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◆ゴリアテの叫び

 どうやら無事ユニークスキルを得たようだ。

 今回一番心配だった事だから残念な結果に終わらず済んでよかったとホッとする。


 意識を自身の内側から戻し、外へ向けると丁度おっさんの番の様だ

 しかし、何か様子がおかしい・・・


「おっさん! 後が(つか)えてんだよ! 早くしろよ!」

「大体あの歳で今更ランクアップとか時間と金の無駄だろ? 何考えてんだか」


 なんか野次がひどいな

 状況を見た感じだとモンスターを倒せずに固まってしまっているのか?

 おっさんはバットを握ったまま動けずにいる。しばらく固まってたんだろうな

 それで痺れを切らした外野が野次ってるのか・・・


「焦らなくていいですよ、ゆっくり心の準備をしてください」

「そうそう、本来あなたの様な方の為の企画なんです。外野の事は気にしないで」

「あ、ああ・・・すまない・・・」


 係の冒険者達はいい人そうで良かった

 あれで冒険者からも野次られてたらおっさんの心は折れてたかもしれない


 周りを見るとおっさんの応援をしている人も居る様だ。恐らくおっさんと歳の近い30~40代くらいのおっさん、そしてイケメンや3人娘もおっさんの事を心配そうに見つめている。

 俺はイケメンや3人娘の居る所へ移動する事にした


 その間も野次は止まらない・・・


「おいおい、見ろよあれ! 震えてるぜ?」

「はっ! ああはなりたく無いもんだね~、老いぼれるってのはつらいね~!」


 くそ! こいつら~! おっさんの応援をしてやりたいが俺はデカい声出ねェんだよ

 野次にかき消されるのがオチだ。どうする? ん? かき消す?


「おいおい、流石に飽きて来たんですけど~?」

「もうそのおっさん失格にして先進めませんか~?」

「俺ら先帰っていいっすか~?」


 黙れクソ共!


(パワー)!!」

「え・・・?」

「なんだ?」


 (パワー)で音エネルギーを吸収した

 周囲からは音が消え、静かすぎて耳が痛いほどだ。俺は吸収したエネルギーを声を出す力に変える!


「おっさん頑張れ!!」

「え?」


 おっさんがこっちを見ている。思っていた以上の音量だ。自分でもうるさいと思う。おっさんだけじゃない、みんなこっちを見ている。

 野次ってた連中も、イケメンも、3人娘も俺を見ている。少し恥ずかしい思いはある。だが知った事か! もうこうなったら言ってやる! 言いたい事全部言ってやる!!


「おっさん言ってたよな! 最強の冒険者になるって! 普通なら笑っちまう所かもしれねえ! 今野次ってた奴らの様にな!」


 俺はおっさんをまっすぐ見て続ける


「だがな、俺は笑わねェ! 真剣に頑張ってる人間を俺は絶対笑わねえ!!

ステータスを見れば分かるんだよ! あんたがどれだけ頑張って来たかなんてのは!

すげェって思ったよ! もし俺が逆の立場なら諦めてたかもしれねえ!

この歳で今更頑張っても、なんて自分に言い訳して、諦めてたかもしれねえ!

でもあんたは折れずにここに居る。

すげェよ、ただ強いだけの雑魚とは違う! ホントに尊敬出来る人間だ!

野次ってた奴らも、なんで笑うんだよ! ひでェじゃねえか!

あんなに頑張ってる人を!なんで笑えるんだよ!!

おっさんはな、1度何もかも失ってんだ!

どん底まで落ちて、絶望を味わって、それでもまた上を向いて立ち上がろうとしてんだよ!

きっと、ここに居る誰よりも頑張ってるんだよ。笑わないでやってくれよ!

俺はさ、頑張ってる人間がバカを見るような世界は嫌なんだ・・・

『ここ』は、そんな汚い世界じゃない筈だろ・・・?

笑わないでやってくれよ・・・」


シーン、と周囲が静まり返る。ああ、やっちまった感はあるな・・・

 だが、言わずにいればきっと『後悔』しただろう。なら、これでいい

 しばらく静寂が続いていたが野次っていた者の1人が沈黙を破った


「ま、まあバカな夢見てるのは俺も一緒だしな・・・笑ったのは悪かったよ! おっさん、ごめんな」


「あ、ああ・・・頑張ってる人間を笑うのは良くないよな。おっさんすまなかった!」


 次々と謝罪の声が上がる、そしてそれは応援の声へと変化していく

 おじさん頑張れ! と3人娘やイケメンの声も聞こえる。俺はさっきの大声のダメージで大きな声は出せない

 しかし心の中でその声に同調する


「おっさん! おっさん! おっさん! おっさん!」


おっさんコールが鳴り響く! そして・・・


「お、おまえら・・・」


 おっさんはついにバットを振りかぶり、そしてこう叫んだ


「俺はまだ33だーーー! おっさんじゃねえ!」


 ドゴン! っとモンスターにバットが直撃しモンスターは絶命する

 パチパチパチ、とツッコミ不在のまま拍手が鳴り響きおっさんはランク2になった


『スキル:『(パワー)』のレベルが1から2に上がりました。維持可能時間が3分になりました』




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