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秘密基地

「・・・ダンジョンマスター、少し交渉したい事があるのだがいいか?」


クロという少女が首を傾げ俺の顔を覗き込みそう言った

ぬ?ゴリの話とは別件なのか?これでうまく話題を逸らせるといいな~

なんて苦しい期待をしつつ話を聞いてみる


「・・・察するに、ゴリの話をどう断ろうか考えているんだろう?

気持ちは分かるぞ、いくらルールを作っても暴走するバカは出てくるだろうしな

冒険者を受け入れればダンジョンマスターの身の危険は間違いなく増すだろう」


おお、この子は助け舟を出してくれるっぽい?その代わり何かして欲しい事があるとかそんな感じか?

たぶんペットが欲しいとかかな?

う~ん、大事にしてくれるなら1体位あげてもいいかな~


「・・・ペットも欲しいけどその話は後でしよう。」


この子も心が読めるっぽいね、多分そういうスキルがあるのかね?


「・・・この付近の冒険者はあらかた撃退されたという話は聞いている。

少し前にここへ攻めてきた100人の者たちだ

あれだけの規模で攻め入り撃退されたのだから

もうこの付近でこのダンジョンに挑もうとする者はしばらく居ないだろうと思う

ゴリの提案を受けなければダンジョンはしばらく平和だろうな」


確かにここ最近は平和だったな


「・・・だが、長くは続かないぞ?

