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◆腕相撲と身体操作

「じゃあ次は私の番ね!」


 次は響が相手の様だ。レオンが合図役となる


「じゃあ行くぞ? はっけよい、残った!」

「えい!」

「ぬおお!」


 ドスっとお互いぶつかり四つに組み合う

 しかし組み合って気づいたがちょっとこれやばい、色々とやばい!

 響は出るところは「出てない」女の子なのであまり気にならなかったが、それでもこう密着すると色々当たるし、それに柔らかくて変な気分になるのだ。

 いかんいかん! これは訓練なんだ! 集中しないと!

 なんとか雑念を振り払い勝負に集中する、しかし・・・


「てェい!」

「ぐお!」


 あっさり投げられる、やっぱこいつも強い! どうなってんだ!


「えへへ~、勝ち!」


 Vサインを作りドヤ顔する響。むぐぐ、悔し~!

 俺はその後全員と何度もやりあったが、結局1勝も出来ずに相撲は終了となった

 こいつら初心者相手に容赦無さすぎませんかね?実は俺をイジメに来たのかと疑いたくなる・・・

 俺がヘバって座っているとレオンが声を掛けてきた。どうやら講義の続きの様だ


「お前の筋力はこの中で一番高い、身長も体重も大差無い。むしろ響達3人よりお前のほうがデカいし重い、なのに何故お前が負けるか分かるか?」


 俺は首を横に振る。正直分からん、組んだ感じだと力で負けてる感じさえした

 俺は負けるにしても技で翻弄されて負けると思っていた。だから今回の負けは結構ショックだった。

力で負けるとは、むぐぐ・・・


「お前はステータスは高い、だがそれを使えていないんだ。分かりやすく言うと全身を使えていない」


 ぬ?


「分かりにくいか? なら今度は腕相撲をしてみよう」


 近くに丁度いい高さのテーブルがあったのでそこへ移動する


「では私が審判をしよう」


 今度は春花(はるか)が合図をしてくれるようだ。響や七海、野次馬連中も集まって来ている

 だが、腕相撲か。


 俺は中等部の時はクラスの男子の中でも最弱だったが今ではクラス内では最強だし、このトレーニング道場内でもトップ3には入る

 まあぶっちゃけそこそこ自信はある

 ふっ、レオンよ! 勝負方法を間違えたな!

 レオンと俺は手を組み構える


「少しゴリの方に手首が入ってるな、戻して・・・

レオンの方へ引っ張りすぎだ、戻して、うん、こんなもんかな。

そのまま動かない!

よし、では行くぞ! レディー、GO!!」


 バン! と1秒も持たずに瞬殺された。うっそだろ! なんだこの強さ!


「ま、待て! 今のレディーの「レ」くらいで動いただろ! もう一回勝負だ!」

「ふっ、よかろう! ならば今度はそんなイチャモンつけられない様に受けてやろう!」


 イチャモンつけてもう一度勝負するも、今度は宣言通り受け止められる。ビクともしねえ! 畜生~!どうなってんだ!

 そしてゆっくり倒される。まるで抵抗できないまま倒されてしまった、無念だ・・・


「レオンっち! 今度は私と勝負しようよ!」

「いや待て響、ゴリに説明してからだ」


 響が勝負を挑むも制止され、レオンは俺に説明を始める


「腕相撲では手首が大事という言葉をよく耳にすると思う

だがそれを真に受けて手首にばかり意識を集中してしまうと余計に弱くなってしまう

これは手首に意識を集中しすぎて他の部分の筋肉を使う事を忘れてしまうからだ

大事なのは全身を使うことなのだ。

腕相撲の場合は上腕や背中の力を手首に伝える事が大事と言える

手首の力というのは実はとても弱い物だからな」


 なるほど、相撲でもそうやって全身を使えていないから負けた訳か・・・

 思い当たる節はある、ウェイトトレーニングでは逆に1か所しか動かさない様に意識する事が多いからな。実戦での動きに弊害が出てるのかもしれん


「だが全身を使うと口で言うのは簡単だが、これは実は体術における奥義でな

完璧に行える者は存在しないと言ってもいい。

基本的に人間が考えて動かせるのは1か所か2か所が限界と言われているからな

教えるのも難しい。

例えば野球選手のバッティングフォームを見た目だけ完璧に真似たとしてもスイングのスピードが上がったりはしないだろう?

これは体の内面の意識の持ちようが人それぞれ違うからだ」


 なんか難しいぞ、どゆこと?


「例えば単純に何かを握るという動作にしても、親指に力を入れるのと小指に力を入れて握るのとでは全く別の動作なのだ。

そういう体の内面の意識、力の使い方は人それぞれ違うので外面の形だけ真似ても意味は無いし、感覚的な所が大きいから教えるのも難しい

だから毎日イメトレをしてそれを実戦練習で試していく

その繰り返しだな、そうやって体の動かし方を覚えて行くしかない。強くなる為の近道は無いと思え」


 うんうんと響たち3人も(うなず)

 俺もその力は身を持って体験したので疑う余地は無い

 技術ってのは小手先のモンじゃ無いんだな、少し甘く見てた・・・


「あと、しばらくは実戦練習中心のメニューを組むようにしろ!

筋トレするなとは言わないが、実戦練習が終わった後にするように!

理由としては慣れないうちは実戦練習は物凄く体に負担が掛かるからだ

中には実戦やってれば筋トレはしなくていいなんて言う奴も居るほどだ

しかし、俺の考えとしてはあまり疲労が大きい時にしつこく実戦すると段々動作が雑になっていくからな

ある程度疲労した後は筋トレで追い込みする方がいいと思う」


 などと講義を受ける。確かにもう疲労困憊で筋トレもする余裕は無い

 講義が終わり、響は待ってましたとばかりにレオンに挑む


「いえーい! 勝利!」

「ぬう、もう一本だ!」


 響がレオンに勝利した。レオンもマジになっている

 俺はその後も響達やレオンがやりあってるのを見ているだけだった。体中ボロボロでもう動けなかったのだ

 だがみんなが笑い合い、はしゃぎ合うその姿を見て幸せを感じていた。見ているだけでもとても楽しかった

 この幸せがいつまでも続けばいいのになと心から思った
























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