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◆冒険者

 狩場への移動には馬車を使う様だ

 基本的に町の近くにはモンスターは殆ど居ない。町の近くでモンスターが出現した場合、すぐにギルドに報告が行き、討伐依頼が発行され狩りつくされてしまうからだ


 なのでモンスターを倒したいのなら遠出する必要がある。今回ツアーで行く狩場も町から最も近い狩場とは言え馬車で片道2時間は掛かる


 馬車にはツアー参加者が5~6人、冒険者が5人乗り込み4台に分かれて移動する様だ

 全員乗り込むと馬車は動き出した。いよいよ出発するようだ、ドキドキするな


 一緒の馬車に乗り込んだツアー参加者は女の子の3人組、30代くらいのおっさん、多分同い年くらいのイケメン、俺の計6名だ


 女の子は3人とも多分20歳前後くらいで1人は美人、1人は清楚系、1人はボーイッシュ系で思わずチラ見してしまうくらいには魅力があると思う。

 しかし俺は女の子とまともに話した事が無いのであのレベルとなると緊張してしまう。女の子たちに話しかけるのはやめようと思う。


 2時間も無言なのはつらいし、緊張もほぐしたいのでおっさんと話す事にする

 このおっさん、パッと見 大人しそうだがよく見るとなかなかいい筋肉してるのだ。顔もゴツイ

 どことなく俺と同じ匂いを感じる、気が合う気がするのだ。早速話しかけようとすると


「坊主、まだ学生だろ? 1人で来たのか?」


 と、おっさんが先に声をかけてきた


「はい、親に話すと多分反対すると思ったので1人こっそり来ました。」


「ははは! そうか! 若いのに偉いな、素晴らしい行動力だ。俺はもっと若い頃から行動を起こしておけばと未だに後悔しとるからな。正直、若くて頑張ってる奴を見ると羨ましく思うわ」


「そうなんですか?」


 かなり鍛えている様に見えるが・・・鑑定してみる

 鑑定してみると今日鑑定した参加者の中では、いや! 俺が今まで見たランク1の中ではぶっちぎりに強い! 勿論俺も含めてだ

 なんだこのおっさん強すぎじゃね? 俺はおっさんのステータスに驚き固まってしまったがおっさんは構わず話を続ける様だ


「俺はな、正直何も考えずに生きて来た。流されるままに学校へ行き、卒業後もやりたい事は無かったので とりあえず給料の高い職場に就職した。

その後は殆ど仕事だけ・・・仕事、仕事、仕事・・・

仕事が終わった後はせいぜい酒、ギャンブル、あとは女くらいか?」


 たぶん女ってのは見栄張ってんな、どう見ても女と縁がある様には見えん・・・


「・・・だが俺が30の時会社は倒産、俺は無職となった。その時俺に残ったのは金だけだ・・・友達も居ない、今まで何のために生きて来たのか。虚しい、ホントにそう思った・・・」


「・・・」


「なんか全部どうでもよくなって、目的も無く公園でボーっとしていた時の事だ。冒険者ごっこをしている子供たちが目に入った。

何気なしに子供たちが遊んでいるのをずっと見ていた・・・

気が付くと、涙を流しながらずっと見ていた。思い出したんだ、俺は、小さい頃 冒険者になりたかったんだってな・・・

英雄と呼ばれる様な、最強の冒険者に憧れていたんだ、なのに・・・

何故、こうなってしまったんだろうって・・・

そう思うと、なかなか涙は止まらなかった・・・」


「・・・」


 分かる気がする


 俺は元々貧弱で、その事を周りの奴らにバカにされたしイジメにあった事もあった

 だから強くなりたいと真剣に願った。ある意味人生の目標があったと言える


 そう思うと人より劣る部分があるというのも悪い事ばかりでは無い様に思える

 劣等感というのは、その人が生きて行くエネルギーにもなり得るのだから


 もし俺がなんの目標も持たず生きていけばおじさんの様な人生を歩んでいたに違いない

 いや、きっと大半の人はそうなのだろう。目標も無く、ただ生きているだけの人生・・・、考えたくも無い。


「涙が止んだ時、思ったんだ。これからは流されるのはやめて自分の好きな様に生きて行こうと! 理想の自分を目指し、生きて行こうと! そう思ったんだ!

幸いお金はあったからね、それからは33の今この時まで冒険者目指してトレーニング三昧の日々を送り、今に至ると言う訳さ

ふふっ、滑稽だろう? 30超えたおっさんが今更夢を目指すなんて・・・」


 おっさんはそこまで話して沈黙した。話しながら色々嫌な事も思い出してしまったのだろう・・・俺は言葉を返す


「いえ、夢を追うのに年齢は関係無いでしょう? それに、ステータスを見ればあなたがどれだけ頑張って来たかは一目瞭然です

俺は真剣に頑張っている人間を笑うことは絶対にしません」


「ゴリラ、いい事言うな。おじさん、ゴリラの言う通りだ。」


 横で話を聞いていたイケメンが割り込んできた、ゴリラって俺の事か?


「俺も冒険者を目指しているんだ。おじさんと同じく最強の冒険者になるというのは幼い頃からの夢だ。だが、夢を追うというのは簡単な事ではない。

色々な物を犠牲にして生きて行かなくてはならない。普通はな、諦めるんだ。なんだかんだ言い訳をつけてな

もうこの歳で今更頑張っても仕方ない、とか。俺には才能無いからやっても無駄、とかな。そして人の足を引っ張る事を始める。

頑張っている人間を笑う様な奴を、俺は幾度も見てきた。

だが、おじさんはそんな屑共とは違うよ 尊敬出来る人間だ。

その歳で夢を追うために走り出したのだからな! なかなか出来る事では無い。

少なくともゴリラと俺、2人の人間がおじさんの生き方を応援しているという事を忘れないでほしい」



 こいつ、顔だけじゃなく心もイケメンだった! イケメンは心はブサイクとか思ってた今までの俺を殴りたい! いい奴じゃんか!


「2人とも良い事を言うな」


 離れた所で聞き耳を立てていた女の子たちも会話に入って来た


「私たちも冒険者を目指してるんだ! でもさ、女が冒険者を目指すって言うとみんなバカにするんだよね!」


「そうだな、今まで散々悔しい思いをしてきた。女には無理だ、とか現実見ろよ、とか言われてな・・・

ふんっ、大きなお世話だ! 私たちの人生は私たちが選んで行くんだからな!」


「うん」


 実際には女性の冒険者も居るが、殆どが後衛タイプだ

 女性は筋力では男に劣るが、魔力や感覚器官は男より優れている場合が多い。よって後衛を目指す場合が多い

 だがステータスを見た感じこの女の子達は全員前衛脳筋タイプで正直俺から見ても侮れない程の筋力を有している


 相当努力してきたのだろうな、周りの反対もあった筈だ

 だが、向いてる向いてないではなく、きっとそれは彼女たちにとって譲れない所なのだろう

 俺も持久力特化とか言われて悔しい思いをしたからな、気持ちはわかる

 長所を伸ばすより、短所を克服したいと思う人間も居るのだ


 その後もおっさんを励ましながら、みんなで夢について語り合った

 みんな他人の夢をバカにする事も無く真剣に話を聞いてくれるいい奴らだ


 冒険者か、俺は学校を卒業後どうするか進路を決めていなかったが、こんな気持ちのいい奴らと仕事を出来るというのならば冒険者を目指してもいいかもしれない


















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