今は近場に居ないだけでここの事が他の町にも知れ渡ればすぐに大挙して冒険者が押し寄せてくる、ダンジョンとはそういう物だ。

お前がするべき事は目の前の平和を享受する事では無く、その時が来るまでに少しでも戦力を増強する事では無いのか?」


むう、乗せられてる感もあるけど一理あるな。俺はゴリの頼みを断る気満々だったのだが、その言葉を聞いて少し受けてもいいかなと思うくらいには気持ちが傾いた

確かにこいつらが協力してくれるのならDP収入は格段に上がるし、俺のレベルも上がる。危険はあるが かなりおいしい話にも思えるんだよな


俺の否定的だった空気が変わったのを察したのか、それを横で見ていたゴリが我が意を得たりというドヤ顔で喋り出した


「クロの言う通りだ!冒険者のレベル上げに協力してくれるのなら俺達もしばらくの間はここに留まり・・・」


「・・・少しゴリは黙ってて、交渉の邪魔」


ゴリのドヤ顔が一気にガーン!というショックを受けた顔に変化する

よく表情が変わる奴だ、分かりやすくて嫌いではないぞ


「お、お前がそれ言うか?さっきまで俺が必死に交渉してる横で遊んでたくせに!」

「・・・遊んでない、調査してただけ」

「嘘つけ~!!」


ゴリはぐおー!って感じに叫んでるがクロは無視して話を続ける様だ


「・・・どこまで話したっけ?」

「クロさん!戦力を増強~の所までです!」


「・・・そうそう、そこで戦力を増強しつつあなたの安全も守れる案があるのだ

ズバリ言うとここに我々の家を建てさせて欲しい。

滞在している時は1日1度はDP収入の為に出入りすると約束するし、対処出来ない者が現れた場合は我々が秘密裏に撃退してやってもいい、どうだ?」


「どうだ?じゃねえ!何勝手に話 進めてんだー!普段喋らない癖にこういう時だけ饒舌だな!お前は!」


「・・・いや~、それほどでも」

「褒めてねェ~!!」

「クロさんは普段喋らないだけで「喋れない」訳じゃないんですよ!えっへん!」

「ユズも何嬉しそうにしてんだ!褒めて無いっつってんだろ!」

「まあまあ、落ち着けゴリ」


な、なんか急に話 飛ばなかったか?ここに住むって事か?う~ん・・・


「でもここって一番近い町まで2時間は掛かるんだろ?不便じゃ無いのか?」


と、常識的な事を聞いてみる。

俺的にこいつらは嫌いじゃないし住む事自体は別にいいかなと思ってたりする


「・・・別に構わないぞ?4人程度なら私のテレポートで飛べるし

それに、家を建てる時の条件として景観は大切。その点ここは素晴らしいと思うんだ」


クロは妖精樹を指さし そう言う

ああ、そういう事ね


「ですよね~!ホントに綺麗です!それにダンジョンに家を建てるって秘密基地みたいでワクワクしますよね!」


ユズもそう言って同意し、妖精樹の傍から離れない

完全に妖精樹に目を奪われている様だ


「そ、その気持ちは俺も分からなくも無い」

「ちょっ!おっさんまで何言ってんの!」


ゴリが慌てているが、オッサはまあまあと(なだ)め 話を続ける


「まあ聞け、ゴリ!景観の事もそうだが、立地も素晴らしいと思うのだ。

冒険者というのは1つの町を拠点としてそこで生涯活動する者も居るが、俺たちは違うだろう?」


と言うか、1つの町から動かないのが普通らしい

やはり別の地域へ引っ越すというのはそれなりにエネルギーを使うし費用もかかる

それに冒険者として依頼をこなす内にその町の住人達とも仲良くなったり

その町を拠点とする冒険者と仲間になったりもするだろう

愛着ができ離れづらくなるのだ


だが、冒険者として高みを目指している者はある程度ランク、レベルが上がった後より高ランクの依頼がある町へ移動するという

依頼のランクが上がれば貰える報酬も段違いに上がるし何より自らの修行の為にもなる、当然危険は増すが・・・

安定を取るか挑戦を続けるかの違いだな


「まあ俺たちとしては挑戦というより生きがいという部分もある。

世界中を旅し、様々な物を見て、聞いて、多くの人と出会う。そうした事に人生の幸せを感じるのだ」


ゴリもユズもうんうんと(うなず)


「だが、世界中飛び回るという事には問題もある

家を、といっても今の家は借家だが、家を留守にする事が多いのだ

我々はこれでも世界最高レベルの冒険者として有名だし、レアなアイテムや装備、金も大量に持っている。」


つまり留守中に泥棒に入られることが多いのか?


「・・・そう、私たちが命がけで遺跡やダンジョンを探索し得た物をあっさり盗って行かれては堪らない。

汎用アイテムなら空間魔法でしまえるんだけど

古代のアイテムは空間魔法で収納出来ない物が多いし置き場所に困っていた」


「まあホントに貴重な物は身に着けて持ち歩いているんだがな、限界はある

今まで何度盗みに入られたことか・・・」


銀行に預ければ?と思ったが、この世界の上層部の人間はクソだったな・・・

奪い取られるのがオチか、しょうがないな


「話は分かったよ、家は建てても構わない。ただし、入っていいのはあんた達だけだ。知らない人間をポンポン連れてくるのはやめて欲しいんだ

ここの、「居住区」の存在も他人には話さないでもらいたい

出入りする際も、ばれない様にしてほしい。他には~」


「いや、ちょっと待て待て!」


と、ここでゴリの横やりが入る


「だから話を勝手に進めるな!俺はここに住むのは納得しとらん!

確かにその樹は綺麗だが、ダンジョンに住んだりすると またギルドの連中にうるさく言われるぞ?

アイテムはここで預かってもらって町に住めばいいだろうが!」


もっともな事を言ってる気はするが他3人の目は冷たい、当然反撃を喰らう


「いや、今更ギルドの連中の顔色を(うかが)う必要はあるまい?もうトコトンまで嫌われておるのだからな!がっはっは!」


「そうですよ!それに私は町よりここの方がいいです!綺麗だし、秘密基地ですよ!」

「むう・・・」


やはりゴリは押され気味だ、少しかわいそうになってきた

そして、クロの一言が決め手となる


「・・・ゴリにとっても悪い話では無いと思うぞ?

聞いた話だが、ここでノエル嬢を見たという者が居るらしい。ここに住めば会える機会も増えるのではないか?」


「なっ!ノエルたん、ゴホン!ノエルちゃんがここに?マスター!その話は本当か?」


今ノエルたん言ったよな?一気にキャラ崩壊したぞ?

まあいい、ここは正直に本当だと言っておく。すると・・・


「ま、まあみんながそこまで言うのなら仕方が無いな!よく見れば素晴らしい所だし!よし、そうと決まれば早速家を建てる準備をしなければな!」


なんて言って最初にしてたレベル上げの話も放置して4人は出て行った

また来るから居住区を拡張しといてとの事だ、おいこら!


『侵入者を撃退しました。経験値を入手、レベルアップ!

レベルが28から32に上がりました

◇エレベーターを作成可能になりました DP8000を得ました』






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