4人との出会い
「マスター、行くんですか?」
ハイピクシーが心配そうに聞いてくる
「ああ、奴らがその気なら正攻法でダンジョンを攻略して俺を殺す事は出来ると思うんだ。
その手段を取らない時点である程度は信用してもいいと思っている。実力で制圧できるのに策を弄す意味は無いだろ?」
実はそれは建前でノエルの様に友達として付き合っていける可能性を俺は彼らに感じている。警戒心より会って話をしてみたいという欲求の方が強いのだ
最悪殺されても戻るだけだ、今回は可能性に賭けてみたい
そして俺は入口へ繋がる転移魔法陣へ乗った
その頃入り口では~
「返事来ないな」
「うむ、鑑定で見られたから気付いてるのは確かなんだが」
「まあ口で危害を加えないと言ってもなかなか信用できる物では無いだろ」
「・・・ユズ、そこにハチの巣がある、気を付けろ」
「大丈夫ですよ~!ノンアクティブみたいですし、ランク1ですよ」
「どうする?コアルームまで行ってみるか?」
「いや、もう少し待った方がいいだろう。向こうも迷っているのかもしれん」
「・・・ユズ!見てみろ。ユニコーンが居る。可愛いぞ!」
「あ、ホントだ!珍しいですね~!」
「・・・ユズが行けば寄って来るんじゃないか?持って帰ろう!」
「ちょっ!クロさん!どういう意味ですかそれ!」
「「お前らホント自由だな!」」
などというやり取りがされていた。なんというかイメージと違うね
もっとこう歴戦の勇者っぽいのをイメージしてたが なんか軽いね、和むわ・・・
「・・・あっ、ダンジョンマスター!」
「むっ!」
向こうもこっちに気付いた様だ、全員がこっちを向く。
そしてゴリラの様な男がファイティングポーズを取り俺に向かって「拳」を突き出した!
え?いきなりかよ!しかもこれヤバいやつだ、周りがスローに見える!
交通事故に遭うと周りがスローに見えるっていうあれだな・・・
ああ、死んだ!と思ったが男の拳は俺に当たる直前で制止した
ゴウッ!!と寸止めだったにも関わらず、その拳の風圧で俺はバランスを崩し尻もちを着いた。どういう威力だ!
俺が脂汗を掻きながら男を見上げると男はいい笑顔でこう言った
「手荒な真似をしてすまない。狩りに来たんじゃないなんて口で言っても信用してもらえないと思ってな!
でも殺すつもりは無いってのは今ので分かってもらえたろ?」
そう言って俺を抱き起し背中をバシバシ叩いて謝ってくる
そう、これが会って話してみたいと思った理由なのだ
彼らは凄味があるが、同時に「いい人オーラ」も出ているのだ
強く、人間的魅力に溢れている。会ってみたいと思うのは当然だろう
そして信用もしていいと思う。殺すつもりなら今ので殺していただろう
乱暴だが下手に言葉を重ねるよりよっぽど効果的な説得だと思える
「だが、そこに居るローブの女には気を付けろ。奴は別名「マスターキラーユズ」と呼ばれていてな
半径3メートル以内に居るダンジョンマスターを抹殺する能力を持っている
命が惜しくば近付かない事だ・・・」
「まじでか!」
「まじでか!っじゃないですよ!嘘に決まってるでしょ!
なんでそんなウソつくんですか!近付かない事だ、じゃないですよ!
ちょっ!なんで離れるんですか!ひどいですよ~!」
「・・・ユズ、恐ろしい子!」
「んな!クロさんまで!最近私を弄って楽しんでないですか?ひどいですよ~!」
「・・・気のせいだ、・・・ププッ!」
「楽しんでますよね?絶対楽しんでますよね!」
なんか見ていて飽きない連中だがいつまでも見ている訳にはいかない
入口にあまり長居はしたくない。いつ侵入者が入って来るかと思うと落ち着かないのだ
「とりあえず ここで立ち話もなんだしコアルームで話そう。なんか話があるって言ってたよな?」
今思うとコアルームへ簡単に通したのは不用心だったかもしれない
だが、やっちまったものは仕方が無い
「そうだな、そうしてくれるとありがたい。あんたが話の通じる奴で良かったよ!
そういえば紹介がまだだったな、俺はゴリアテという。あっちのごつい白鎧がオッサ、ジャージズボンがクロ
そして、ローブの女がマスターキラーユズだ!」
「ちょっ!まだ引っ張るんですか!そのネタ!だからあなたも、なんで離れるんですか!ひどいですよ~!」
などと騒ぎながらコアルームへ移動した
道中こんな新しいダンジョンは初めて見る。とか他には無い不思議なダンジョンだ。空気がおいしい所ですね~、ムササビ可愛い、などと感想をもらった
そうなんだよね、このダンジョンまだ若いんだ。ノエルが居ない時に敵意のある奴に襲撃を受けていればそれで終わってたかもしれない
速く強くならないとな、なんて気を引き締めなおすのであった




