」も魔法を喰らう
全魔力を込めた魔法じゃ、いい感じに逝けそうじゃな・・・
「ユウ、アイ、悲しむ事は、ない・・・
死によって、例え全てが奪われたとしても、わしらにはお前たちが居る」
「じいちゃん・・・」
「おじいちゃん・・・」
泣き虫な子達じゃ・・・
残して逝くのだけが、心残りじゃ・・・
「爺の最後のお願いじゃ、こんな所で死んではならぬ わしらの分まで、生きておくれ・・・」
「・・・」
ユウはしかし動けずにいる、わしらを残して逃げるのが嫌なのじゃろう
だがアイはそんなユウを引っ張り移動を始める
「ぐっ!アイ、離せよ!じいちゃんを置いていけない!行きたくない!」
「ダメよ!あんた、おじいちゃんのお願いが聞けないの?」
「うう、でも・・・」
ユウは最初こそ暴れていたがすぐに大人しくなり、されるがままに引きづられていく
その間、一時もわしから目を離すことは無かった
2人はどんどん遠ざかっていく、それでいい・・・
「大体、ここで私たちが死んだら、ううっ、誰がおじいちゃん達の敵を討つの?」
「!・・・ふぐっ、分かったよ!離せよ!自分で歩ける!」
ユウはついにわしらから目線を切り自分の足で歩き出した
そして、2人の姿は見えなくなった
もう声も出ない、目は霞むし、体は雷に焼かれ痛むが悪くない最後に思える・・・




