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成長と劣化

 少しだけしんみりした空気になってしまったが引き続きダンジョンを散歩中だ。今 口の字部分を歩いている

 通路の横幅と高さを拡張し以前よりも随分と見晴らしがよくなった


 至る所で土エレメントが土を吐き出し、そこへゴブリンやピクシー達がノエルから貰った種を植えている。そしてどこへ何を植えたのか分かるように印を付けている様だ


 ノエル曰くダンジョンでは特殊な植物が育つ事があり、それを採取しに来る冒険者も居るそうだ。DPを稼ぐにはいいかもしれないな

 まあそうでなくても薬草や食料はいくらあってもありすぎという事は無いだろう


 土を盛る目的としては植物を育てる、ダンジョンの立体化、だけではなくモンスター達の巣や住居にもしたいと思っている。有事の際にはそれが要塞と化す訳だ


 人型モンスターには出来れば家具なども用意してあげたいが今は生活レベルの向上よりもダンジョンの防衛力を上げて行きたい。しばらくは我慢してもらおう

 財産を蓄えたとしてもそれを守る力が無ければ簡単に奪われてしまうからだ



 いかんいかん!こういう思考は1人の時でも出来る。ノエルが傍にいる内に聞ける事は聞いておかないとな


「ノエル、他にも聞きたい事があるんだけどいいかな?」

「はい! なんですか?」

「スキルについてだ」


 実はDPを消費することでスキルや魔法を覚える事が出来るがどれも高価で最低でもDP5000とか消費する。


 そしてDPが足りない物や条件を満たしていない物はそれに対する情報が隠されており、どのような効果を持つ物なのか、覚える為にどれほどDPを消費するのか、将来どの様な物を覚えられるのか、など謎の部分が多く計画が立てられないのだ


 ノエルに頼んでスキルや魔法について書いてある本を買って来ては貰ったが一応本人の口からも聞いておきたい

 こういうのは本に書かれている事と現場で使う者の考えとでは意見が違う事が多いからな

 両方の知識を仕入れておきたい。


「DPで覚えられるスキルや魔法はダンジョンマスターによって違いますよ。ですので私も、あなたがどの様な物を覚えられるのかは分かりません」


「そ、そうか・・・」


 モンスターが進化し、数も増えれば俺が前線に立つことは減るだろう

 だとするとスキルや魔法を覚えるよりも、ダンジョン運営系の能力を開放していくべきか?


「私 個人の考えとしては中途半端に色々覚えるのではなく、ある程度系統を絞って極めて行くのがいいと思います」


「そ、そうなの?」


 ハイピクシーが会話に混ざって来た。こいつは万能性が売りだから思う所があるんだろうな


「そうですね、ハイピクシーの売りは様々な系統を使える事・・・ではなく総合的なステータスの高さにあります。

スキルや魔法の観点で言うとやはり2つか3つ程度に絞って極めて行く方が強くなれますよ」


「2つか3つか~! 回復は外せないとして残りはどうするかな~?」

「お、俺はどうすればいい?」


 ゴブ太も混ざって来た


「ゴブ太君はゴブリンファイターですよね? 多分次の進化先は攻撃重視、防御重視など前衛としての方向性を決める事になると思います」


「お、俺はみんなを守りたいから防御重視がいい!」


「ならゴブリンナイトですね! ですが稀にユニークモンスターへの選択肢も出る事がありますので慎重に選ばないとダメですよ!」


「う、うん分かった!」


 ユニークモンスターとは特殊なモンスターで突然変異の様なものらしい

 通常より強力な者が多いらしいが狙って出現させる事は不可能の様だ

 進化以外では出現せず、召喚欄から召喚する事も出来ない

 勿論一体だけでは繁殖出来ないので1代限りのモンスターである場合が多い


「でも同じランクなら色々使える方が強い様に思えるんだが・・・」


「それは理想論の話で実際には多くの能力を維持するのが難しいんですよ」


 どゆこと? ゴブ太とハイピクシーも熱心に話を聞いている


「生物は使いもしない能力をいつまでも保存しておける程、便利な器では無いんです。使わない能力はどんどん劣化していきます」


「ほうほう」


「例えば学校で勉強する事は生きて行く上で役に立たないという話をよく聞きますよね?私もその通りだと思います」


 俺もその通りだと思う

 ぶっちゃけ字が読めて簡単な算数が出来れば生きていける

 義務教育なんて小学校で十分だと思う。あとは座学より実践で覚えた方がいい


 学生時代の友達は確かに貴重だが、知らない土地へ行けば友達0が普通だ


 だが熱中出来る趣味を見つければ知らない土地へ行っても すぐに友達は出来る

 趣味なんてくだらないと言う奴もいるが俺はそうは思わない。学校の勉強なんかよりよっぽど有意義だろう


 ってか学校にいい思い出が無いからな・・・そういう思い出補正も手伝って余計にそう思うのだろう

 いや、覚えてないけどな


「例外として将来学校の先生等になるというのならそれは必要な知識で、役にも立つと思いますがこれが一般の企業などに就職した場合はどうでしょうか?」


 まあ使わないわな


「そう! 勉強したことなど使いません! そして使わなければ2年も経たない内に殆どの人は忘れてしまいます」


 そうなんだよね。学生時代必死こいて勉強してたのにあの努力はなんだったんだ? って思うよな。すごい共感できるわ・・・


「役に立つ、立たない以前の問題として覚えていられないのですから学校の勉強自体には意味は無いですよね」


「いや、それはみんな分かってるんだけどね・・・

でも勉強しないと学校卒業出来ないし。学校卒業出来ないと就職出来ないし・・・って! そういう話はやめようぜ! 暗くなる!」


「す、すいません! 要するに何が言いたいのかというと勉強しても普段使わない知識は忘れちゃうよって話ですね!」


 ゲームとかだと一度覚えれば覚えっぱなしだけど現実だと使わない能力は衰えるからな~ 

 何が言いたいのかは伝わったが、ノエルは既にもう止まらない状態なので続きを聞くしかないだろう。


「それは身体能力も同じです。少し鍛錬を怠れば、すぐに体力も筋力も衰えます!」


 それもすごい分かる。俺は中学生の時 陸上部で長距離をやっていた

 当時は練習中水飲むなとか言われて夏でも水分補給なしで何時間も走ったもんだが・・・


 中3の夏に引退。そして、3か月後冬の校内マラソン大会では既に帰宅部といい勝負する程に衰えていた。毎日反吐ぶち吐く程走ったのは何だったのか・・・と悲しい気持ちになったもんだ


 まあ体力と違い、筋力の方はそれほど衰えないけどな

 少なくとも素人に鍛えた者が負けるという事は無いだろう

 だが、高いレベルを維持する為にはやはり鍛錬は必須だろう


「マスター! ノエルさん睨んでるよ!」

「ああ、ちゃんと話は聞いてるぞ?」

「ホントですか~? 今度ぼーっとしてたら腹パンですからね!」


 これは集中して聞かねばなるまい!


「そして『ぎじゅちゅ』も衰えます・・・あ!」

「『ぎじゅちゅ』も衰えるのか・・・ごふっ!」


 その腹パンで俺のHPは10になった・・・ちょっとからかっただけでしょうが!

















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