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お店回り

 ダンジョンを出てから2時間くらいは歩いただろうか? 俺たちは最初の目的地である最寄りのパーキングエリア入口へと到着した。


「しかし、何も起こらなかったな。こういうのはテンプレだと道中でモンスターとか盗賊に襲われたりするもんだけど」


「マスターさん、流石にそれは漫画の見過ぎでは・・・」


「はは! 盗賊はこんな人気ひとけのない場所には出ないよ! むしろ街中の方がそういう輩と出会う確率は高いかもだからマスターも一人でウロウロしないようにね」


「そうですね、一番恐ろしいのは人間だという言葉もありますからね。逆にモンスターは敵との力量差には敏感ですからこの面子が揃っていれば襲い掛かって来ることはまず無いと思いますよ」


 なるほど、要約すると一人でうろつくなと。そしてユズ、後で覚えてろよ・・・



 このパーキングエリアは前世でいう高速の出入り口も兼ねていて出入りの際に関所を通らなければならない。

 なので実際通るまでは結構ビビっていたのだがこの関所、ザルである。

 女ドワーフが身分証明書を提示するとあっさり全員を通してくれたのだ。せっかく用意した俺や神父さんの偽身分証明書は全く出番が無かった。まあその方がいいんだけどね。


「ははは! まあこんなモンだよ! 関所は場所によっては日に何百人、何千人と通る所もあるんだ。だからいちいち全員を見てられないって事でこういうのは簡略化されてんのさ!」


「空港とかになるともう少し厳しいんですけどね。国道の関所なんてこの程度の物ですよ」


「でも私の時は痩せてる時の写真を見せたらすぐには通してくれなかったんですよ! ヒドイと思いません?」


「ああ、それはひどいな。関所の役員もさぞガッカリしただろうな」


「マスターさん! 怒りますよ!」


いてて! もう怒ってるじゃねーか! いてっ! 冗談だって!」


 なんてやり取りをしながら俺たちは南側関所を抜けてパーキングエリアの中へ入っていく。

 エリアの中は中央から東側にかけて馬車などを止める駐車場が占めており、見ると10台程度だが車が止めてある。

 驚くべきはその内半分は馬車でもう半分は自動車という何ともアンバランスな所である。流石異世界だぜ・・・


 さて、最初の目的地はこの駐車場を北へ出て少し行った所にあるのだが、せっかく来たのだから通り過ぎるだけでなく少し寄り道もしていきたい所だ。少し疲れたしね。


 って事で休憩がてらエリア西側にある飲食店が並んでいるエリアへ向かった。


 出発前に食べたばかりなのでまだお腹は空いていないが軽食と何か飲み物でもないかなー? と思いながら飲食店エリアを歩いていると不意にツンツンと肩をつつかれる。どうやらルーが目を覚ました様だ。


「マスターさん! あそこ! アイスクリーム売ってるんですよ! 売ってるんですよ!」


 神父さんの背におぶさったままある地点を指さすルー。言われてその先を視線で追ってみるとそこにはサーティーンアイスクリームの看板があった。

 ユズ曰く近場の世界では名称は似た物になるという話だがこれは・・・13(サーティーン)ってお店の名前としては不吉すぎんだろ・・・


「神父さん! 買って来てもいいですか? いいですよね?」

「ふふ、いいですよ。というか一緒に行きましょうか。私も食べたいですし」


「わーい! アイスクリーム♪ アイスクリーム~♪」

「あ、でも食べる前にマスターに登録してもらうんですよ」


「分かってるんですよ! マスターさん! マスターさん! 早く~!」

「わわっ! そんな引っ張んなくても大丈夫だよ」


 俺は神父さんの背から降りたルーに引っ張られお店の前まで連れて行かれる。その後ろを神父、ユズ、女ドワーフの3人が付いて来る。

 ちなみにこの3人の内ユズと女ドワーフはそこそこ小金持ちであるので旅費の心配は全く要らないのだ。

 ルーよ、遠慮なく買うがいい。ユズの金でな!


「ルーは~♪ チョコクッキーと~♪ チョコバニラと~♪ チョコレートです~♪」


 しかしルーは超可愛いですな~。店員さんは女の人だがルーの可愛さにやられたのかメロメロになりながら注文を受けている。その気持ちめっちゃ分かるぜ。


「ふふ、ルーはホントにチョコレートが好きですね。あ、私はビターチョコとバニラとレアチーズ味でお願いします」


「私は練乳とイチゴとレモン味で」

「私はキャラメルとコーヒーとラムレーズンをお願いするよ」

「んじゃ俺は抹茶とメロンとグレープにしようかな」


 見事にみんなバラバラの味なのは偶然ではない。

 何故かというと今回の外出の目的の1つにこういったお店の味のコピーも含まれているからだ。


「お待たせしました~!」

「ふおお~! 神父さん見てください! 三段重ねですよ! えへへ~! 三段です~!」

「落とさない様に気を付けて食べるんですよ」


「えへへ~! は~い!」


 皆に配られたアイスを次々とアイテム図鑑に登録していく。これで今後はこのアイスをアイテム図鑑でコピーする事でダンジョン内でも食べる事が可能になった訳だ。


 現在アイテム図鑑にはトシや人間の眷属が持ち込んで来てくれた様々な食品が登録されている。

 それらは下手すればそこらのスーパーよりも品揃えがいいくらいであるが、やはり人間それだけでは物足りないらしい。

 そういった家庭の味やインスタント食品というのはそれなりに美味しい物ではあるのだが、たまにはお店の味も恋しくなるといった所か?


 今回の外出では「このお店のこのメニューをコピーして来て欲しい!」というお願いを人間の眷属達からされており、それらのお店を回るのも任務の1つなんだよな。

 一見アホみたいな話だが、食の充実というのはトレーニングをする上で意外と重要な要素である為ここは手を抜いてはいけない部分なのだ。


 だからこれは決して遊んでいる訳では無い。あ~アイスうめェ・・・

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